2013年10月17日木曜日

岩手県立美術館「アントニオ・ロペス」展

三連休の最終日に家族の予定をあわせることができたので、久しぶりで遠出をすることにしました。今日の目的地は岩手県立美術館。虫六もチョー久しぶりで高速に乗るので(当家のドライバーは虫六のみ…)夕べから緊張、ガソリンを入れにいったついでにタイヤの空気圧など調整してもらって、ドキドキなのだ。

というわけで、なんとか高速道路を走る感覚を思い出しつつ盛岡ICまで無事到着。
盛岡といえば「冷麺」!ってことで、美術館に行く前にご贔屓の「ぴょんぴょん舎稲荷町本店」にて腹ごしらえ。虫六子が注文したのは「プルゴギ温麺」。冷麺って温かくてもOKなんですね。

こちらは秋限定メニューの「舞茸チヂミ」。舞茸の香りと歯ごたえがたまらん。

そして、やっぱり「盛岡冷麺」でしょ。岩手まで来た!って実感を冷麺で味わうのでした。それにしても、どうして冷麺の卵は固ゆでなんでしょうかね?

「ぴょんぴょん舎」は盛岡市内に何店舗かあるんですが、森林の中のロフト風の稲荷町本店がなんだか気にいっております。ワンちゃん連れのグループは野外デッキで食事を楽しんでおりました。

さあ、お腹もいっぱいになりましたので、いよいよ今日の本題!岩手県立美術館に到着。ここでは10月27日(日)まで「アントニオ・ロペス」展が開催中であります。

アントニオ・ロペスといえば、現代スペイン・リアリズムの巨匠として知られているアーティストですが(サッカー選手ではありませんぞ!)、日本では、「みつばちのささやき」や「エル・スール」で有名な映画監督ビクトル・エリセが、ドキュメンタリータッチの映画「マルメロの陽光」(1992年)を撮ったことで広く認知された作家です。

かくゆう虫六も、作品が紹介されるという機会には出くわしておらず、あの映画をみて作家を知り、以来、いつか実際の作品を観たい!と憧れ続けておりました。醸成させた憧憬の期間20年余り!どうしても見逃したくない今年唯一の展覧会であります。

展覧会では初期の美術学校時代の作品から近作まで、油彩・素描・彫刻の各ジャンルから代表作約65点が紹介されています。65点が多いか少ないかは意見が分かれるかも知れませんが、若い時分に描いた作品を10数年たったあとに再び筆を入れたり、作品を未完成なままにしたりという作家の特性に加え、ロペス自身が展覧会という形式をあまり好まないこと、また海外の個人所蔵作品が多いということで展覧会の開催はなかなか困難だったらしく、主催者や学芸員さんのご苦労が偲ばれますが、とにかく満を持しての開催にこぎ着けたということみたいです。

詳しくは、虫六が与太話を述べるまでもなく公式ホームページを見ていただきたいのですが…、例のマルメロの絵(そう、完成しなかったあの絵ですよ)も展示されていました。
特に印象に残った作品をメモしますと…、
《グラン・ピア》(1974年から81年にかけて夏の夜明けの時間帯6:30のマドリードの風景を通い詰めて描いた作品。夜のとばりが明けて薄暮が微かに色彩を映し出し、まだ人の気配がない風景。図録じゃ本物の微妙な空気感は伝わらないよ〜)
《マリアの肖像》(娘マリアを鉛筆だけで描いた実物大の素描)
《トイレと窓》(壁をみる視点と便器をみる視点が違うので画面上区分線を作っちゃった)
《バスルーム》(驚くことにこれも素描なのです、しかも実物大の…。人技とは思えない)

そして彫刻、《男と女》(制作期間1968-96年という難産の末(?)に完成した裸体の夫婦像、これが木彫なんだな。一度観たら忘れられない存在感です)

そして、会場で一番存在感を放っているのが、
《バリューカスの消防署の塔から観たマドリード》(1990-2006 油彩)素焼き壁の街並の空気感と光彩、精細な描写と大胆な省略(だって人の目はそう見えているから)、そして見た事のない構図!生々しい計った針跡。16年か…。作家にとって現実ってなんなんだろうな。

などなど、あげはじめたら切りがありませんね…。《眠る女》という奥さんをモデルにしたレリーフも印象に残ったです。あ、本当にきりがない。

「マルメロの陽光」でもそうでしたが、ロペスは、作品の中でけっして間に合わせの辻褄あわせをしないのです。これだけの描写力や創造力をもちながら、時のうつろいとともに変化しつづける目前の対象に向き合い続けて、破綻したり未完成になることを恐れずに制作に挑んでるところが、凡俗な芸術家じゃない本物だと伝わってきて、この作品に出会うことができた実感で幸福な気持ちに満たされます。そして、どの作品にも感じるものは「量感」です。人体や物体としての量感ももちろん、室内や街の空気感も、光も、量感として伝わってくる気がしました。

満身創痍に近いお疲れモードだったけど、観にいって大正解でした!


BUNKAMURAザ・ミュージアム(4/26〜6/16)を皮切りに、長崎県美術館(6/29〜8/25)と巡回してきた「アントニオ・ロペス」展、岩手県立美術館が最終会場です。展覧会が終わったら、作品はスペインに帰っちゃうよ!お見逃しなく!

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