新橋演舞場は、いよいよ澤瀉屋4人の襲名公演です。これは、歴史の現場に居合わせる気合いでなんとしても見なくては!!と、汚い仕事に手を染める覚悟で(←ウソです)プレミアムチケットをゲットしてもらいました。
昼の部は、本当にソッコー完売だったらしいです。私もあと2人分で鉄の扉が閉まっていたと…。前に電話が繋がっていた人がもう3枚買ったらアウトだったと…。
恐ろしい((゜Д゜Uu))━━!!!!!!
某福山雅治氏がアートディレクターをした新猿之助の襲名公演ポスター。
なんか亀治郎と仲がいいらしい…と聞いて(文藝春秋で読んだんですけど)、前日に「龍馬伝」の最終回を再視聴して備えました。香川照之が演じた岩崎弥太郎は、龍馬に対して陰の存在でもあり、その弥太郎そっくりの亀治郎が刺客となって龍馬を切るというのは演出上欠かせないキャスティングだったとか。なるほど、香川照之と亀治郎が線対称に画面を割るシーンがありました。似ているんですよね…、やっぱり従兄弟なので。あ、脱線しちゃいましたね。
新橋演舞場
初代市川猿翁 三代目市川段四郎 50回忌追善
六月大歌舞伎
二代目市川猿翁 四代目市川猿之助 九代目市川中車 襲名披露
五代目市川團子 初舞台
平成24年6月5日〜29日
【昼の部】
一、小栗栖の長兵衛(おぐるすのちょうべえ)
長兵衛 中 車
馬士弥太八 右 近
妹おいね 笑三郎
堀尾茂助 月乃助
猟人伝蔵 弘太郎
父長九郎 寿 猿
巫女小鈴 春 猿
僧法善 猿 弥
七之助 門之助
二、口上
猿之助改め猿 翁
亀治郎改め猿之助
中 車
初舞台 團 子
幹部俳優出演
三、三代猿之助 四十八撰の内 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
川連法眼館の場
市川猿之助宙乗り狐六法相勤め申し候
佐藤忠信/忠信実は源九郎狐 亀治郎改め猿之助
駿河次郎 門之助
亀井六郎 右 近
飛鳥 竹三郎
川連法眼 段四郎(休演のため、寿猿)
静御前 秀太郎
源義経 藤十郎
中車の初舞台「小栗栖の長兵衛」は、もう幕があいてから20日近く経つのですが、まだ緊張が伝わって来るものでした。演目が、岡本綺堂作とあって時代がかった歌舞伎歌舞伎していない感じの作品なので、それほど違和感はありませんでしたが、いづれ第一歩なのでいいとも悪いとも言えないけれど、とにかく、40代で歌舞伎界に身を投じようという決心は並の覚悟ではないと思うし、次を見守りたいと思いました。でもそれなりに堂にいってた感じでしたよ。さすが実力派俳優。丸本ものとか、まだまだハードルはあるでしょうが、がんばってください。
っていうか、まわりで支えなければ…という澤瀉屋の俳優達の思いの方が強かったという気もしますが…。
福山雅治がみずからデザインして贈られたという祝い幕があがっていよいよ口上。
藤十郎丈のリードでお披露目されました(そうか、もう歌舞伎界の重鎮は藤十郎しかいないのか…)が、ソフトでしかし折り目のきちんとした感じのいい口上でした。秀太郎丈の口上も八代目中車のことに触れたりして良かった…、しかし、そのころ足がしびれた(?)團子くんが奇妙な姿勢を取りだして、会場の注目を浴びておりました。まあね、チビちゃんだからしょうがないですよ。そのイノセントぶりに、虫六はおもわず先週一緒だった猿まわしのおサル・夏水くんを思い出してしまいましたが、梨園の御曹司を捕まえておサルと比べるとは何事ぞ!と叱られますかね。(すみません)自分の番にきたら、「おじいさまより大きな役者になりたい」とかハッキリ口上してその聡明さで観客から感嘆を浴びておりましたが。
新猿之助は、おもわず「亀ちゃん」と声を掛けたくなるような彼らしい語り口調ではあったのですが、「猿之助」襲名は彼の中では想定外だったとのことで、それでも梅原猛先生から「外から降りかかった運命でも、自分が欲したかのように愛するのが運命愛で、その運命愛に従って生きなくちゃいかん」と言われたことを自分に受け入れて、歌舞伎のために命を捨てる覚悟であると言い切りました。ちょっと遠くの席でしたが、なんだか神々しい光景でした。この人、ひとかどの役者になるために精進しますとか、そういう次元じゃない、歌舞伎の将来を背負う覚悟をしたんだなと感じるところがあり、なんだか感動しました。
亀治郎丈は、澤瀉屋の公演からは距離を置いて、放れ猿のように個人プレーで役者をしていたところもあり、市川宗家(成田屋)に対しての澤瀉屋、将来は襲名するなら段四郎…というポジションで、斜に構えて演技を磨いていたところがあったんでないかと想像します。しかし、澤瀉屋という一家を背負っていこうという決心を固めての猿之助襲名ということなのでしょう。
しかし、妄想ついでに余計なことまで考えると、
澤瀉屋にしてみれば三代目猿之助を欠いた後の興行はけっして楽なものではなかったでしょう。(虫六は玉三郎が率いた泉鏡花の公演しか見たことありませんでした)。これまで澤瀉屋の屋台骨を支えていた右近丈も、心中は複雑かもしれないけれど、今度の連日大入り満員の状況には、「若、帰って来てくれてありがとう!」という部分もあるのではないでしょうか?
…というのも、今回、猿之助自身の奮闘もさることながら、脇を支える役者さん達もそうとう張り切っているように感じたからです。
(しかし、週刊誌が報じたこのニュースが気にならなくもない。頭のいい人たちなんだろうけれど、内輪もめみたいな確執をおこして澤瀉屋らしい表現をやれなくなっていくような状況にはしてほしくないですね。新しい猿之助が作る新しい澤瀉屋の歌舞伎をみせてほしいし。)
襲名口上の最後に、猿翁が病後の姿で登場したのも胸にくるものがありました。どこまでも型破りですね、澤瀉屋は。
昼の部のいちばんのお目当ては「四の切」こと「義経千本桜 川連法眼館の場」!
これは先日育ちすぎた狐みたいのを金比羅で見たばかりでしたので (;´д`)、比べるなと言っても無理。
新猿之助のは「源九郎狐はこうでなくっちゃ!」と思わず納得のまさに理想型の狐でした。小動物のようにかわいくて、軽やかな身のこなし、妖艶さ、華やかさ、けれんたっぷり…いやぁ、適役とはこのことよ。鼓をもらって宙づりで消えていく時の、喜んでじゃれつく様子のかわいいことかわいいこと。3階からぶわーーーっ吹き出す花吹雪!生きてて良かった〜、満足じゃ。
…これ、金比羅でやられたら間違いなくノックアウトだな、俺。
筋書きの上演記録をみましたら、昭和39年から平成9年まで「四の切」の上演は8割くらい三代目猿之助の源九郎狐でした。いま、これが「四の切」とイメージする芝居は三代目が創り出した(もしくは完成させた)ものなのかもしれないのだなと納得しました。
藤十郎丈の義経も良かったし、秀太郎丈の静がとにかくかわいいし存在感がただならない感じで参りました。
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