今年も野村万作・萬斎さんの狂言地方公演がやってきました。
○笑いの芸術「野村万作・萬斎 狂言公演」
日時:1月30日(木) 午後7時開演
会場:東京エレクトロンホール宮城
【番組】
解説: 野村 萬斎
小舞「八島 後」 中村修一 地唄 内藤連・深田博治・飯田豪
狂言「墨塗」 大名:石田幸夫
太郎冠者:月崎晴夫
女:高野和憲
後見:内藤連
狂言「止動方角」 太郎冠者:野村萬斎
主:深田博治
伯父:野村万作
馬:飯田豪
後見:中村修一
いつも感心するのですが、萬斎さんは解説がうまい!たっぷり30分。これから見せていただく演目を動作を交え、見どころを踏まえて分かりやすく、面白く、淀みなく教えてくれます。これがひとつの演目のようにさえ思える。1時間でも聞いていたいほどなのでした。
今回は若手による小舞「八島 後」がはじめにあり、狂言師のトレーニングの一端を垣間見ました。きびきび揃っていて迫力がありました。
「墨塗」は、「平中物語」などに見える古来の説話を素材にした狂言だそうで、訴訟のために遠国から都入りしていた大名が、コトが解決したので帰郷することになり、在京の間に馴染みになった女性に別れ話を切り出しにいく話。
自分から言いだしにくくて、同伴させた太郎冠者に「お前から言え」とむちゃぶりするご主人様がお茶目で可愛かった。で、女は女でしたたかでありまして、鬢水入れの水で目をひたひたさせて泣いたふり…。それを見つけた太郎冠者が主人に耳うちするんだけど、「バーロー、あいつは俺に惚れてるんだぞ、そんなわけあるかー」と信じてくれない。そこで機転を利かせて…。
萬斎さんが解説で「狂言の女形はがっかりすると思います」と言って会場を沸かしていましたが、たしかに“記号・女”って感じなのに、なんだか愛嬌が感じられ、親近感が湧きました。逞しや、中世の女。
狂言って紙芝居のポンチ漫画みたいだな。
つづく「止動方角」は干支にちなんで馬が出てくるお話。見栄っ張りな主人に命じられて、おじさんのところにお茶くらべに使うお茶を借りにやらされることになるのですが、主人は「お茶は極上のやつ、ついでに太刀と馬も借りてこい」と、これまたむちゃぶり。
言いにくい交渉ごとを何とか上々に済ませて、注文の品を借りることができたものの、この馬にクセがあり、後ろで咳をすると暴れだすという。馬を鎮めるためには呪文があって、それが「止動方角」。
モノを与え呪文を教える万作さん演じる伯父さんは、まるで魔法使いのようです。去年は風邪で休演されたのですごく心配しましたが、今年はお元気な姿が拝見できて眼福でした。
せっかく言いつけを果たしてきたのに、わがまま主人は太郎冠者の労をねぎらうどころか「遅い!」と叱りつけ、なんだかんだと文句たらたら。堪忍袋の緒を切らした太郎冠者は馬に乗った主人の後ろで咳払い…。
この“記号・馬”がヘン!なんとも言葉では表現できませんが…。しかし、たしかに正面からみると馬に乗ってる人に見えました。
このユルさ、大らかさはクセになりますね。来年も楽しみです。
それにしても万作さんのシテの演目をたっぷりみたいなー。
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