これ、こんぴら歌舞伎ツアーと言っていいのか憚られるのですが、虫六的にひとくくりの時間軸ですので、今回はこのお芝居で〆でございます。
赤坂歌舞伎2007『夢幻恋双紙 赤目の転生』。勘九郎さんが人気演出家の蓬莱竜太さんにラブコールして1本書いてもらったという新作歌舞伎。中村屋、攻めの公演です(たぶん)。
昨日までは江戸時代の芝居小屋で熱に浮かされておりましたが、今日は東京のど真ん中(?)赤坂の幟の前に立っております。タイムワープしたみたいッス。
ははあ、「赤坂ACTシアター」の上にまねき看板があげられておりますよ。みんな仲良く1列です。猿弥さん、鶴松くん、いてうさん…存在感ましましですね。っていうか、同じ大きさなので、鶴松くんが座頭みたいに見えるのは私だけ?
○赤坂大歌舞伎
平成29年4月6日(木)~25日(火)
蓬莱竜太 作・演出
新作歌舞伎
夢幻恋双紙(ゆめまぼろしかこいぞうし) 赤目の転生(あかめのてんせい)
太郎 中村 勘九郎
歌 中村 七之助
剛太 市川 猿弥
静 中村 鶴松
末吉 中村 いてう
源乃助 中村 亀鶴
善次郎 片岡 亀蔵
「どこにでもありそうな原っぱ」に長屋の子供たち。訳ありで引っ越してきた歌(七之助)という少女に恋い焦がれる赤目の太郎(勘九郎)。歌には悪そうな隻眼の兄・源蔵(亀鶴)。二人は夫婦になる。太郎は優しいけれど生活能力がなく、歌との生活は破綻…太郎は、源蔵の悪事の手伝いをさせられながら、ついには命を落とす…と思ったら、あの原っぱの同じ場面に立っている…。また同じセリフがループ状に繰り返され、次に出て来た太郎は、万能選手のパワハラ男…。
歌への思いは同じなれど、なんど生き返っても上手く行かない太郎の人生。最後は…。
…目がね…、最後は禁断パターンかなって、ちょっと分かっちゃいました。
太郎が変わるにあわせ、脇のキャラクターも微妙に変わるものの、役者に似合った脚本で、アテ書きなのかな?冒頭の「原っぱ」で歌に似顔絵を見せ合う場面で、鶴松・静が木の下に逃げて「静は描いてないからね—」とすねていうのが可愛かった。もっとも、さすがに4回繰り返されるとちょっと飽きましたが…。
鶴松君は、大人になってちょっと声が太くなってしまったんですね。
勘九郎さんは、なぜだか舞台で脱ぎたがってないか?身体に自信があるのは分かるんだが…見せたいのか、見せたいんだろうなー ( ̄◆ ̄;)
七之助・歌が、質種に入れた感じで着物を減らしていき、後ろ姿だけでうらぶれていく時間の経過を見せたところは上手だなと感心しました。
全体的には勘九郎さんの得意領域という感じで、意欲もあり面白かったけれど、新作歌舞伎というよりは、ストレートプレイ寄りの時代劇って感じでした。コクーン歌舞伎があっての赤坂歌舞伎なんだろうなと、芝居の最中にコクーンで見たあの芝居やこの芝居がフラッシュバックしてしまいました。
「歌舞伎役者がやればなんでも歌舞伎になる」と勘三郎さんはおっしゃったそうですが、本当にそうなのかな。(いや、勘三郎さんに言われると説得力はあるんですけどね)。現代的なテーマや素材で作っても歌舞伎にはなると思うけれど、歌舞伎という様式のデパートみたいな演劇手法の本質を掴み、その寸法に収められるかどうかで、面白さはだいぶ違ってくると思う。
「研辰の討たれ」や「ワンピース」は、その点で成功していると思うし、この兄弟の最高傑作は、虫六的にはまだ「天日坊」です。あれ、再演して欲しいなぁ。
それからね、これは余計なお世話かも知れないのですが、新作歌舞伎っていう時に、役者だけが生き残れば歌舞伎が生き残れるって言うものでもない気がするんですよね。黒御簾も、竹本や地方も、道具も、鬘も、歌舞伎を支えている全てが新しいことに挑戦できるような作品を生み出してもらいたいなと思うんですよ。ほんと、好きな事言って申し訳ないけれど、でないとやっぱり先細りする気がするんですよね。
というわけで、最後は荒けずりながら伸びしろいっぱいの芝居をみて、満腹で帰って来た黒翅ツアーでした。
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