琴平2日目は、昼の部を見ます。
夕べはひとり金比羅さん詣りしていた虫六子もいよいよ江戸の芝居小屋デビュウであります。
朝ご飯をいただいて、荷物をまとめて旅館に預かってもらい、少し早めに小屋に到着しました。
今日は千穐楽なので「三味線餅つき」があり、役者さんが出てくるということで、行ってみたらすでに木戸前は長蛇の列…。
うむ、出遅れたか。
後ろの方でもぞもぞしていたら、親切なおばさまが 若い虫六子にだけ隙間を作ってくれたので娘は前の方に押し出ていきました。虫六は背が足りないので直に見えなかったけど、手を伸ばしてカメラに収めました。杵をもつのは米吉君。
前評判では、染五郎クラスの役者は出ないとのことでしたけど、蓋を開けたら名題の役者衆総出演の大サービスでした。一座の意気込みが感じられるね〜。
中学生の三味線・お囃子の調子っぱずれも微笑ましく…(苦笑)
地元のお兄さんたちが演じる木戸芸者さんたちの万歳も場を暖めてくれました。
先ほど、役者さん総出でついたお餅が見ていたお客さんに振る舞われました。縁起良し!
今日は、○コトラ枡(花道脇の空井戸のとこ)に1席と虫六が自力ゲットの1席(ろ11)が離れてあるのですが、デビュー戦の虫六子に前の席を譲り、虫六は後ろの席に陣取りました。
ろ11は、青田組の直前の席で、劇場全体が見渡せて面白い場所でした。劇場が小さいので、基本的にどこで見てもお芝居の呼吸が感じられ、また観客の反応も一体となるので、このような後ろの席でも楽しく見れるのが芝居小屋の魅力です。
客席はこんな風に枡で仕切られ(縦の板は取り外されていました)、お座りして見ます。1枡に5席で基本は前に2人、後ろに3人。1列でも前がいいと思うかもしれませんが、後ろに座った方が背中に寄りかかれる横板があるので楽ですね。
11列目は青田組の柵があるので、座椅子のようで背中が楽。
しかも、虫六のゲットした席は柱の前だったので、すこし姿勢を伸ばしても後ろに迷惑を掛けずに済みそうです。ちょうど昨日商店街をぶらついたときにお土産やさんのおばあちゃんにすすめられて購入した正座用の「らくらく椅子」を持ち込んだので、これ幸いとお尻を高くして見ることができました。小屋でフリースの膝掛けを貸してもらって、お尻に巻き込んだら痛くなかった。準備万端であります!
開演まで少し時間があったのですが、虫六子が探検をしようとやってきたので、2階の客席に行って見ることにしました。ここは1階の客席に入るところ。
2階に上ってみました。朱い絨毯が敷いてある西の桟敷の裏にあたる廊下。
歌舞伎座は舞台に向かって右側の桟敷席は「東」ですが、金丸座は「西」なんですね。
単純に小屋の建っている向きが違うということなのでしょうけれども、なんだか不思議だぞ。
(そう思って、他の小屋がどうなっているか見てみたら、新橋演舞場、京都南座、大阪松竹座とも「右・左」、国立劇場は桟敷席なし…。へぇ、昔はどうだったのかな?)
西桟敷の最前列から舞台を望みます。こんな席でみるのも面白いかもですね。
ここらは2階の西桟敷4番あたり。いわゆるお大尽席で、すこし枡の幅が広いそうです。
2階の西桟敷の最後列からはこんな感じ。天井が近い!
