給料は安いが夏休みだけはある虫六の職場…。例年は途切れ途切れの飛び石休暇でしたが、今年はまとめて取れるというので、ちょっと遠出でもしてみようかな?と、大阪にやってきました。ここは大阪松竹座であります。
突然ですが、ここで一首。
秋芝居 60ヘルツの鉄路駆り
カーン九郎狐と 跳ね躍る
ついに追っかけか?虫六! c(>ω<)ゞ
○大阪松竹座
中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露 九月大歌舞伎
平成24年9月1日(土)~25日(火) *虫六観劇日は7日
【昼の部】
一、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 三笠山御殿
杉酒屋娘お三輪 七之助
入鹿妹橘姫 壱太郎
烏帽子折求女実は藤原淡海 新 悟
豆腐買おむら 翫 雀
漁師鱶七実は金輪五郎今国 橋之助
二、俄獅子(にわかじし)
芸者お扇 扇 雀
鳶頭駒吉 橋之助
団子売(だんごうり) 劇中にて襲名口上申し上げ候
お福 勘太郎改め勘九郎
杵造 七之助
三、瞼の母(まぶたのはは)
番場の忠太郎 勘太郎改め勘九郎
お登世 七之助
半次郎母おむら 竹三郎
金町の半次郎 亀 鶴
半次郎妹おぬい 壱太郎
板前善三郎 亀 蔵
鳥羽田要助 市 蔵
金五郎 彌十郎
水熊のおはま 玉三郎
勘三郎丈が病気療養のため、出演できず、玉三郎丈が親代わりになっての奮闘公演です。
この度の昼の部、主役の勘九郎には申し訳ないけれども、出色の演目は「妹背山婦女庭訓」。七之助のお三輪でした。
「三笠山御殿」のみですので、いきなり苧環もって現れる場面から。
橘姫が壱太郎、求女が普段は女形の新悟で、若いふたりは物足りなさはありますが、初々しく一生懸命やっている感じでした。壱太郎は綺麗なので特にゆるす!で、七之助のお三輪が花道登場となるんですけど、これが「ええっ!七之助君いつの間に大きな役者になったの?」という、格差を感じさせるオーラ。ち、違っているんですけど。
そもそも「妹背山…」って変な話ですよね、つまりリアリティに欠けるなといつも思う。しかし、今回のお芝居のお三輪には感情的にすっと入っていけました。
大化の改新という政治の大きなうねりの中でお三輪の一途な思いなんか問題じゃないわけですが、そういう政局に人生を翻弄されるちっぽけな女性の強い情念といいますか。
豆腐買いのおむらとのやりとりや御殿女中にいじめられる場面は、世間知らずで可愛くて…という感じでいじられていたのが、橘姫と求女がいよいよ婚礼すると知った場面の感情が嫉妬に変わる花道の演技がなんか素晴らしくて、鳥肌ものでした。
一列目だったので、ちょっと振り返るような感じで花道をみたんですけど、やや逆光気味のシルエットに、汗なのか涙なのか(!)ぽとぽと落ちるのがきらっと見えて、ここで肚のある演技をするのです。迫真の、リアルを感じる演技です。
お三輪の悔しさとか悲しさとか憐れとかぞぞ~っと伝わってきて、会場がその気迫に飲まれていました。
会場は当然大喝采です。
これまで何度か「妹背山…」は見ていますが、こんな素晴らしいお三輪を見た事がないと思いました。
誰か、中村七之助に芸術選奨の新人賞あげてくれ。
それに比べて、おや?だったのが玉三郎丈です。昼の部は「瞼の母」のおはまですが…。
ちょっと、違和感のある間。セリフ…大丈夫?演技?微妙でした。めずらしく亀蔵がセリフ忘れてプロンプターの声がしてましたが、それもこの時のやりとり。きっと調子を崩されて、ど忘れしたんじゃないかな?こんなこと、ありえないなぁ、今までの玉丈の舞台では。調子悪いのかな?と心配になりました。
おはま、年より若く見える年増という役どころなんですが、少し老け作りしすぎているという気がしました。本人の考えもありましょうが、玉三郎丈の老け役…正直すこし違和感があります。
竹三郎のおむらが色っぽくて良いですね。
勘九郎の忠太郎は、もちろん粋でカッコ良かったです。それにしても、(知っていましたが)そっくり勘三郎に。特に声が…。
でも、コクーンの「天日坊」を見たあとだけに、長谷川伸の「瞼の母」はちと物足りない気がしました。…が!これが大阪では受けるらしい。(とみました)
少し小さめの会場なので、大向こうからも威勢良く掛け声がかかり、なんだかアットホームな雰囲気なのです。まわりの人たちとかすすり泣いていたりして、(ええ、おいらセリフつっかえた玉様になんか泣けないぞ〜)なんですが、この会場の雰囲気には飲まれました。
舞踊二題も安心して見られる演目ですが、この日は長唄の地唄さんが筋書き(大阪では「番付」と呼んでいるらしい)と違っていて、ちょっとがっくり。大阪なので杵屋東成師匠の唄が聞けるかな?と期待したのですが、これははじめから予定になかったみたい。残念でした。
「団子売り」のはじめに中村屋兄弟による劇中口上がありました。
勘九郎の口上もさることながら、七之助が父の不在をお詫びしながら、その分も自分たちががんばりますという意志を唱えて、なんだか逞しいのでした。
確かに、襲名中に後ろ盾の父が倒れるというのは心細いでしょうが、これも乗り越えなければならない試練なんでしょうね。
そんなわけで、【夜の部】は待ちに待った「雨乞狐」です!
0 件のコメント:
コメントを投稿