それはそれとし。今年の夜の部は、「女殺油地獄」の通しです。近松もので、仁左衛門丈の十八番(歌舞伎座閉場で一世一代としましたが)の名作です。楽しみだな〜〜〜〜。
そして!○コトラ勧進社中各位のご尽力により、今年のお席、なんと定式幕も間近なこんな前の方でしたよ。頭上の葡萄棚から下がった場吊り提灯も、もう気分を盛り上げてくれます。
おんやー、われらの桝から直ぐそこに空井戸が見えます。
あ、花道にシートが敷かれているぞ。油まみれで逃げる場面に備えているんだな…。
2階席も満席だ…。(すまぬ、虫六子。いま石段の何段目まで行ったかのう…)
油かぶり対策でビニールシートが配られるのも、前方席のお楽しみ。
さー、始まるぞ。ワクワク。今日は千穐楽前日の夜の部です。
○第30回記念 四国こんぴら歌舞伎大芝居
「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」
徳庵堤茶店の場
河内屋内の場
豊嶋屋油店の場
北の新地の場
豊嶋屋逮夜の場
河内屋与兵衛 染五郎
お吉 壱太郎
豊嶋屋七左衛門 松 也
小栗八弥 歌 昇
皆朱の善兵衛 廣太郎
刷毛の弥五郎 種之助
妹おかち 米 吉
父徳兵衛 橘三郎
兄太兵衛 宗之助
母おさわ 吉 弥
山本森右衛門 亀 蔵
芸者小菊 高麗蔵
そして、この若造感が今年の公演では「吉」と出ました。
染五郎の与兵衛は、仁左衛門の型をなぞっていて勉強しているなーという感じでもありましたが、生意気感がリアル。
仁左衛門の与兵衛は、陶酔するような冷たい色気が余人に替えがたいのですが、もしこの役を誰に引き継いでもらいたいかと考えた時に、虫六の脳裏にすぐに浮かんだのは、染五郎であります。ラブちゃんではなく。
これは染五郎の仁でしょう、やはり。
刹那的に世渡りしている不良息子のどうしようもなさ。後先を考えないほんの悪巧みのつもりの衝動の細いインパルスが連鎖して、場当たり的悪事が後戻りできない殺意に変わっていく感触、お吉殺しの凄惨な場面、殺してしまったあとのパニック状態。美しくもありましたが、生々しく、より現代性を感じる与兵衛でした。
しかし、油まみれで滑ったりしても、きっちり型を決めるところが見事ですね。
有り金を盗んでべとべとで花道を去る与兵衛に、大向こうさんの掛け声が掛かりました。虫六もそれに混じって(染高麗!)とこっそり口の中で掛け声かけました。
それから、松也と壱太郎の豊嶋屋夫婦のバランスがとても良いのが印象に残りました。壱太郎は頭が小さくて背も高く、普通にかっこいいのですが、おじいちゃん(藤十郎)やお父さん(翫雀)なんかと同じ舞台に立つと、どうもバランスが悪いという印象がぬぐえませんでした。しかし、今回はまわりがみんな大柄で現代っ子体型なので、スタイルの良さに違和感がないぞ。さらに、松也演じる豊嶋屋七左衛門との夫婦感がとても良い感じ。そうか、この夫婦ってまだ若くて、一生懸命店を切り盛りしていたんだね…ということが、納得できました。ちょっと焼きもち焼くところなんかね。
逆に芸者小菊の高麗蔵さんは分が悪かったかな。
与兵衛の親の徳兵衛(橘三郎)・おさわ(吉弥)は全体を引き締めていい配役でした。
そして2年前の播磨屋襲名にも出ていて、他の舞台でもこっそり気にしていましたが。米吉丈はかわいい…。おぼこ役というか(昼の部での)お姫様役とか、いいですね。品があって可愛らしい。最近の女形ではむしろ珍しい。大注目です。
歌昇も2年前よりだいぶ成長したぞ!ときどき播磨屋一座を離れて、こういう興行でのびのび勉強するものいいのかもですね。
仁左衛門の芝居では「豊嶋屋油店の場」までだったと思うけど、今回は「北の新地の場」と「豊嶋屋逮夜の場」まで描かれています。こんな結末であったとはじめて知りました。(文楽見ねば〜)
「北の新地」の場は「沼津」か?コミカルな息抜きの場。客席を割って歩き、仮花道で謎掛けきみまろか?!大ウケでした。芝居小屋はこれがないと…。
それにしても、最後は逮捕され観念する河内屋与兵衛ねぇ…。もともと、大悪人じゃなくて、ただのチャラい馬鹿息子だからなー。う〜ん、でもなんか違うナー。
しかし、金丸座で「女殺油地獄」をみることができて、おいらはそうとう満足しました。
芝居がはける頃、木戸前に虫六子が戻って来てました。これから、深夜までつづく怒濤の第2部に突入なのでした。
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