2015年1月13日火曜日

歌舞伎座の初春大歌舞伎_「女暫」「黒塚」を幕見で

所用で大宮にいくことがあり、帰り足にむりやり東銀座に足を伸ばしてしまいました。

あ、大宮駅では北東北の観光キャンペーンをやっていまして、お囃子が聞こえてきたので、ついつい誘われて覗いてみたら秋田県の西馬音内の盆踊りを踊っていました。
真冬の駅コンコースで観る「西馬音内盆踊り」ちょっと奇妙です ((・(ェ)・;))
でも、踊りは綺麗でした。そして、残念ながらお囃子は録音でした(やむなし…)。機会を作って現地で観たいな—。

もう夕方近くなっていましたが、宇都宮線・高崎線が事故で(?)30分以上の遅れとなっていましたので、京浜東北線を利用したせいで余計に時間がかかってしまい、夜の部通しで滑り込もうという計画が座礁、土曜日で幕見も混んでいるようで、「女暫」を立ち見(150番台)で、「黒塚」はなんとか座って観ることができました。

でもね、ずっと新装歌舞伎座への出演をせずに、それ以外の小屋での興行や襲名興行での地方まわりを優先していた猿之助丈が、公約(?)通り3年目にして満を持しての歌舞伎座初登場…。観ておきたかったのですよね。(我が家的な事情で自粛していたんですけど、運良く出張が入ったので、つい黒ずんでしまいました( ̄ー+ ̄) )

歌舞伎座 松竹創業120周年 壽初春大歌舞伎

【夜の部】のうち
二、女暫(おんなしばらく)
   
  巴御前    玉三郎
  蒲冠者範頼  歌 六
  清水冠者義高 錦之助
  女鯰若菜   七之助
  茶後見    團 子
  手塚太郎   弘太郎
  紅梅姫    梅 丸
  家老根井行親 橘三郎
  局唐糸    笑 也
  成田五郎   男女蔵
  轟坊震斎   又五郎
  舞台番辰次  吉右衛門

三、猿翁十種の内 黒塚(くろづか)
   
  老女岩手実は安達原の鬼女 猿之助
  山伏大和坊  門之助
  強力太郎吾  寿 猿
  山伏讃岐坊  男女蔵
  阿闍梨祐慶  勘九郎

「女暫」は、本家の「暫」より洒落が効いていて、虫六的には面白くて大好きな演目であります!玉三郎丈のこの演目は、2012年9月の大阪松竹座の中村勘九郎襲名公演でも拝見して、その華麗にしてチャーミングな舞台に魅了されました。
良いのです〜(* ̄ー ̄*)
あー、佳い正月だ。

あの時の舞台番は勘九郎、セブンは今回と同じ女鯰若菜でした。その頃は勘三郎丈が必死で病と闘っていた時期で、玉様が親代わりの大奮闘だったのだと、あの舞台がフラッシュバックしました。勘三郎丈は天に召されてしまったけれど、あれから中村屋の兄弟はずいぶん成長しましたよね。

今回の舞台番は吉右衛門丈。玉様の巴御前が幕外で急に女子モードになり、なよなよと帰ろうとすると、ちゃんと六方を踏んで引きなさいとダメ出しに出てくる舞台番。そこから、人間国宝立ち役の吉右衛門に、六方を教わる、これまた人間国宝女形の玉様という…、ご馳走感たんまりのお正月ならでわの趣向ですね。

大薩摩連中は、この日は唄方が杵屋勝四郎・芳村辰三郎、三味線が杵屋勝松・松永忠一郎。筋書きには勝国さんのお名前があったのですが、残念ながらこの日はお出になっていなかったみたい。でも、勝松さんの大薩摩を堪能しました。

そして、「黒塚」。

虫六、寡聞にしてこの日初めて観たのであります、「黒塚」という演目を…。
いやぁ驚いた。面白いのなんの。
「黒塚」というのは謡曲の「黒塚(安達原)」を素材にして、昭和14年に二世市川猿之助(初代猿翁)の老女岩手(実は安達ヶ原の鬼女)で初演された舞踊劇で、第1景は能楽の様式、第2景はロシアバレエの技法を取り入れた新舞踊の形式、第3景は歌舞伎の様式と3段構成でできている…とかいう、蘊蓄はざくっと飛ばしてしまいますが(猿之助襲名公演での「黒塚」も好評でしたので、いろいろネットでも紹介されておりますので、ご参考に)、この2景が凄い!

