いつもとなーんか違うなぁと思ったら、櫓が立ってないのだ。歌舞伎じゃなくて新派だから立たないのですね。ある意味、新鮮。…そう思って振り返ってみると、新派の舞台ってほとんど見た事ないんだな、初めてかもしれず…。
なぜ、新派の舞台を見に来たのか?それは、十七世・十八世の中村勘三郎追善公演で、中村屋の若太夫兄弟がご出演だからです。追善公演は10月歌舞伎座でも行われていましたが、次の上京は11月1日のお浚い会と決まっていたので、狙いを定めてのチケ・ゲットであります。
◆十一月新派特別公演
平成26年度(第69回)文化庁芸術祭参加公演
一、鶴八鶴次郎
鶴賀鶴次郎 : 中村 勘九郎
鶴賀鶴八 : 中村 七之助
興行元 竹野 : 立松 昭二
弟子 鶴子 : 瀬戸 摩純
番頭 佐平 : 柄本 明
二、京舞 ―劇中追善ご挨拶申し上げます―
片山春子 : 水谷 八重子
杉浦 : 近藤 正臣
おきく : 高橋 よしこ
松本佐多 : 伊藤 みどり
おまき : 青柳 喜伊子
まつ子 : 石原 舞子
片山博通 : 中村 勘九郎
片山愛子 : 波乃 久里子
劇中に追善ご挨拶があり、毎回ゲストが変わります。
■日程 2014年11月1日(土)~25日(火)
昼の部 11:00開演
夜の部 16:30開演
そんなわけで、追善公演の演目は、芸もの二題。
『鶴八鶴次郎
』。鶴次郎(勘九郎)と二代目鶴八ことお豊(七之助)は、新内の相方で、若いながらもそれぞれ名人の呼び声高い人気者。舞台のこととなると、互いに譲らず喧嘩がたえない。っていうか、鶴八にご贔屓の旦那ができると鶴次郎の機嫌が悪くなり、ついつい難癖つけて意地の張り合いが…、というめんどくさい関係。なんだかんだでお互いに好いていることが分かり、夫婦になる約束をして、師匠でお豊の母である初代鶴賀鶴八の名のついた寄席「鶴賀亭」を作ろうと心をひとつに。しかし、その寄席を作る資金を贔屓の旦那に借りたことが分かって、鶴次郎はまたまた嫉妬で逆ギレ…、愛想を尽かしたお豊はコンビ解消を言い渡して、旦那のもとへ、三味線弾きをやめてしまう…。
難しいなー、芸人は。互いが才能を認め合う天才どおしなのに、それが発揮できない、芸を潰してしまう方へ方へと向かってしまう、依怙地さ。もったいないっていうか、犯罪行為でしょ。男の悲哀の前に、どうにかしろよ、そのめんどくさい性格を!と突っ込みたくなった虫六です。
でも、寄席が華やかな頃の楽屋と、落ちぶれた芸人が行き着く場末感、大正時代の芸能界ってこんな感じだったのか。新内の全盛期でしょうし。このお芝居は川口松太郎が第1回の直木賞をもらった小説の舞台化らしいです。鶴次郎の役は十八代目も務めたとのこと、そうでなくても勘九郎がやると被ってしまいますけどね。
『京舞』の方は、三代目井上八千代さんをモデルに、北條秀司さんが書かれた脚本とのこと。京舞の家元の剛胆なキャラクターが面白い。まさに大刀自って感じ。これは、もとは十七代目が片岡春子役をやることになっていたのが、体調不良で降板することになり、水谷八重子(当時良重)が急遽代役をすることになったという曰く付きの役だそうです。
舞台が始まったときは、新派って女優がいっぱい出るんだなー、それにしても全体的に老齢化が…と、ちいと戸惑いましたが。京都の芸者衆の粋な風情は、ぽっと出の女優さんには表現できないわけで、次々出てくる洋髪に着物のご婦人方のカッコ良さに次第に目を奪われました。そして、大刀自に振り回されるお芝居が面白いこと…。新派、食わず嫌いだったかもしれません。波乃久里子さんも大奮闘。若い頃の役は…若い役者を使ってもありでない?と思わなくもありませんでしたが、後半はきりっとしていかしてました。勘九郎と七之助の新派出演は心強かったでしょうね。
虫六が見た日の追善挨拶のゲストは竹下景子さん。
白っぽい山霞の模様の着物姿がすごく清楚でステキでした。思い出話も面白く、頭のいい人だということがよく分かる。竹下さんもお三味線やっているんですよねー。
十八代を見送ってから、もう2年も経つんですね。本当にあっという間です。
でも、ふたりの息子は確実に大きくなっています。近くで見守っていてください。合掌。
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