2009年10月4日日曜日

偽りと知りながら見る人多し_浅草見世物

浅草雑芸団の上島さんからご案内をいただいた「国際浅草学プロジェクト 浅草見世物 奥山の風景」に行ってきました。


せっかく行くので、なにかお役に立てればと雑芸団にお手伝いを申し出ると、見世物絵看板の写真をとったりさわったりされないように見張りをしていて欲しいとのこと。

普段は警備の目を盗んでちゃっかり1枚撮って帰る口なのに、今日は立場が逆なので、目付き悪く携帯電話など取りだそうならば「おらおら〜」と散らし飛ばさなければなりません。しかし、私はアウェイ組のはずなんですが何故かお顔の知った方がたくさんいらして、ご挨拶やら世間話やらしてしまうんですが、どうも任務が押しかかって気が気でない…。会話が半端になってしまった皆々様、大変失礼いたしました人( ̄ω ̄;)

で、「浅草見世物」これが想像以上に充実した中身でした。

まず、圧巻は私も警備をお手伝いした「見世物絵看板」です。

7枚くらいあったかな、会場のホワイエにいきなり露出展示して見せていたのですが、この絵がとにかく迫力です。気合術とか蟹男とか蛇女とかタコ女(誕生の図というのもありました)とか、そのグロいモチーフもさることながら、極彩色のカラーリング(染料のけばけばしさですね)といい、迷いのない筆遣いといい、全てが凄い。街頭紙芝居絵の原点はこっち側にある感じですね。蟹男の顔が赤城圭一郎だったり、ビキニスタイルの女性のナイスバディが今時の萌えキャラとは違って、胸は小さめ、下腹がぽこん…とモデルの体型に妄想が入っていないところが妙にリアルだったり…、見れば見るほど飽きないし、濃いよぅ。本当に写真が撮りたかったけど、我慢しました。

ので、ここでも心のシャッターで。(今回、季語がないので川柳ってことで…汗)
 因果絵は 顔は二枚目 蟹男
 絵看板 綺羅がごとくに張り渡り
 見世物絵 いまや至宝となりにけり

絵看板の手法を完成させたのは福岡県の絵師で志村静峰という人らしい。でも、後継者のないまま昭和46年になくなったそうです。遅かった…。

そんなわけで、同じホワイエで上演していた桐生の竹田からくり人形と和ボットの方は、人波の頭越しにちらりと見るだけで口上のみで想像するような感じだったけれども、いづれ機会があったらじっくり見たいです。特に、桐生の人形芝居は、慙愧丸の時にも助っ人をしてくれたM山ちゃんが一生懸命関わっていたので、楽しみにしていたのです。ちょっと手強そうなおじいちゃんたちをうまくリードして、けなげにもり立てている姿はひたすら感心させられました。若いってすばらしい、がんばれ!M山ちゃん。

で、ホールのメインプログラムですが、学術講演が二本、

川添裕氏の「浅草と見世物、大道芸」と姜竣氏の「紙芝居と街路の文化様式ーその広がりと日韓比較ー」。どちらも楽しみにしていったのですが、30分は短かったのか、本領を発揮されないままもったいない感じでした。特にいちばん後ろで見てしまったせいで、投影されるパワーポイントとか全然読めなくて、席取り失敗しました。とはいえ、会場にいらした方々は、専門家の人だけじゃなくて台東区民の方々の多かったので、入門的なお話しになることには意味があったのだろうと思います。

今回、来て良かった(!)感がいちばんだったのは、「人間ポンプ」といわれた安田里美さんのドキュメンタリー映像とその未人である春子さんの「タコ娘」の泣きタンカをフルバージョンで聞けたことでした。映像はもっと長いものを抜粋編集したものらしいので、いつか全編をみたいです。安田さんの芸については、鵜飼正樹著「安田里美一代記」を読んでいたのと、映像もテレビ(たぶん小さいとき、「大正テレビ寄席」だったと思う)で見たことがありましたが本物を見たことはなかったのです。

飲み込んだ碁石を色分けして出してみせたり、金魚を釣り針で胃袋から釣り上げたり、ガソリンを飲み込んで舌を出して見せ火を噴き出す芸…、本当に実際にみたことは無いのに、もの凄く既視感があり、なんだろうこの感じは…と背筋がぞくりとしました。イメージだけで強烈な印象を受けていたんでしょうね。それにしても、あんな奇芸を人前で見せていた芸人さんがいたんだなぁと思うと、ただ感嘆するばかりです。

春子さんの泣きタンカも本物が聞けて、嬉しかった!しびれました〜!

