2013年4月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1509ページ
ナイス数:39ナイス
空鉄 ―鉄道鳥瞰物語―の感想
鳥の目にならないと見えてこない鉄道の世界。現実の線路レイアウトって精緻で整然として、すごく綺麗です。これに四季の彩りや駅(車両基地)周辺の町の生成などが加わって、いろんな風景があるものなんですね。尾久車両センターの規模に圧倒され、鳥飼車両基地のズラーっと並んだ700系新幹線の白い列に仰天し、肥薩線のスイッチバック構造に旅心をそそられました。それから、小湊鐵道の菜の花畑をいく赤いディーゼルカーも絵になりますね。
読了日:4月29日 著者:吉永 陽一
双頭の船の感想
大震災後(原発事故後というより)の世界を真っ向から描いた小説。獣臭いという嗅覚から作品が始まる。ざらざらとして飲み込みにくい話ではあるけれど、そこが実感として伝わる重い部分だ。双頭のフェリー「しまなみ8」が移動食堂車と大量の放置自転車を積んで被災地へ。主人公の知洋は肝心なところでフリーズしてしまう優柔不断男。船に集まる人や動物の魂、津波から命を拾った生々しい記憶、家族も家も仕事を失った人たち、船は仮設を作って彼らを受け入れ巨大な方舟に。自立国家として漂白するか、土地に帰るのか。野生児ベアマンの存在が強烈。
読了日:4月29日 著者:池澤 夏樹
弾左衛門とその時代 (河出文庫)の感想
穢多と非人の違いもよく知らなかった。非人は生業を認められず物乞いをして生きざるを得ない身分。穢多は殺生と皮革の加工製造を生業とする身分で、公権力による処刑の手伝いもした。仏教思想の普及で不浄の仕事として忌み嫌われたが、皮製品は武士にとって必要不可欠なもので、身分的には賤民階級でも、武士に対峙する関係をもっていたらしい。それら賤民をとりまとめる立場にあったのが弾左衛門で、乞胸などの芸人や遊郭も支配する。面白かったのは付録で歌舞伎役者が造反して訴えを起こす話。「助六」の意休のモデルが弾左衛門とは知らなかった。
読了日:4月21日 著者:塩見 鮮一郎
十八代目 中村勘三郎の感想
いま思えば去年の平成中村座ロングラン公演の頃の勘三郎丈は本当に命がけで芝居をしていたんだなと思う。役を演じている表情の奥に篠山紀信は勘三郎本人の必死の存在を映し出している。「永久保存版」と銘打たれたこの写真集は「家庭画報」の掲載記事を再編集・加筆してまとめられたもの。未発表の舞台写真も入っているそう。それにしても自分もその場にいて共振した舞台の、あの時の感触がひたひたと思い出され、もうあんな舞台は見られないのだと思うとその喪失感が一層強く感じられるばかり。「愛陀姫」稽古中の中村座全員の笑顔がせつない。
読了日:4月8日 著者:篠山紀信
十八代 勘三郎の感想
ちょっとかすれた十八代目の声が甦る。人なつっこくて、負けず嫌い、いつも人の輪の中心で芝居の話ばっかりしている魅力たっぷりな素顔の中村勘三郎丈。…まだ、生きているみたいだ。平成15年6月から平成17年2月まで「スポーツニッポン新聞」の連載をまとめたもの。ちょうど、勘三郎襲名興行が始まる直前の、輝きまくりのあの頃のことが話題となっていて、いまでは、ひとつひとつの言葉が宝石のように感じられる。聞き手の存在を感じさせない、いつどこで語ったかだけが記されたインタビュー集となっていて、編集側の弔意が伝わってくる。
読了日:4月7日 著者:中村 勘三郎
ぼおるぺん古事記 三: 海の巻の感想
ボールペンなのに、なんて豊かな描線。メーカー違いでインクの濃さや質感が違うのがなんだか発見でした。古事記の神様たちがみなみなチャーミング。そしてサイレントなのに、日照命の「返せっちゅうの!」の表情のたっぷりなこと(笑)。それから猿女君が海鼠の口を割くところ…怖っ!この辺の物語は神楽舞などでもお馴染みのところですが、現代語訳本では分からなかったのですが、お神楽って古事記をまんま歌っているんですね。でも口伝なので、ちょっとなまってたのね。原文そのままの文章は、本当に歌みたいだと思いました。石長比売かわいい。
読了日:4月4日 著者:こうの 史代
月は何でも知っているかも (BEAM COMIX)の感想
ははは、やっぱり好きだわ、この絵。5年前の短編集。化身もの(さかな・化け猫・スロットマシーン)、バイク、広角のシネマっぽい構図、まったり感、『デボネア・ドライブ』に繋がるエッセンスが満載でした。
読了日:4月2日 著者:朝倉 世界一
鉄道少女漫画の感想
スピンオフの「君曜日」を読んだ時は、本当に鉄道テーマは描きたくてかいているのかな?と思いましたが、やっぱり勉強しているんだなと思いました。「鉄道」と「少女漫画」って組み合わせは意外性ありますが、作品は独自で面白かった。それにしても読者はどのあたりなのだろう。やっぱり明日美子先生のファンが中心なんでしょうね。
読了日:4月1日 著者:中村 明日美子
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