2016年1月30日土曜日

33年ぶりの再演「熱海殺人事件」

つかこうへいの『熱海殺人事件』が、33年ぶりに再演された!
しかも、部長刑事の木村伝兵衛を風間杜夫が、新米刑事の熊田留吉を平田満で、当時のキャスティングそのままで!
かつ、演出は「劇団☆新感線」のいのうえひでのりが引きうけた。
そんでもって、うれしいS市公演。…観にいかない理由が見つからない…というわけで、行ってまいりました。

○『熱海殺人事件』
1月20日(水)18:30開場 19:00開演
会場 電力ホール
全席指定 8000円

木村伝兵衛 風間杜夫
熊田留吉  平田満
片桐ハナ子 愛原美花
大山金太郞 中尾明慶

演出 いのうえひでのり

なにしろ33年ぶりの再演ですので、風間さんも平田さんも貫禄がついていましたし、客席の方も33年スライドして(たぶん)年齢層が上がっていましたが、芝居は古びていないっていうか、つかこうへいさんの作品の普遍性を思い知りました。また、風間さんのギラギラした化粧も健在でぶっ切れて快感すら感じる悪態とスピード感あるセリフ回し、平田さんとの掛け合い、面白かったなー。横隔膜の大運動会でした。
休憩なしでやりまくってましたが、役者ってエネルギッシュだな。特に平田さん、歳を感じさせませんでした、若—っ!

33年ぶりとか書きましたが、実は、虫六はリアルでつかさんのお芝居をみておりません。その頃は、ど田舎の高校生→貧しい東北地方都市の大学生に移行しているころでしたので、東京のサブカルは「情報」でしかなかったんですね。(東京は展覧会と珍しい映画を見に行く場所でした。リアルで東京まで芝居を観にいくようになったのは少し遅れて野田秀樹の『夢の遊民社』です。)それでも、映画版『蒲田行進曲』(←もちろんこれは映画館で見ましたが!)が作られる前に、虫六はつかこうへいを知ってはいました。すなわち…

和田誠『倫敦巴里』より
こんな実験的なエッセイや

『和田誠百貨店』より
 こういうポスターや
『和田誠百貨店』より

こういうポスターで。
つまりすべて和田誠さんのお仕事を通して、ということです。
もちろん『熱海殺人事件』のポスターもみていましたが、手元資料ではすぐに探し出せず残念!

そのころ、唐組のポスターは横尾忠則さんが作っていてこれもそうとうショッキングだったのですが、虫六のカリスマは和田さんで、シンプルな線と絶妙な色彩感覚で表現されるデザイン性の高いイラストやポスターや本の表紙の作品はもちろん、キネマ旬報の『お楽しみはこれからだ』を初めとする映画や芝居やジャズの魅力をイラスト付きで紹介したエッセイはバイブルでした。今思えば、このような世界へ深く誘い込まれる扉を開いてくれたのも和田さんの仕事にあったのだと…。
そんなわけで、このお芝居についても、虫六は和田語や和田絵で訳されたイメージを勝手に膨らませていたのです。

しかし、今回はじめてその芝居を見ることなり、あー、これ33年前に見てたらあまりにもストレートにパンチが入って立ち直れなかったかもしれないなーと思いました。

大山金太郞が殺したもの。
…集団就職で上京してきた工員の大山は、田舎で介護士をしている幼馴染の恋人アイ子を熱海に旅行に誘い、どういう理由か殺害に及んでしまう…

そのころは自分の田舎もんの出自といいますか生まれ育ちに、愛着もあったけれど、それ以上に負い目や羞恥心が歪つなまま巣くっているという感じが拭い難くありましたから。
とはいえ、33年前だったらそんなパーソナルな感傷で見たかも知れませんが、いま改めてこのお芝居をみると、33年前にあった「東京ー田舎」という構図というよりも、日本人は日本そのものを拒否して、息づいていたはずの大事なものを抹殺して、誤魔化したまま、「東京」的な幻想をすみずみまで浸透させながら国を作ってきたのかな…ということを、当時のシクシクした疼きと重なりつつ感じられずにはいられませんでした。
そういう意味で、つかさんの脚本に改めて脱帽したのでした。