一面ススキの野原の舞台に、老女岩手が現れて、人食いを重ね犯してきた罪業を悔やみつつ、仏に祈れば救われるという阿闍梨祐慶(勘九郎)の言葉に一縷の救いを見いだして、月明かりの下、自分の影と戯れるように踊る場面…。猿之助って本当に身体が利くんだなぁというのは今さらかも知れませんが、本当に嬉しそうで、岩手を救ってやりたい衝動に駆られました。強い照明をあてて、影を効果的に浮き上がらせるわけですけど、これは上階で観ているお客さんの方が楽しめたでしょうね。4階の幕見席にいた虫六は、得した気分になりました。

そして、何より、この伴奏が面白すぎて衝撃でした!!!!!(大げさじゃないよ)

長唄、琴、尺八の楽団による合奏で、それぞれ技巧をこらした複雑な演奏で、曲の構造とか上手く説明できませんが、もうこれだけ演奏会で聞きたい!と思いました。第2景から第3景に変わるところで演奏される三味線の曲弾きは聞き応え満点です。あの途中の大薩摩、三味線2挺で掛け合っていたような気がしましたが、そんな演奏を聴いたことがありませんでした。

唄の立ては今藤尚之さん、三味線の立ては稀音家祐介さん。お囃子は田中傳左衛門。祐介師匠、失礼ながらこれまでノーチェックでしたが(寡聞なものでスミマセン)、一気にファンになりました。
また猿之助丈のご出演の舞台を見に来れば、長唄で立たれるでしょうかね。期待です。

舞台が暗くて実は地方さんはよく見えなかったのですが、筋書きをみたら、
唄方には杵屋巳津也さんや杵屋佐喜さん(←「黒塚」は佐吉家に伝わる家の芸)、
お三味線には松永直矢さんのお名前もあり(!)、もっとトリ目を皿のようにして見るんだった ヾ(*゚A`)ノ と後悔先に立たずでありました。

そのうちNHKでやるかナー?放映したら、完全保存版だよ。
っていうか、帰宅してCD探してなかったので、先代猿之助のDVDを衝動買いしてしまった虫六です。あ”ー。


2 件のコメント:

  1. 初芝居観劇に正に感激なさった様でよろしゅうございました(^o^)

    で、黒塚のテレビ放映ですが、
    今月2日の「こいつぁ春から」という番組で既に放映されてしまいました。
    だから、再放送されない限り、もうご覧になれないと思います。

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  2. >匿名さん

    貴重な情報をありがとうございました。

    じつは、虫六はお正月に放映された伝統芸能関係の番組は全て(たぶん)録画してありました。(そこは抜かりなし ( ̄ー ̄) )
    しかし、家庭内の事情によりテレビが自由にみれない状況にありましたので、まだ再生できていませんでした。

    とくに「こいつぁ、春から」は毎年ダイジェストなので期待も薄かったので…。

    昨日、虫六子が決戦にでていったあと、早まわしでチェックし「黒塚」を確認しました。前半の1・2景が入っていないのが残念でしたが、大薩摩の曲弾きから後シテは拝見できました。上からみると「何がおきたのか?!」の仏倒しも、カメラが寄ってくれるとよく分かりますね。

    なにより、もう一度聞きたいと思っていた二挺三味線の掛け合い(唐草)が聞けて満足しました。

    こんな素晴らしい舞台が見れて1300円はコスパ良すぎ!
    時間があれば「一幕見席」にならべる首都圏の人たちは羨ましすぎです。
    (…と思っていたら、国立文楽劇場の幕見は500円だそう…う〜む)

    とりいそぎ、お返事だけ。

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