2014年6月19日木曜日

新生中村座_コクーン歌舞伎「三人吉三」

芝居小屋道の師匠であるN姐さんにお誘いいただき、お仲間の皆さんとコクーン歌舞伎を観に来ました。『天日坊』以来のコクーン歌舞伎であります。

十八代目亡きあと、息子達が座頭になっての新生コクーン歌舞伎、新生中村座。
今年の演目はこれまでコクーンでは二度ほど上演されている『三人吉三』。「月も朧に白魚の…」ってやつですね、楽しみであります!


今日は椅子席…(思い出してみると、平場にいることが多かった虫六。椅子席ははじめてかも)。このあたりでも臨場感が伝わってくる近さは、まさに芝居小屋の感覚です。

○シアターコクーン 渋谷・コクーン歌舞伎第十四弾
三人吉三(さんにんきちさ)
平成26年6月6日(金)~28日(土)

◆演出・美術  串田 和 美
   
◆出演            
和尚吉三    中村 勘九郎
お嬢吉三    中村 七之助
お坊吉三    尾上 松 也
十三郎     坂東 新 悟
おとせ     中村 鶴 松
海老名軍蔵/八百屋久兵衛  真那胡 敬二
太郎右衛門/長沼六郎    大森 博 史
堂守源次坊   笈田 ヨ シ
土左衛門伝吉  笹野 高 史
研師与九兵衛  片岡 亀 蔵


いろいろ事情はあるのでしょうが、十八代目が牽引していた平成中村座の常連役者である扇雀さんや橋之助さん、彌十郎さんの姿はありません。しかし、亀蔵さんや笹野さんは今回も健在でした。このことはなんだか嬉しいです。
いずれ息子達は彼らの世代で仲間を作って行かなくてはならないのでしょうが、それでも、亀蔵さんや笹野さんの存在があるのはとても深味を加えてくれますね。

そして!今回初参加は尾上松也!お坊吉三で大奮闘であります。
また、中村座の秘蔵っ子・鶴松君がおとせ役で好演、それからパパ(彌十郎さん)は歌舞伎座にご出演中ですが息子の新吾丈はコクーンへ参加、頑張っておりました。今度のコクーンは役者の若さを全開にアピールしている印象です。
演出助手として、長塚圭史さんが加わっていましたしね。生まれ変わって行かなければならないのだと思います。
客席も歌舞伎座なんかに比べ軽く二〇歳は若いね。いいことだと思いますが。

原作主人公の実年齢にも近いし、何の因果でか、人生をまっすぐ歩けない若者達のヒリヒリした居たたまれなさがリアルです。黙阿弥のころもこんな感じだったのかー。

そもそも『三人吉三』って、町の不良を題材にした話だもんね。歌舞伎役者って眉を剃っていたりするから、ポスターも狙ってるみたいだけど、パンフレットの写真が本当のチーマー(この単語まだ死語でないですね?)みたいでなんだか怖いぞ。

『天日坊』のときは(と比較しちゃいますが)、下座を使わずジャズ・トランペットの生演奏がカッコ良くてしびれましたが、今回はパーカッションが中心です。幕開きには、暗がりで俳優がまな板でトントンしているナーと思っていたら、いつの間にかトントントントンとセッションが始まり、照明がぱっ!最初の魔法がかかります。今回もパーカッションには渋さ知らズでお馴染み関根真理さんの名前があって期待値が上がりましたが、今日は交代出演の熊谷太輔さんのようでありました。基本的にパーカッションは舞台にあっていたし良かったです!
が、他の音源(エレキギターとか)が録音で大音量で、ちょっと期待はずれでした。
 もちろん今の音楽も嵌れば良いのですが、下座の演奏で新しいことってできないのかな?と思います。ただ邦楽を使うと高額なので、製作的な理由で現代音楽ってこともあるのかな…などとゲスな心配などもしてしまうのだった。
 
舞台装置も、大川端の場面は回り舞台に大きな橋を架け、その下には本水のプール。ゆらゆらした水紋が舞台に投影されたりして、今っぽい。効果的に水を使っていました。
照明も面白かったけれど、こういうのは歌舞伎にはない表現ですね。
現代劇の俳優によるチャンバラは、????でしたが、七之助(お嬢)と松也(お坊)の殺陣の場面は身体が利いて、息もあっていて、迫力ありました。水をばしゃばしゃする演出も面白い。しかし、この二人、衆道の間柄に描かれていたのはちょっと疑問。無いとは言わないけれど、こんな風に露骨な感じでしたっけ?須彌壇から真っ赤な毛氈を舞台いっぱいに引き出して、罪を告白しつつ刹那的にそんな感じになってしまう場面は、まるで「清順の映画かよ」でありました。そう描いてしまうと和尚吉三が浮いちゃいまんねん。

犬のモチーフがくどいほど繰り返し出て来て、畜生道が全体のテーマなのだというのも、ちょっと説明的すぎるような気がしました。

終盤の大団円の雪の中の殺陣も迫力ありました。これでもかーっていう豪雪…。前の方の席のみなさんの頭や肩にも深く降り積もって、風景の一部と化しておりました。

それにしても、舞台は全体にとても視覚的。もともと絵面のきれいな芝居ですが、さらにどう見せるかにこだわっている感じが伝わってきました。若い役者も綺麗だし。

そんなわけで、今回のコクーン歌舞伎。虫六的は楽しめたので合格点ですが、まだまだ延びシロもあるんでないか?ということで、次回に期待なのでありました。…でも、この方向で行かれちゃうとソフトヤンキーな嗜好性を帯びそうでイヤだなと言うことだけは釘を刺しておきたいと思います。


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