2014年3月21日金曜日

市川海老蔵 古典への誘い

かねてよりガスパママさんと「行くべし!」ってことで楽しみにしていた「市川海老蔵 古典への誘い」のS市公演に、仕事帰りに行って参りました。

場内撮影禁止で、入り口でカメラ持ってないか?ってチェックされる厳重さで、(お客さんのスマホ・携帯取り上げるのかよ?)と思わんでもなかったけど、出せば叱られそうな気配なので、ホールの外で証拠撮影。

○市川海老蔵 古典への誘い
 1.オープニングトーク
 2.半能「石橋」
 3.舞踊「連獅子」

オープニングトークの前に、池坊次期家元・池坊由紀さんによる東日本大震災への鎮魂と復興を願っての献華(けんげ)がありました。シーンと静まる会場で、花が生けられていくのを鑑賞しました。
幕が降りるとスーツ姿の海老蔵丈が客席前方に登場して、池坊由紀さんに日本の芸能と生け花の関係などいろいろ質問していました。池坊は日本でもっとも歴史のある華道家元で、創始は遣隋使の小野妹子!(飛鳥時代ですぞ)と伝えられており、由紀さんで46代目だそうです。天皇並みですな。本日の献華も池坊の室町時代の花伝書に伝わる型の立華であるとか。

いきなり生け花など登場して面食らいましたが、「日本の古典」というテーマに対する海老蔵丈のこだわりがビンビン伝わってきました。

ひきつづき、「連獅子」の仔獅子役の市川福太郎君(成田屋さんの部屋子さんらしいです)を登場させて、さらにやりとり。本当は今日小学校の卒業式だったという福太郎君。海老蔵丈にいじられながら、「獅子は千尋の谷に我が仔を突き落として這い上がってきた子どもだけを育てると言われていて、落とされてから一生懸命登ろうとする姿を見て欲しい」、「毛振りが難しいけど一生懸命やります」との素直で謙虚な受け答えに場内の好感度アップ。化粧(かお)を作るのに時間が掛かるからと、楽屋に帰っていきました。みんなやさしい気持ちになって、後半の踊りを見る準備オッケーです。

お次は能楽の梅若紀彰さんが登場して、能の「石橋」の解説。天竺の清涼山に文殊菩薩が住むと言われていて、その霊地に至る途中に幅の狭い苔むした石橋が掛かっていて、そこを渡ろうとすると眷属の霊獣獅子が現れるというストーリーや、能のこの演題がのちの歌舞伎舞踊「連獅子」に繋がること、能や狂言の演目が歌舞伎に改訂されて上演される例は多く、能の舞台背景も踏襲するので総称して「松羽目もの」と呼ばれています…なんて話だったかな。ただ歌舞伎の「連獅子」の成立は意外に新しく、幕末の河竹黙阿弥の作詞により初演だったそうです。

そして、まずは能の「石橋」。
さきほど松羽目ものについての説明を繰り返していたのだから、舞台装置も松羽目にしたら?と思いましたが、どういう意図があったか判明できませんでしたが、背景は竹(道具)と半月(投影)でした。ちょっと幻想的な雰囲気での半能(後ジテのみ)の演舞で、なによりカッコ良かったのはお囃子でした。亀井忠雄さんの大鼓と掛け声が聴けただけで来た甲斐があったと思いました。

舞踊の「連獅子」は、
 狂言師右近 のちに親獅子の精  市川海老蔵
 狂言師左近 のちに仔獅子の精  市川福太郎
の出演で、こちらはたっぷり。
場内の九割方が女性、しかも、普段の歌舞伎公演に比べると年齢層もやや低め。会場の仙台サンプラザホールのキャパシティ(2054席)完売だそうですよ。
さすが、歌舞伎界きってのスター役者・海老様ですね。

舞台背景は先ほどまで投影されていたでっかい半月のリアルチックな映像が消えて、道具っぽい三日月が吊り下げられていました。
海老様の艶っぽい右近に、幼さを残した伸びやかな左近。なかなか魅力的な演目ですね。
2人が引っ込むと、遍念(右之助)・蓮念(市蔵)の滑稽場面、地方の聞かせどころを聞いて、いよいよ後ジテ。先ほど解説された親仔の毛振り、舞台がなにげに狭いので、橋がかりを花道代わりに使っていましたが、後ろ向きにスタスタ戻るところや、ぶんぶん振り回しながら移動したりする動きの見せ場が十分に演出できず、勿体ないと感じるところもありましたが、海老蔵のにらみなど顔の表情はよく分かって面白くもありました。また、福太郎君も頑張って好演しておりました。あと10年もしないうちに、勧玄くんを相手に「連獅子」を踊る日もやってくるでしょう。

この日の地方さんは、お三味線が勝松・勝正雄・勝十郎・勝国悠、唄が杵屋正一郎・日吉小八郎・住吉小碌・芳村翔太郎、囃子方が田中傳次郎ほか。勝十郎さん、歌舞伎座にいないと思ったらこのツアーに参加していたんですかー。でも、あの日は勝松さんは出ていらっしゃったので、今日はどなたが??などといろいろ思いを巡らしつつ…。

それにしても、おおかた面白い公演だったのですが、会場の音響はいただけませんでした。お三味線の音がべこべこと残響しているし、こもった感じで澄んだお三味線の音が聞き取りにくく、せっかく大曲「連獅子」を聴ける貴重な機会だったのになんだか残念でした。


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