2012年7月2日月曜日

コクーン歌舞伎「天日坊」_マジやばい!!!

中村勘三郎の健康問題が心配です。
せっかく平成中村座をやり遂げて、調子もあがってきたか…と思われていたのに、ご本人のショックはいかほどかと。でも、病気がごく初期段階に発見されたのは、むしろ幸いだったとも思えます。芝居の神様はまた勘三郎に芝居をやれと言っているのでしょう。苦しいかもしれないけれど、克服して戻って来て欲しいです。

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で、25日の午後はシアターコクーンに「天日坊」を見に来ました。勘三郎が出演しないコクーン歌舞伎ですが、今回は代役とかでなしに、はじめから勘九郎主演の作品です。




○渋谷・コクーン歌舞伎第十三弾
「天日坊(てんにちぼう)」

平成24年6月15日(金)~7月7日(土)

◆演出 串田 和 美
◆脚本 宮藤 官九郎

法策 のちに 天日坊  中村 勘九郎
人丸お六     中村 七之助
猫間光義     市村 萬次郎
お三婆/赤星大八 片岡 亀蔵
北條時貞     坂東 巳之助
傾城高窓太夫   坂東 新悟
越前の平蔵    近藤 公園
観音院/鳴澤隼人 真那胡 敬二
久助       白井 晃
地雷太郎     中村 獅童

正直、このお芝居にそれほどの期待値を持たずに見に行きました。前回のクドカン作品「大江戸リビングデッド」も、(シネマ歌舞伎でみた形ではありますが)新味を追求しようという気合いは伝わったけれど、お芝居的に成功しているとは思えなかったし、今回は長唄など使わずにトランペットでいくというのも…どおよ?と。今どきの音楽を無理にあわせていいなぁと思った古典作品って出会ったことないし、と。でも勘太郎丈はこのところ1本ごとに巧くなっているので、まずは見に行こうかと。

ところが、気持ち良く裏切られましたね。やってくれるぜ (´;ω;`)

(…つわけで、ここからネタばれ。これから見る方ご注意を)
会場前にそのあたりをうろついていたら、渋さ知らズの不破大輔さんのそっくりさんに遭遇。短髪(でも自分で切ったような微妙な髪型…)だったので、本人かなぁ??でも、歌舞伎なんか見に来るんだろうか?と訝しがったりして…、めぐらしていましたら…
も、もしや、トランペッターは渋さ系ミュージシャン????
と、ピピンときまして、急に期待値のボルテージがあがりました!

そっくりさん、会場内でも見かけましてなんだかやっぱり本人じゃないの〜と確信にかわり、お芝居のカタログを買って出演者をチェックしたら「パーカッション:関根真理」うぉおお〜!間違いなしですね。熊谷太輔さんと交互出演とあったけど、開幕の一番太鼓ならぬ一番パーカッション、この日は真理さんでした。ラッキー!
なんだか、ワクワクが止まらないぞ、ここでこんなにテンションが上がっているのは私くらいか?

さて、お話は150年前に黙阿弥が書いた原作(長くて長くて読むのも大変な話らしい)をクドカンが焼き直したもので、いわゆる御落胤ものなんですが、ポスターにもあるように「俺は誰だあっ!」ってアイデンティティがテーマになって、分かりやすい作品になりました。

孤児の法策は修験者・観音院に拾われて弟子となっていたけれど、ふとしたきっかけから将軍頼朝の落胤になりすまし「天日坊」と名乗って鎌倉を目指す。旅の途中で盗賊地雷太郎とその妻お六と出会い、実は頼朝の子どころか××の若君であったという思いもよらぬ運命を知る。騙ったり、言い逃れたり、自分の出生を知ったりしていく中で、自分自身の正体を混濁させながら、天下を狙って大勝負をかける…。

演技力ついたなぁ、勘九郎。マジやばい!ってこのことですよ。

歌舞伎でもあるけど、シェークスピア劇のようでもあり、現代劇でもあるような…。とても青臭い感じなんだけど、素人臭くはない、そこに好感がもてました。勘三郎世代では表現しえない世界観が出てきたな…、新しい道がもう一つ見えてきたという感じでした。

七之助のお六も迫力と色艶があり、悪婆が板についている。もう、危なっかしさは感じられません。

キャスティングにも無駄がない。獅童のチームのボスみたいな盗賊の頭、コトナカレで腰の引いたやわやわな光義の萬次郎、緩慢な動作がセリフにおいつかないお三婆さんと面倒クセェ野坊主の赤星という極端なキャラを演じ分けた亀蔵…、達者な人ばかり。巳之助のチョーチャラい北条時貞も良かったね。そして、出色は、白井晃、真那胡 敬二、近藤 公園という劇団系の実力者の方々。アウェイ感あったでしょうが、全然負けてないところが凄い。とくに白井さんの存在感…なんですか、あれ。

衣装も替わってました。(それをいったらスーパー歌舞伎も凄かったけど)。
身体が変形して見えるようなアメフトのユニフォームみたいな奇妙なフォルム。高窓太夫の抜き衿もペリカンのくちばしみたい。天日坊を騙ってからの法策の衣装はウエッジウッドの柄で、地雷太郎はウイリアム・モリス柄でしたね。

また、どおよ?と思っていた音楽ですが。これがえらく良かった!エレキギターもトランペットも。法策が悪道にそれる時にはかならずトランペットの不協なメロディーが…。
ジャズは歌舞伎に合いますね。(←簡単に翻意。申し訳ない!)
ようするに、下座っていうのは楽器はともかく、芝居にあわせて生演奏・生音で入るならそんなに違和感ないのかな…と、自分を納得させました。
実は、トランペットパートの皆さん(平田直樹さんほか)は虫六が見知った方々ではなかったのですが、とても良かったので、芝居のサントラをCDで出してくれないかな?と思っております。
ぜひ、よろしくお願いします。

いろいろ考えまするに、たぶんこれは串田さんの勝利だとも思えます。
コクーン歌舞伎は役者だけが作ってきたんじゃないんだ!と改めてよく分かりました。

そんなわけで、こんな芝居を見せられて、勘三郎丈が「くそ〜っ!まだまだ負けないぞ!」って奮起してくれるといいなぁと、本気で思いました。

黒い虫六としては、たぶん今年のピークともいえる観劇の2日間。
いやぁ〜、満足した。



充電しきって新幹線のホームにたつと、東北新幹線30周年記念の東北の名産品と「Suicaペンギン」を車体にあしらったラッピング新幹線が入って来ました。ちょうど津軽三味線のところで停車。あらら〜、ペンギンが正座してますよ ( ^ω^ )

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