ここらは「舟(前舟・中舟・後舟)」とよばれる2階後方の客席の一番西寄りのあたり。実はこの「前舟」のこの席は去年の猿之助襲名興行の「四の切」を見た思い出深い席でもあります。花道もかけ筋も見渡せていい席でした。
なんと○コトラツアー別部隊が、「前舟」のど真ん中の極上席をゲットしていました。
この位置は平成中村座では「お大尽席」でしたね。歌舞伎座などでもここが皇族などのVIP席!ひや〜良い眺めだな…。
昔は桟敷というと、芝居見物をすると同時に、他のお客から見られる席でもあったので、お召かしして席についたから脇の方にあったのかな。後方の席だとわざわざ振り向かないと見れないもんね。
「舟」は枡ではなく椅子席になっているので、足が少し楽ですね。
そんなわけで、いよいよ昼の部。
○菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
「加茂堤」「車曳」「寺子屋」
〈加茂堤〉
舎人桜丸 松 也
斎世の君 廣太郎
苅屋姫 米 吉
桜丸女房八重 壱太郎
〈車曳〉
舎人松王丸 染五郎
舎人梅王丸 歌 昇
舎人杉王丸 種之助
金棒引藤内 廣太郎
藤原時平 橘三郎
舎人桜丸 松 也
〈寺子屋〉
舎人松王丸 染五郎
武部源蔵 松 也
女房戸浪 壱太郎
涎くり与太郎 宗之助
御台園生の前 吉 弥
春藤玄蕃 亀 蔵
松王女房千代 高麗蔵
こちら昼の部もはやり「若気」が炸裂でとても爽やかでエネルギッシュな舞台でした。「菅原伝授〜」がこんなに面白いと思ったのは初めてかなー。エピソード・舎人三兄弟を抽出したのも良かったですね。桜丸切腹の段が入ればもっと分かり易かったのかもしれませんが、それを入れると上演時間が膨らんでしまうのか…。それにしても、凝縮した芝居小屋空間に“時分の花”満開の若い役者の演技が充満している、なんとも言えない高揚感です。
染五郎にはこの調子でリーダーシップを発揮していただきたいのだ。
虫六子と離れて見ていたので、彼女が何に反応したのかあまり観察は出来ませんでしたが、間近にみる役者の演技(本当に至近距離だった)の顔の表情とか細かいところまで見えて、面白かったと言っていました。
○コトラさんの配慮で、「車曳」の場で席をYさんが変わってくださり、虫六もかぶりつきで見ることが出来たのですが、心理描写のある場だけでなく、時代がかった場面も近くでみると凄く迫力があって面白いのです。
自らのしくじりで恩ある菅丞相を流罪に追い込むことになり忸怩たる思いの桜丸(松也)と、同じく主を失って浪人中の梅王丸(歌昇)。なんとか報復しようと藤原時平の牛車を襲いますが、そこに時平の舎人をしている松王丸(染五郎)が登場し、三兄弟が揃っての時代がかかった大見得!やんやー、天晴れなり!
なるほどなー、江戸時代はこんな感じで間近に役者をながめ、隈取りや派手な衣装はこんな演出効果があったのかーということを、いろいろ想像することができました。
そんなわけで、私は歌昇の梅王丸が予想以上に良くて嬉しい掘り出しものだったのですが、虫六子の目は松也の桜丸を追っておりましたね。(おぬし、白塗り好みか…ワシの子じゃのう…)
そのほかにも、虫六子の心を捉えたのは壱太郎と米吉だったとのこと。(おぬし、女形好みか…ワシの子じゃのう…)
「寺子屋」では、また元のお席へ逆戻りして後方から見ましたが、染五郎が幸四郎にそっくりでこれまた仰天。声も似てるのだ。松王丸は、高麗屋にとっては家の芸なので、これができて当たり前の大事な役柄のようですが、染五郎の役者としての仁に合っているかというとそこは難しいという印象。本人も苦労しているんだろうなーと思います。でも、太筆の立役もできるようになれば、これは大変な強みです。高麗屋は兼ねる役者の系統ではないと思いますが、白塗りも(もしかして女形も)染五郎ならできる。そんなわけで、家の芸にこだわらず一人の役者としていろんな役に挑戦して欲しいし、この先の成長に大いに期待するばかり。
松王丸が息子小太郎を犠牲にして首実検をするくだり、その真実を明かして、小太郎の最期の態度を聞いてその不憫さを哀れみ、さらに切腹した桜丸の無念さを思い悔しい本心を見せる場面では、客席のあちらこちらで涙をぬぐう人の横顔が目に入りました。頑張れ、高麗屋!
そんなわけで、虫六子のこんぴら歌舞伎初体験の巻、無事終了。
このあと狸屋さんで饂飩を食べて、この日のうちに一路大阪方面へ帰ります。
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