年に一度の「文楽」地方公演が今年もS市にやってきました。
(…9月、横浜帰りに新橋演舞場に仁左衛門丈を見に行って以来、一月半ぶりの舞台(つか、伝統芸術)!我慢したぞー、俺!)
【昼の部】
「仮名手本忠臣蔵」
五段目 二つ玉の段
六段目 身売りの段
早野勘平腹切の段
「釣女」
【夜の部】
「曽根崎心中」
生玉社前の段
天満屋の段
天神森の段
「勘平腹切」は、豊竹呂勢太夫さん(義太夫)と鶴澤清治さん(三味線・人間国宝です)のコンビで、これが三浦しおんの『仏果を得ず』の健と兎一兄さんを彷彿させるなぁと思っていたのですが、パンフレットでも解説でこの小説が取り上げられていて、文楽協会が狙って出してきたのだろうと思っちゃいました。かぶりますね ( ^ω^ )
でも、呂勢太夫さん熱演で大変良かったし、何より清治さんの六段目が聞けて行った甲斐がありました。浄瑠璃の三味線は、腹にしみるような力強い音色が印象的なのですが、清治さんの三味線はそれに華やかさが加わるところが素晴らしい。緊張したところで、「ハッ、べべんっ!」と入る糸もただ強いだけじゃない、絶妙のタイミングと強さ。
もっとたっぷり聞きたかったです( ´;ω;`)
真っ赤になって語る義太夫に、顔色一つ変えず演奏にだけ情感を盛る三味線、三人遣いの美しい人形…不思議な芸能ですよね、文楽って。
「仮名手本忠臣蔵」は歌舞伎でも知られすぎているくらいの名作ですが、原作は人形浄瑠璃で、寛延元年(1748)、竹本座が初演です。同じようでいて、やっぱり違うところがいろいろありました。
歌舞伎ではニヒルな悪党として登場する斧定九郎も山賊っぽくてなんだか雰囲気が違っていたし、勘平の断末魔の申し開きのセリフも微妙に違ってました。(頬に血糊をつけて、「色に耽ったばっかりに…」とか言わないですね、やっぱり ( ̄◆ ̄;) )
当然といえば当然ですけども、やっぱり役者の身体を通して表現されつつ、歌舞伎は歌舞伎なりの変容をしているんだなと実感しました。
しかし、夜の部の「曽根崎心中」の天満屋の段、平野屋徳兵衛(人形遣いは吉田蓑助←この方も人間国宝)が縁の下で遊女お初(桐竹勘十郎)の足首を掴んですりすりする、歌舞伎でも有名な場面では、ちらりと見える人形の足が華奢で色っぽく、それを大事そうに顎の下に当てる人形の仕草が哀しかった。歌舞伎以上に心に食い込みました。鶴澤清友さんの三味線が上手い!
それにしても、どうしても死ななければならなかったのですかね?あのお二人は…。とか、近松にはてなマーク付けてどおするよ?ですが、あの時代に敏腕弁護士でもいれば、あの詐欺野郎(油屋九平次)をギャフンと言わすこともできたであろうに。切ない、後味の良くない筋書ですね。天神森の段のツレ三味線のベンベンベンベン…という重低和音(?)がいつまでも耳に残りました。
昼夜見たのに、あっという間でしたな(爆)
0 件のコメント:
コメントを投稿