2015年5月1日金曜日

平成中村座2015_桜席でお江戸気分【昼の部】

お江戸浅草に櫓が揚がりました!
歌舞伎の神様ありがとうございます。
平成中村座が浅草に帰ってきたのに便乗して、黒い虫六も戻って参りました(合掌)

今回は、虫六、および、虫六子のご褒美観劇ってことで、その前に浅草寺さんと浅草神社の神様にも戦勝報告を…。
「あー、もう願い事がない状態でプレッシャーなしのお参りはいいなー。おみくじ引いちゃおうかなー」と浅草寺でおみくじを買った虫六子、大当たりの『凶』を引きまして…。
「うえ〜っ、いいこと一つも書いてない、引かなきゃ良かった…」と出鼻をくじかれておりました。ほほほ。

快晴の浅草であります。浅草神社をでると、平成中村座の裏側にでます。バックヤードに大道具の仕込みが出ていて、なんだか露天感あるなー。

開場と同時に弁当を確保。売り切れちゃうらしいのね。お祭りのような賑わいでございます。中村屋の紫の櫓が懐かしいというか、戻って来てくれたことに感謝したい気持ちです。

本日、虫六母娘が向かうお席は「桜席」。
江戸時代の芝居小屋の浮世絵などをみると、ぎゅうぎゅう詰めの観客が舞台の上にまで乗って得意そうな顔で歌舞伎見物しています。
この舞台下手に乗っかったお席は公認の席で、1階を羅漢(らかん)台、2階を吉野と呼んだそうです。お芝居を後ろから見ることになるので安い席だったらしいの。たまらんね。
大芝居繁栄之図 歌川豊国(三代)画(部分)
で、平成中村座も、十八代の思い入れでこの吉野席が再現されて下手・上手に「桜席」としてあるのです。しかも10,000円。(ちなみに、平土間の松席・椅子の竹席/14,500円、2階の梅席12,000円、お大尽席/35,000円)
なんだか面白そうでしょう、桜席。しかし、下手上手あわせて30席しかありませんので競争率も高いのであきらめてもいたのですが、なんと!このたびそこで観劇するチャンスがありました。

桜席は幕内なので、写真撮影が一切禁止。あれもこれもレポートしたいところですが、写真なしでーす。これは桜席のエリアに入る寸前に定式幕の縁から取った写真でございます。昨日おそわったパノラマ撮影をさっそく駆使してみました。
客席2階正面の立派な屏風がおいてあるところがお大尽席でございます。お江戸風に客席の前方は平土間ですが、枡が切ってあるわけじゃなくて1席づつ座椅子がおいてあります。
花道に提灯…今年は金丸座には行けませんでしたが、芝居小屋入るだけでワクワク。

大提灯が見えなかったので、2階席の後ろの角からも1枚撮ってみました。梅席も面白そうですね。

○平成中村座 陽春大歌舞伎
    十八世中村勘三郎を偲んで
平成27年4月1日(水)~5月3日(日・祝) *虫六観劇日は26日

【昼の部】
一、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき) 角力場

  濡髪長五郎  坂東 彌十郎
  藤屋吾妻   坂東 新 悟
  山崎屋与五郎/放駒長吉  中村 獅 童

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)

  武蔵坊弁慶  中村 橋之助
  源義経    中村 七之助
  亀井六郎   中村 国 生
  片岡八郎   中村 宗 生
  駿河次郎   中村 鶴 松
  常陸坊海尊  片岡 亀 蔵
  富樫左衛門  中村 勘九郎

三、新皿屋舗月雨暈  魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)

  魚屋宗五郎  中村 勘九郎
  女房おはま  中村 七之助
  召使おなぎ  坂東 新 悟(4月1日~16日)
         中村 児太郎(4月18日~5月3日)
  茶屋娘おしげ 中村 児太郎(4月1日~16日)
         坂東 新 悟(4月18日~5月3日)
  鳶吉五郎   中村 国 生
  太兵衛    片岡 亀 蔵
  磯部主計之助 中村 獅 童
  浦戸十左衛門 坂東 彌十郎

芝居小屋というのは役者の芝居を見るために正面向きに作られているので、それを後ろからみるということは、役者を含む芝居を作っている人たち全体の仕事をみることになります。
「舞台裏」…虫六も全く知らないわけじゃありませんが、歌舞伎の幕内は面白いことだらけでありました。それを金を取って(笑)見せようと思った勘三郎という人は、やっぱり凄い人だったなー。

というわけで、このスペシャルな体験をどこまで話して許されるのか迷いますが、ちょっいとだけレポート。

舞台の幕が開く前、幕内の役者さんたちはどんな表情をしているでしょう。
これが意外にリラックス。
「角力場」のはじめは1幕目はもう舞台組んでありますしね。脇の役者さんたちがこそこそ耳打ちしたり、肩もんだりして…。それを斜め上からのぞくような塩梅で楽しんでいると、内側から2人がかりで定式幕が引かれて、スイッチオン。例の相撲観戦の場面に突入です。
勝負が決まって相撲小屋からお客が出てくるところなどは、おんなじ役者さんが羽織を着たり脱いだして何回も出てきて、数を増幅させて見せる工夫に感心。平場で見てるときでも2回までは気がついていたんですが…(笑)