2016年1月18日月曜日

大衆紙芝居ネットワーク10年目の、翠風苑公演

虫六の仲間がつくっている街頭紙芝居系の団体「大衆紙芝居ネットワーク」。今年度満10周年を迎えまして、「ますます、それぞれ頑張ろうなー!」と無責任な気合いを入れていたのですが…


メンバーから「自分たちの10年を振り返る意味で、ネットワークの原点ともなった井上藤吉さん(仙台で最後の紙芝居師)に所縁の翠風苑で上演会をしたい」との声があがり、久しぶりで上演の機会をつくらせていただきました。

仙台市にある特別養護老人ホーム ・八木山翠風苑は、井上さんが最晩年に入所なさっていた施設で、所蔵なさっていた紙芝居の一部をご寄贈になり、それを虫六が調査させて頂いたご縁で、ネットワークの活動に絵を利用させて頂いたり、また井上さんがご存命の頃には何度か出前上演をさせていただいていました。

そんなわけで久しぶりの上演会。井上さんゆかりの紙芝居をメンバー4人が上演しました。

入館前に近くのファミレスでお昼を食べながら仕込み作業。
昔書かれた裏書き(紙芝居の絵の裏に書いてあるセリフの台本)はそのまま実演できないいろんな事情などありまして、今は上演者が独自に改良した台本を作りますが、手前にあるのはそれを貼り付けるマスキングテープ。再利用するうちに糊の成分も弱まって裏紙への影響も緩和するので使いやすくなるそうです。ある意味職人技ですね。

今回の番組は、
 さとうひるね 「まんだら時計」
 和田佳「赤胴赤鬼金之助」
 恩部だっこ「ハリケンPちゃん」「クイズ」
 のんきやあやや「権八たぬき漫遊記」

ギャラリーは入所者の方とスタッフの皆さんで20人に満たないくらいでしたが、とてもいい上演会でした。なかなか打てば響くというわけにはいかないお年寄りのみなさんを前に、無理せず、反応を見ながら柔らかに余裕を持って演じるメンバーの姿を見て、(上手くなったなー!)と心から実感。感心しました。
少し絵が小さくて暗いということがあり、絵が見えてないのかな?と反省点もあったのですが、そんな状況でも、うんうんと頷きながら食いついてくれ、また、クイズにも積極的に参加していただき、終盤では掛け声までかけていただいて、優しいお年寄りの皆さんに感謝です。また、受け入れ体制を作ってくださった翠風苑のスタッフの皆さんにも感謝です。

実演したメンバーそれぞれは10年目に原点の舞台に立って、どんな感慨を持ったのだろうか。
 
東京から駆けつけたのんきやあややちゃん。
さすがに公園や横浜市博物館でかなり実戦を積んでいるので実力つけてます。 危なげない余裕の演技、かつ、面白れー。
いやいや、他の皆さんも本当に上手。10年続けるってこういうことなんですねー。

終演後に打ち上げしました(定例会もしましたが)。
充実感のあるとても良い笑顔なので、モザイクなしです。あしからずー。

追伸:打ち上げの席で、「和田佳」の芸名が、もともと愛称の「カオリン(かおりん)」に変名することになりました。

2016年1月6日水曜日

虫六子、成人す。

今年は虫六子の学年が成人式…ということで、なぜかオイラのポケマネから無い袖を振らなければならないことになり、着せてやりました振り袖を。(あ、ちなみにオイラは成人式は出ない派でしたけどね)。正確には、お式は1月10日のようなのですが、本人は寸前まで学期末試験のため、正月三ヶ日明けたら東京に逆戻りしていったので、年末に、写真だけ前撮りに行ってきました。


