今年は公演日が月曜日だったので、個人的には休みをとらずして昼夜公演を遠慮なく拝見できて嬉し。
はいはい、入り口ではいつものお人形さんがお出迎え。みなさん、ごいっしょに写真を撮ろうと順番待ちでしたが、自分は入らなくていいのよ〜と脇からカメラを構えらたら、こちらに視線をくださいました。ありがとう蓑紫郎さん。若手がんばれ!
というわけで、今年の演目は …
【昼の部】
『妹背山婦女庭訓』
杉酒屋の段
豊竹 呂勢大夫
鶴澤 清介
道行恋苧環
お三輪 豊竹 呂勢大夫
求馬 竹本 文字久太夫
橘姫 豊竹 芳穂太夫
鶴澤 清治
鶴澤 清志郞
鶴澤 寛太郎
鶴澤 清公
姫戻りの段
豊竹 芳穂太夫
竹澤 團吾
金殿の段
豊竹 英太夫
竹澤 團七
(人形)
橘姫 吉田 勘彌
求馬 実は 藤原淡海 豊松 清十郞
お三輪 桐竹 勘十郎
ほか
【夜の部】
「近頃河原の達引」
四条河原の段
竹本 文字久太夫
鶴澤 清志郞
(人形)
横淵官左衛門 吉田 幸助
仲買勘蔵 吉田 文哉
井筒屋伝兵衛 豊松 清十郞
廻しの久八 吉田 一輔
堀川猿廻しの段
竹本 津駒太夫
鶴澤 藤蔵
ツレ 鶴澤 寛太郎
(人形)
稽古娘おつる 桐竹 勘次郎
与次郎の母 吉田 蓑一郎
猿廻し与次郎 桐竹 勘十郎
娘おしゅん 吉田 勘彌
井筒屋伝兵衛 豊松 清十郞
ほか
『妹背山婦女庭訓』は、たしか去年の国立劇場9月の演目で掛かっていたと記憶していて、見たくても見られなかったので、去年から楽しみにしていました。でも、通しではなく「杉酒屋の段」から「金殿の段」まで…。地方公演なのでやむなしかも知れませんですけども。
でも、初っぱなから呂勢大夫さんと清介師匠の「杉酒屋」ですよー。上がります。清治師匠率いる「道行恋の苧環」は、緊張感ある4挺三味線、あり得ないくらい揃ってたな、格好良かった。清治師匠のご出演は最近こういう合奏しか聞けてないような気がしますが、それでも地方まわりにも必ず来てくださって、本当に嬉しい。これだから昼の部外せないんですよね。太夫も、呂勢・文字久・芳穂と若手の実力派が勢揃い。それぞれ個性が違っていて面白いですね。芳穂太夫の美声が冴えていました。大注目です。
面白かったのは『近頃河原の達引』。猿まわしが主人公の物語りなので、ずっと気になってたのですが、やっと拝見することができました。
目の見えない母親をいたわりながら、猿まわしで暮らしをたてている与次郎。昔の芸人の暮らしぶりが垣間見えて興味深かったけれど、本当に貧乏だったなー(涙)。
仕事から帰って、梅干し一つで残してきたおむすびをササッと平らげてお腹を満たしていたり、廓勤めから戻って来た妹(おしゅん)のために自分の来ていた着物を掛けて床を作ってやって、自分は寒そうに煎餅布団にくるまって…、与次郎さんどこまでもいい人だ(涙)。
投げ銭を数える場面では、砂利やゴミなんかもいっしょに袋に入っているのをゴザに広げて、お金だけ拾って数えて、ゴミはほかしてた。猿は、家の中に飼育檻があって、壁の下の方に猿用の入口をこしらえてました。中で仔猿が待ってたよ。へぇえ、細かなところまで様子が伝えられるものですね。
悪い人いないけど、切ない話。
お名前でませんが、お猿の芸をさせる人形遣いさん、いい仕事してました。
で、分かってしまった。これは三味線弾きに聞かせどころ満載の名作だったのだ!
最初に、盲目のお母さんとお稽古にきているお嬢ちゃんが『鳥辺山』(!←心中はこの時点で暗示されてました)を弾く場面も、陰三味線も含め、よく人形の振りに合うもんだと感心しましたが、最後にたっぷり用意されていた三味線のみの聞かせどころ…。堪能しました。すごいわ、藤蔵師匠。汗ぐっしょりの大熱演、段の途中で糸を張り替えるの2回も見てしまったよ〜。堀川猿廻しの段、凄い!
そういえば、昼の部でも夜の部でも、開場のときに藤蔵師匠がロビーに姿を現してお客さんの様子を見ていました。こんな演奏の序章だったとは…お疲れさまでした。
それにしても、今回の地方巡業はお三味線方はいいとして、太夫方も人形方も主要な皆さんがあまりご出演になってないのが気になりました。柱を欠いているという印象で、その理由は分かりませんが、手元に一昨年のパンフレットがすぐ出て来たので比較して見ましたら…。
これは平成26年の地方公演の出演者。
で、これが今年(平成28年)。
ややや、どうしたことだ…。
(こんな小姑みたいなことはしたくないんだけども、この力の削ぎ方は気になりませんか…)
先日、医学生理学賞に大隅良典・東京工業大栄誉教授が選ばれた時に、某理系の名誉教授の方々が3人ばかり立ち話をしているのに居合わせて、「ノーベル賞なんか2020年以降は全くとれなくなるから。いまの文科省のもとでは…」と言う話を聞いて、説得力あるなーと思ったのですが、それを思い出してしまいました。
0 件のコメント:
コメントを投稿