2012年6月28日木曜日

新橋演舞場六月大歌舞伎【夜の部】_スーパー歌舞伎は古典

猿之助襲名公演、夜の部はスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」です。
通しなので、生写真など買い足したりして(*≧m≦*) 館内うろついていたら、夜の部まで時間があるのでと、いったん外に追い出されました。

今月の記念撮影スポット。
柿色の裃に三升の紋、市川家なんですよね…。

な、わけで、夜の部は前から二列目ど真ん中あたりです。贅沢じゃ〜。


新橋演舞場
初代市川猿翁 三代目市川段四郎 50回忌追善
六月大歌舞伎
二代目市川猿翁 四代目市川猿之助 九代目市川中車  襲名披露
五代目市川團子 初舞台

平成24年6月5日〜29日

【夜の部】

スーパー歌舞伎
三代猿之助 四十八撰の内 ヤマトタケル

小碓命後にヤマトタケル/大碓命  亀治郎改め猿之助
帝           中 車
タケヒコ        右 近
ワカタケル   初舞台 團 子
兄橘姫/みやず姫    笑 也
弟橘姫         春 猿
老大臣         寿 猿
ヘタルベ        弘太郎
帝の使者        月乃助
倭姫          笑三郎
熊襲弟タケル/ヤイラム      猿 弥
尾張の国造       竹三郎
皇后/姥神       門之助
熊襲兄タケル/山神        彌十郎




(ちょっとネタばれです。これから見る人はご注意ください)

開演ベルとともに暗転。(へぇ〜、スーパー歌舞伎って暗転ではじまるのか…)と思っていると、シャーッと定式幕が開く音。なんだか耳を澄ましてしまった。
パッとスポットが点いて、亀治郎丈と中車丈が役らしい支度をして二人で正座…いきなり口上がはじまりました。はじめは予定になかった襲名口上、急遽、夜の部もやることになったという…。最初にやるんだ。
中車丈も昼の部よりもリラックスしている雰囲気。新猿之助「歌舞伎は、観客の皆さんと役者が一緒に作り上げる芸能です!テレビとも映画ともそこが違うんです。この二人が言うんだから間違いない!」と。笑いを取ってました。なんだか清々しい気分になった二人だけの口上でした。


これはあとで聞いたお話ですが、新猿之助は亀治郎時代に八千代座でも同じようなことを上演前に言ったことがあるそうです。その時はSH竹さんからダメ出しされてそのあと封印したとか。でも、この信念をずっと心の底においていたんですね、文句も言われない立場となって猿之助襲名で取り出したということなのでしょうか。
SH竹さん的にNGといえば、襲名公演でスーパー歌舞伎もNGだったらしいけど、これも一つは古典もの、もう一つはスーパー歌舞伎で押し通したとか。そりゃ、猿之助を継ぐんだもん、スーパー歌舞伎でしょ?!なんでクレームが付くのか理解に苦しみますね。手間とコストが掛かるからでしょうけど。

で、口上が終わって下りてきた祝い幕は例の福山幕!この祝い幕は、初代猿翁「黒塚」「小鍛冶」「連獅子」、3代目段四郎「連獅子」、8代目中車「火焔獅子」そして亀治郎自身の「蜘蛛絲梓弦」「鬼揃紅葉狩」の隈取りを融合したものらしい。福山がコンピュータで重ねさせたりしている作業をニュースで見ましたが、原画を織り込むか染め出すのだと勝手に想像していましたが、なんとドローイング!どおりで迫力あるはずだね。(誰が描いたのかな?ってのは余計なお世話か)

シャッター時間を十分にとって幕があがり、「ヤマトタケル」の始まりです。

先代のスーパー歌舞伎をリアルで見た事が無いので大きな事は言えませんが、当時のお客さんが熱狂した気持ちも分かる気がしました。舞台に華があり、ストレートに面白くて、分かりやすい。立ち回りの最中に見栄を切るところで、いちいちスポットがついて、わぁ拍手〜っていう間も楽しいし。めくるめく舞台です。


先代は雰囲気も派手だし、全方位光彩を放っている感じですが、新猿之助(亀治郎)はタイプがちがっていて、悲劇のヒーローであるこの役のニンに合っているように思います。(梅原先生は亀治郎には陰のイメージもあるから繊細で悲しみのあるタケルになったとおっしゃったそうですが)。誰をも虜にする魅力の持ち主でありながら、認めてもらいたい父帝(中車)だけからは愛を得られず、戦いに明け暮れ、傷ついて死んでいくタケル。断末魔の「ヤマトに帰りたい。ヤマトに帰りたい」は泣けました。


新猿之助が「すでに古典」というのだから、元々あった脚本には違いないのでしょうが、3.11以後の受け止め方としても、様々なテーマを感じ取ることができる深い作品だなと思いました。野蛮な国を正義の名のもとに退治しにいくと、そこにはもともと豊かに暮らしていた民がいて、「おまえ達ヤマトが、鉄(の暴力)とコメ(の価値観)とで侵略して来たのだ」と抵抗する。しかし、自分の理想を信じて征服してしまうヤマトタケル。滅びていく海や山にくらす先住の民族。故郷に帰りたくても帰れないタケル。せつないです。
タケルが亡くなったあと、父帝がタケルの遺児ワカタケル(團子)を日継ぎの皇子とするわけですが、
ワカタケル「お父様は帝になられましたか?」
兄橘姫「いいえ、お父様は帝ではありません。でもあなたは帝になるのですよ」
ワカタケル「お父さまぁあああ〜、お父さまぁあああ〜」(←お客さん、拍手喝采)
  (あの〜、それってもともとあった脚本ですか?)


そして大団円は、陵から鳳凰になって飛び出していくヤマトヤケルの魂…、もちろん宙乗り!豪華絢爛!

これまではヤマトタケルを演じていた右近丈が脇にまわってしっかりフォロー。とてもいいタケヒコ役でした。それから、彌十郎丈が澤瀉屋一門の中で大奮闘でしたね。

昼の部も夜の部も連日満員御礼で、特に昼の部はチケットが手に入らなかったと嘆く声を沢山聞きました。こんなに注目されているんだから、SH竹さんも焦らずに新しい歌舞伎座の開場に合わせて襲名すれば良かったじゃないか?!と思ってしまいますが、なぜ待てなかったのかな?大きな会場だったら、もっと見応え合ったでしょうね。
これも、澤瀉屋で開場公演はNGとか言って、格調高く人間国宝で…とか考えているんでしょうかね?元締めが時代に乗り遅れてちゃしょうがないよな〜。


芝居のあと、すでに「ヤマトタケル」を観劇しているNさんと待ち合わせして、新橋で飲みました。「来年の金比羅で襲名興行やらんかな〜」と妄想を膨らませ、非常に盛り上がりました。


今夜の宿は築地だったので、ほろ酔い気分で夜の工事現場の脇を通ってみると、夜間工事中でした。
いやはや〜ご苦労様です。
この館に来年の今頃どんな芝居が掛かっているんでしょうね…。



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