で、もって彌十郎さんの濡髪長五郎は上からみてもデカかった!
ちょうど客席にお相撲さんが来ていて、目が合った獅童さん(放駒長吉です)がアドリブで吹き出して、そういうのも小屋全体の空気を暖めている感じが伝わって面白かったな。
幕が降りたら、獅童さんが桜席に向かって手を振ってくれました。他の役者さんたちも会釈して舞台をはなれていきました。

桜席は舞台照明と近距離なので、とにかく暑い。
役者さんってこんなに暑いところでお芝居しているんですね。幕が降りて、舞台転換のためバックヤードが開いたら、外の空気が入ってきたら気持ちいいのなんの。…とはいえ、大道具さんの仕事の早さに目が奪われて、休憩どころじゃないっす。
おいら達がトイレなんかにいったり、アイス最中食ったりしているあいだに、この人たちはこんなにプロい早業で舞台装置を作っていたのだー。目の前に(というか目の高さに)、舞台装置が組み上がっていくの。けっこうな数のスタッフさん(女性もいましたぞ!)がきびきび動いて無駄が無い。興奮しますでしょ、これ。

で、次は「勧進帳」ですが。これは、お芝居も完成度高いけど、演奏曲としても完成度が高い演目…。誰がでるのかー!?というのが普段は気になるところ(この日は六枚六挺五人囃子)ですが、今日は違います。

だってさ。地方さんたち、舞台が始まる前幕内で何をしているか…答えは…着替えです。

あら、恥ずかし。
といっても裸で出てくるわけじゃございません。
地方さんもお囃子も黒御簾で演奏する時は着流しですが、舞台で演奏する時は裃に袴を着用しますね。お囃子の皆さんはつま先までぐるっと隠れる長袴を履くわけですが、それを舞台の上で着ているのです。たしかにこういうの着て楽屋から裾を引きずって歩いてくるのは大変ですし、舞台の上が着替えるのにいちばん適当な広さがあるのかもね。お弟子さんやお互いさまに手を貸し合って支度して、ここでもなんだかリラックスムード。びっくりしたのは、長唄の皆さんの袴は…○○○○だったこと!知らんかったー!知らないことが多すぎるー!
着替えを終えた地方さんがひな壇に決まって、楽器の支度も整えてスタンバイOKとなります。

橋之助さんの弁慶、大熱演でした。(←演技の感想これだけかいっ!)
…だって、男前の勘九郎の富樫は頭のてっぺんしか拝めなかったんだよぅ。
最後に幕外で弁慶が花道で六方を踏みますが、勘九郎さんのご意向で、私たちも定式幕の間からのぞいてみていいことになりました。座長サイコー!

松葉目の舞台から世話物に変わって「魚屋宗五郎」。
「播州皿屋敷」の外伝で、家宝の皿を割った咎で井戸に投げ込まれて殺されたお菊さん(幽霊になって有名な)のお兄さんが主人公です。本作ではお菊さんの名前が、こちらではお蔦さんになっていますがネ。
このお兄さんが実は酒乱で、根はまじめなもんだから、酒でいろいろ失敗するのを反省して禁酒していたんですが、妹が不条理な死に方をしたことで禁酒の誓いを破って酒を飲んでしまい、その酩酊の過程を見せるのが芝居のみどころ。勧進帳も弁慶が酒を美味そうに飲んで酔加減で延年の舞を踊るので、ちょっと似てますかね。
宗五郎といえば、やっぱり勘三郎…、そして三津五郎。勘九郎さんの思い入れも強いのだろうと伝わるものがありますね。世話女房のおはまが七之助さんで、これがちょっと疲れた色気があってよろし。
本当は小山三さんが出るはずの舞台でしたが…、きっと小屋の上の方で見ていることでしょう。
それから、今回名題昇進のいてうさんがいい味だしてました!以前から巧いなーとは思っていましたが、小奴三吉、粋な軽さといじられ上手な三枚目を上手に演じていて印象に残りました。これから中村座の脇を支える大事な柱になっていくでしょうね。

そういえば、この舞台の幕間では勘九郎さんが茶目っ気たっぷりにサービスしてくれました。それを女房のようにたしなめるセブン。(どんなサービスだったかは内緒でーす.+:。(/ー\*)゜.+:。)
幕がしまっている間は、ちょっと素の表情をのぞかせてくれますが、それがいつの間にか役が入って(あ、お芝居の顔になってる)と感じたタイミングで幕があきます。うわぁ、役者だなーと感動しつつ、背中から演技を見る桜席。

もうね、虫六子もはまってしまいまして、次見るときも桜席にしようと…。
(気持ちは分かるんですけど…だから、取れないんだって、ここは。なかなかね。)

さて、続きは夜の部…。今度はお芝居満喫するぞ〜。

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