高校の卒業式の時もお世話になった、S市の老舗写真館・東陽写場。お着物も貸していただくことになってます。(現役で進学したお友だちは1年も前から決めていたらしいのですが、我々が動いたのはゴールデンウィーク頃…良い着物残っているのかなぁ、と不安でしたが、小柄なのが幸いして、古典柄で自分の好みの仕立て前の着物があったようです。良かったね)

この日のために髪を伸ばすこともなく、丸腰で臨む虫六子。

それにしても、着付け→ポーズ→撮影と淀みなく、無駄な動きのない、しかしモデルを緊張させることなく良い表情を引き出すため、雰囲気はあくまでもソフトな写真スタジオ。ぶるる、プロの現場です。ステキすぎる。
どの工程でも全てが面白く興味津々で観察モードに切りかわってしまった母でしたが…、虫六子の方は、馬子にも衣装の照れくささと、おのれの可愛さの限界(?)を気にして、さかんに変顔してみせてくれてます。(気にするなー、虫六子よ。どんな名女優でも二十歳の時はパンパンの顔をしていたのだよ…)

いやー、どんな写真が出来てくるのか愉しみですねー(苦笑)
20年か〜!わしらも歳を取るわけですね。(遠い目走馬燈)


*今日の日記は予告なしに削除される可能性があります。(たぶん)

2016年1月3日日曜日

12月に読んだ本

2015年12月の読書メーター
読んだ本の数:3冊
読んだページ数:588ページ
ナイス数:11ナイス

森元暢之作品集(Ⅰ)「ぴあ」の時代Ⅰ (森元暢之作品集)森元暢之作品集(Ⅰ)「ぴあ」の時代Ⅰ (森元暢之作品集)感想
ふちがみとふなとの「だってチューだもん」を聞いていたら、無性に森元さんの作品が知りたくなってポチってしまいました。「ぴあ」の時代というけれど、なるほど知らないわけです関西版でした。ま、仙台で学生やってたのので東京版でもほとんど買ってませんでしたが。でも、ガロ全盛の頃の不条理でナンセンスなあの感じが蘇ってきて面白く読みました。そしてこの作品についてはコマの半分は手書きのネームで絵は漫画というよりカットみたいにどんどん省略されてってるところがオカシかった。まだ「だってチューだもん」には出会っていません。
読了日:12月29日 著者:森元暢之

義太夫を聴こう義太夫を聴こう感想
義太夫は「音曲」なので、目で見て覚えるものでなく耳で聞いて覚えるもの、意味を理解する前に音を身体に入れてしまうのが橋本流。物語でなくあえて紹介された3つの「道行」は、有名な義太夫狂言の中に挿入されるものだけど、時間と空間をワープする場面で美しい景観を見せながらナンセンスな言葉遊びなんかも絡ませつつ1曲として成立させているところが日本文化は懐が深い。よく知られた前後の文脈があるからこういうブレイクが作り出せるんでしょうね。イメージがコラージュされてPVのよう。娘義太夫、チャンスがあれば聴きにいきたいなぁ。
読了日:12月27日 著者:橋本治

「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法感想
ウクレレを持って少年院を訪問しながら少年たちと向き合い、また、100人もの非行少年を雇い入れ更正を見守るガソリンスタンドの社長さんや、ドロップアウトした少年たちに進学のチャンスを与える塾経営者などのインタビューも目を開かれたが、著書は途中から急転する。執筆の途中で著者が末期癌を宣告されたのだ。そこに発生した佐世保の同級生殺人事件。過去を内側から見つめ直しながら、少女に向けて命を削りとるように紡がれる言葉は、重く心に訴える。柔らかくて強い、こんな人もいるんですね。ご冥福をお祈りします。
読了日:12月20日 著者:毛利甚八

読書メーター

2016年1月1日金曜日

謹賀新年2016

あけましておめでとうございます。


旧年中は、拙ブログにお付き合いいただき心より御礼申し上げます。
本年も、凌ぎ仕事に身体とこころの健康を害されないよう、
黒い翅の手入れを心がけつつ、ぼちぼちと、
毒にも薬にもならない話題をつぶやいてゆきたいと存じます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

2016年1月元旦