○『世界が先に驚いた SHUNGA 春画展』
永青文庫2015年9月19日〜12月23日
(前期/9月19日〜11月1日、後期/11月3日〜12月23日)
一昨年に大英博物館で行われて大変話題になった 『春画 日本美術の性とたのしみ』展の凱旋展とのことですが、日本では受け皿になる美術館が見つからず、開催にこぎ着けるまで難航して関係者の方はそうとうご苦労をなさったそうです。細川家ゆかりの永青文庫が懐深く引き受けての、本邦初の春画展となったもよう。ヨーロッパが認めたアートでも難しいですか。
(…なにしろ専門家が作って専門家が選んだオリンピックエンブレムに、「日の丸が下にあるとはけしからん!」なんて、エラい爺さん(←勝手に断定)に横槍を入れられて、あっさり修正させるような民度ですからね、我が国は…)
そんなわけで、後にも先にもこんな展覧会は日本じゃ見れないのかナーという予感が働きまして、足を運びました目白台まで。
この展覧会を文章で表現するのはなかなか難しいですが、本来、誰でも見られるわけじゃない秘められたジャンルの作品なのに、年代の幅もあり、名だたる絵師達が参戦して筆を競い、趣向もさまざまで、そのバリエーションの多さに驚きました。
どうやったらこんな体位に…と苦笑とするほどデフォルメしながらの強調しすぎの交合場面の表現や、大胆構図ながらうっとりするほど繊細な線で描かれた美しい横判錦絵(鳥居清長)、鈴木春信なども初々しい春画を描いていたんだとか、「お染久松」の身も蓋も無いその場面(描くか−、描くのかー!)とか、いろいろ発見がありました。
大名家に伝わる巻物などは婚礼の調度品だけあって、狩野派の絵師が凝った装飾を施して筆をふるっていたり…。
考えてみれば、江戸時代の御武家の成婚といえば、何が何でも子をなさねばならないというミッションがあるわけで、非常に大切な教本だったんですね。ご婦人の恍惚の表情がポジティブに描かれているのが印象的でした。
もちろん武家のみならずさまざまな階層の町人たちも、秘かにこのような浮世絵を愉しんだのでしょうけれど、これらの春画をみながら虫六が思い出したのは、民謡に歌い込まれる春歌でした。
「日本禁歌集」にも紹介されていますが、各地にそのようなエッチな民謡が残っていて、聴いてみるとそのあまりの大らかさに思わず笑いがでるのです。某兄弟子が、「民謡の新年会に呼ばれていくと、おばちゃんたちの猥談がとまんない」という話を聞いたことがあります。都会では、取り締まりもあるせいでしょうけれど家宝の巻物にしたり豆本なんかに仕立てたりしながらこっそり愉しむことが、地方ではみんなで大っぴらに歌って踊って愉しんでたのかなと、思ったらちょっと面白かったのでした。タブーでもあるけど娯楽でもある不変のテーマ。いづれにしても「種の保存」は生物的に最大の命題には違いなのでしょうけれど。
それにしてもこの企画展、とても混んでいるんですが、あまり他の美術展にはない神妙な空気感が漂っていて、それも面白かったのでした。
この超ぶあつい図録は4000円。ビニール掛かってます。
次があるかどうか分からないので、迷わず購入。
【補足】
ところで、永青文庫のあるこの界隈は閑静で風情のある雰囲気で、この日は残念ながら雨模様でしたが、お散歩したら楽しそうでした。神田川沿いには桜並木があり、今度は春の頃にゆっくり来て、落ち着いた永青文庫の展示を拝見しようかなと思ったのでした。
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