前段はいろいろあるのですが、とにかく虫六はその日、初台におりました。
そうか、お不動さんのお膝元なんだな…と思い、商店街のなかに不動尊寺を探してみると、ありました!幡ヶ谷不動尊・荘厳寺。まずは、お願いごと、お願いごと。
昔から江戸近郷の三不動(成田山、光明山、高幡山)の一つとして広く尊崇を集めた名刹で、『江戸名所図会』にも載っているとか。
それにしても、お不動さんのお膝元に東京オペラシティがあるのか、オペラシティのお膝元にお不動さんがあるのか、よくわかりませんナ。
というわけで、お不動さんは寄り道で、本来の目的地は初台のリハビリテーション病院です。こちらに、我が芝居小屋見物のご指南役でもあるN姐さんが入院しているので、お見舞いにまいったのですが、な、な、なんと、N姐さんはこのあと外出許可で、虫六を伴いつつ歌舞伎見物に行くということになっているのです。
大丈夫かなー、年の暮れに倒れて2週間も無間地獄を漂ったというのに…(本人は全然覚えてないらしいです。)お医者さんにリハビリのつもりで行ってきたらいいと言われたのだとか…。毎日のリハビリでお疲れ気味のN姐さんと、ちょっとハラハラな虫六と、そうとう心配顔のお母様とタクシーで歌舞伎座に。
いやー、黒い羽根磨きに関しては虫六も他人(ひと)のこと言えないと思っていたけど、上には上がいるものです。
とはいえ、中村屋のちびっ子襲名ですよ。三代連続の桃太郎。
しかも、会場でN姐さんのご親族もチケット買って待っていてくださり、な、な、なんと、虫六とN姐さんに回してもらったお席は…
最前列のど真ん中でした。
しえ〜、話題の襲名幕のゴシック体のお名前も角度がありすぎで、よく分かりませんです… (/ー\*)
江戸歌舞伎三百九十年 猿若祭二月大歌舞伎
平成29年2月2日(木)~26日(日) *虫六の観劇日は11日
【夜の部】
萩原雪夫 作
一、門出二人桃太郎(かどんでふたりももたろう)
三代目中村勘太郎 二代目中村長三郎 初舞台 劇中にて口上相勤め申し候
兄の桃太郎 初舞台勘太郎
弟の桃太郎 初舞台長三郎
お婆さん 時蔵
お爺さん 芝翫
息子勘作/鬼の総大将 勘九郎
嫁お鶴 七之助
犬彦 染五郎
猿彦 松緑
雉彦 菊之助
村の女 児太郎
村の男 橋之助
村の男 福之助
鬼 錦吾
鬼 亀蔵
村の男 彌十郎
庄屋妻お京 雀右衛門
吉備津神社巫女お春 魁春
庄屋高砂 梅玉
吉備津神社神主音羽 菊五郎
二、絵本太功記(えほんたいこうき) 尼ヶ崎閑居の場
武智光秀 芝翫
操 魁春
真柴久吉 錦之助
佐藤正清 橋之助
初菊 孝太郎
武智十次郎 鴈治郎
皐月 秀太郎
為永春水 原作・木村錦花 脚色
三、梅ごよみ(うめごよみ)
向島三囲堤上の場より深川仲町裏河岸の場まで
丹次郎 染五郎
芸者仇吉 菊之助
芸者米八 勘九郎
千葉半次郎 萬太郎
許嫁お蝶 児太郎
本田近常 吉之丞
芸者政次 歌女之丞
太鼓持由次郎 松之助
番頭松兵衛 橘三郎
古鳥左文太 亀鶴
千葉藤兵衛 歌六
一応、七緒八クンは平成中村座などで拝見してはいたけれど、目の前2メートルくらいの至近距離に、彼らが↑この格好でおりまして、もう可愛いのなんの。ヾ(´ε`*)ゝ
テレビで見て想像していたより、ずっと小さいの。そのちんまいのが、白塗りして、この格好…本当に木目込み人形のようでした。フジの番組で、長三郎君はまだオムツしているとか言ってましたけど、それが一舞台やっちゃうわけですから、えらいよのう。有り難いものを見せていただきました。
ご本人達は、なにしろイノセントな存在ですから、少々自由な振る舞いをされても可愛いだけなんですが、まわりに控えるひとかど過ぎた役者のみなさんが面白かったです。もうね、大ご馳走大会!大薩摩では、鳥羽屋里長師匠がでてきちゃったよう!!
胃に穴が空きそうなのを堪えている勘九郎さんや心配半分に面白がっている感じの七之助さんはもちろん、お年玉いっぱいくれそうな大人の役者さん達がおめでたく楽しげに出演している感じ、また、会場全体が寿ぐ空気に包まれている快さは、いままで見た初舞台のどれよりも強く感じられました。
染五郎の犬彦、松禄の猿彦、菊之助の雉彦、面白すぎるでしょ。化粧や衣装も秀逸でした(特に雉)。
それにしても、舞台にあがっただけで、観客が大喜びして、刀を振っただけで舞台に揃った鬼が一斉にわぁーと倒れたりして…、まだ記憶も定かでないうちからこんな風に“快感”に訴える感覚を植え付けて、舞台慣れさせてしまうんだろうなー、とか思いました。
でも、勘太郎クンは表情をみていたら、ちゃんとお芝居していたし(しかも愛ちゃん似で美形)、長三郎クンは纏う空気が鷹揚でチャーミングで勘三郎さんを思い出させ、天然な人気者になる予感です。
いやはや眼福。
N姐さんも、「楽しみねー」と目を細めて楽しそうでした。
一応、リハビリでしたので、N姐さんとお母様は「絵本太閤記」のあとの幕間に、病院に帰って行かれきました。あぁ、姐さんとこうしてお芝居見れて本当に良かったし、この先この子らが花形役者になっていく姿をじっくり見届けましょうねぇ。などと、思いながら後ろ姿を見送り…、虫六はそのまま残って「梅ごよみ」を拝見。
辰巳芸者の恋の鞘当てを描いた世話物でしたが、勘九郎さんが(へぇ、ここで女形ですかー)。初めて見る作品でしたので、ちょっと珍しかったです。菊之助は一時期ちょっと太ったかな—と思っていたのですが、この役はとても綺麗で似合っていました。こういう徒な女形はぴったりだなぁ。
そして、ばたばたと最終のはやぶさに乗り、虫六の日帰り黒い羽根ツアーは終了したのでした。
(翌日はタッチ交代で、家人Tが、虫六子のアパート契約とデビッド・ボウイ展のため東京に出かけてゆきました。)