それから、長口上のあとの瞬間芸「ろくろ首」。浅草雑芸団の持ちネタです。上島さんの蘊蓄前説が長い長い。でも、「偽りと知りながら見る人多」い芸が「ろくろ首」とのことなので、口上が大げさであればあるほど「ろくろ首芸」としてはアリですね。小馬鹿にされる快感ってやつですね。

最後は、日本手品の「和妻」。もともと日本にあった手品は「手妻」と呼ばれていたそうです。「妻」は手先仕事のことらしい。それが明治以降、西洋のマジックが流入してきて「洋妻」と「和妻」と区別されるようになったとか。「和妻」は不思議をことさら強調しないのが特徴だそうです。

「金輪の曲」というリング芸は、見立てが入って、太神楽や猿まわしとも同じだなぁと思いました。また、「蝶のたわむれ」は、1枚の紙切れを蝶に見立て、それが2匹になり、卵を産んで命が絶え、やがて花吹雪のようなたくさんの蝶に生まれ変わって舞うという、テーマもパフォーマンスも美しい芸でした。藤山新太郎さんの身のこなしが日本舞踊を見るようでした。

いいものを見せていただきました。

浅草の大道芸…奥深いものだなぁと、つくづく満腹になって帰ってきました。雑芸団の皆々様、大変お世話になりました。


会場で写真が撮れなかったので、カッパ橋のカッパ君を…。


ついでに「満月−1夜」写真。本当は浅草で撮りたかったのですが、浅草通過中は月が見えませんで、江東区の某所で ( ̄◆ ̄;)


4 件のコメント:

  1. こんばんは。M山です。
    先日はどうもでした。からくり人形は、浅草に持っていったものだけでなく、桐生においてきた物の方が面白いものが多い・・・かもです。
    今年は團十郎をモデルにした(といわれている)人形が動く助六由縁江戸桜を復元予定です!是非桐生にもいらしてください!
    PS 手ぬぐいは、次回会った時に購入いたします(笑)

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  2. お疲れ様でした~
    絵看板は圧巻でしたね。資料で見ていた絵看板の本物を間近で見ることが出来て興奮冷めやらぬです。写真は撮ってないので安心して下さい(笑)

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  3. お疲れさまでした。おかげさまで客席も満員、評判もよく、胸をなでおろしています。わざわざ遠くから来てくださったのに、お弁当ひとつだけでこき使ってしまい、申し訳ありませんでした。「人間ポンプ」の映像は、改めて上映会をやりましょうか。

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  4. >M山さん
    お疲れ様でした。からくり人形をちゃんと拝見できず失礼いたしました。今度じっくり見せてね。
    助六由縁江戸桜ですかー!いいですね。そしたら、揚巻さんも復元ですね。楽しみです、ぜひお知らせください。
    お父上に気にいっていただけた手ぬぐいはお土産にお持ちしますですよ(笑)

    >ふみのりさん
    本当にS市の人にお会いできるとは思っていなかったので、嬉しかったです。いろいろと面白いことがあっても、共感できる相手が近くにいるのといないのでは随分違うですよ!
    Y巻さんに自慢しようね(笑)「あの絵看板は本物みないと、あの迫力は分からないよね!!」とか…。
    写真の件は疑って悪かったよぅ。信用しているから安心してね。

    >zatugeiさん
    お世話になりました。実は私はお弁当を3つもらいました(爆)
    帰り際に2つもらって、泊めてくれた友人宅で晩ご飯にしました。湯島のホタテご飯弁当、美味しくて好評でしたよ。雑芸団の皆さんにもよろしくお伝えくださいませ。
    「人間ポンプ」全編みたいです!!是非上映会をやってください。

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