2014年12月14日日曜日

宮城県民会館開館50周年記念「笑いの芸術 野村万作・萬斎 狂言公演」

いまやネーミングライツで「東京エレクトロンホール宮城」と名を変えましたが、元は「宮城県民会館」と言った県立ホールが50周年だそうで、その記念の冠がついた「狂言公演」がありました。


宮城県民会館開館50周年記念
「笑いの芸術 野村万作・萬斎 狂言公演」

<解説>  野村萬斎

狂言「隠 狸」
    太郎冠者 野村万作
    主    石田幸雄

狂言「首 引」
    親鬼 野村萬斎
    鎮西八郎為朝 深田博治
    姫鬼 中村修一
    眷属 岡 聡史
    眷属 飯田 豪
    眷属 高野和憲
    眷属 破石晋照

萬斎さんの解説は、いつも思いますが、上手い!
初心者でも無理なく面白く筋を理解させられるし、「ここをきっちり考えてしまうと狂言を楽しめませんから」という、ある種の突き放し方と誘い方が絶妙で、いつの間にか感性を狂言モードにシフトチェンジさせられつつ、しっかり予習をさせられているのでした。
全国で、海外公演でも、解説係らしく、なんていうか手練れだね。「我々本当は東京から来ているわけですが、S市でもシンガポールに行っても「この辺りの者でござる」っていえば、そういうことですから」…(笑)。歌舞伎系でも、文楽でも、能・狂言の他流派でも、初心者向けの公演や地方公演では誰かが解説やMCをやっていると思われますが、たぶん萬斎さんの右に出る物者はいないだろーなーと、思いながらいつも聞いてます。

1本目は「隠狸」で、これは万作の会のトップ2の共演ということで、万作さんの太郎冠者と石田幸雄さんの主。

主人に隠れてサイドビジネスに狸を捕っては市場で売って小遣い稼ぎをしている太郎冠者に、「お前狸捕りの名人だってな、狸汁するからってお客さんを呼んだので狸を出せ」とご主人さま。「狸なんて捕ったことなどありません」とシラを切ってしまったので、そこからドタバタな展開に…。
 ドリフだね。
昭和育ちの感性からすると、この主と太郎冠者は長さんと加藤茶んのドタバタに重なりました。最後は回り舞台が出て来そうだったけど、橋掛かりを帰ってきました。
こういう、根のカラカラした愉快さは、最近のお笑いにはあまり感じられません(もっともあまり見てもいませんが)ドリフのコントは狂言だったのか?
そして、太郎冠者が腰に隠した狸(の縫いぐるみ)がかわゆい(* ̄ー ̄*) 

万作さんの大らかな芸は本当に胸の底まで明るくしてくれます。市場の真ん中で、主人の策略を感知しながらも、お酒をすすめられて、つい旨そうに吞んでしまうところは、先日いまいち物足りなかった若高麗屋の弁慶のあのシーンのときに、自分がイメージしていた芸はこれだった!と思いました。ふっくら酒の香りを楽しみつつ、くいーっと吞んで、軽く舌を鳴らして美味しく味わった感触を伝え、つい嬉しそうな表情が出る。それがさらさらと自然に行われて押しつけがましさがありません。

この演目は狂言小舞(「兎」「花の袖」「鵜飼」)が挿入されているのも見どころとのことです。

「首引」は、萬斎さんの親鬼、深田博治さんの為朝、中村修一さんの姫鬼、他。為朝以外はみんな鬼なので面をつけての出演です。

可愛い娘の食い初めに、筋骨隆々の為朝に白羽の矢を立てた親バカの鬼。「姫鬼と勝負して負けたら食われてやろう」と提案をして急場を逃れる為朝。鬼とはいえ花も恥じらうお姫様…。腕押し(舞台上で腕相撲…地味!)、すね押し(なんだかもっと地味…可笑しい)、と挑戦するけど豪傑無双の為朝にはかなわない。イヤイヤしながら、いちいちぴょんぴょん橋懸かりの向こうまで隠れてしまう(←かわいい)。なかなか勝負が付けられず、気が気でない親鬼は眷属を呼びだして応援させるけれど…。
人間よりも人臭い鬼の親子の姿に、思わず(為朝さん、負けて食われてやれよー)と心で呟いてしました(笑)


【萬斎さんのテレビ出演情報】

NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」果てなき芸道、真の花を―狂言師・野村萬斎
・2014年12月15日(月)22:00~22:48 NHK総合テレビ
  ※再放送 12月19日(金)午前0:40~1:28(18日深夜)

フジテレビ開局55周年特別企画 ドラマ「オリエント急行殺人事件」
・2015年1月11日(日)・12日(月祝)21:00~ フジテレビ系列 2夜連続放送


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