中村屋の若太夫兄弟の錦秋公演が10周年ということで、今年は仙台公演がありました。いつもは仙台は素通りするケースが多く、北上や盛岡まで足を伸ばして見に行っていましたが、仙台という町があったことに気がついてくれましたか!
ちなみに、チケットは即完売という快挙だったそうです。
虫六も、4月の琴平遠征中に岡山のエキナカ喫茶店で列車の乗り継ぎ待ち合わせ時間にネットで予約申し込みするという荒技でゲットしたのですが、へへへ、前の方でした。ご同伴はいつものガスパママさん。
○中村勘九郎・中村七之助 錦秋特別公演 10周年記念
仙台公演:9月4日(木) 昼の部14:00〜、夜の部18:30〜
一、「都風流」
中村勘九郎 中村七之助
ニ、「芸談」
中村勘九郎 中村七之助
三、「月の巻」
姫 澤村國 久
仕丁 中村いてう 中村仲 助
腰元 中村仲之助 中村仲四郎、中村仲 弥
後見 中村小三郎 土橋慶 一
四、「紀州道成寺」
白拍子 中村七之助
住 僧 中村勘九郎
後 見 中村小三郎 土橋慶 一
「都風流」は、長唄をやっていられる方ならよくご存じの人気曲ですが、そう言えば歌舞伎の舞台で拝見したことはありません。今回のツアーのテーマは「マニアック」ってことだそうで、「とても良くできた面白いのにめったに舞台に掛からない演目」をチョイスしたとのこと。
おー、それはありがたい!
そんなわけで、「都風流」にどんな振付がつくのか興味津々でしたが、七之助の色っぽい女形姿が出てくるかと思いきや、なんと二人の素踊りでした。「都風流」は、久保田万太郎作詞、四世住吉小三郎・稀音家浄観作曲で、昭和22年に発表された比較的新しい作品です。久保田が愛した明治大正期の浅草の下町情緒を四季折々の風物に寄せて組唄式に綴った作品。曲はさまざまな合方や聞かせどころも盛りこまれた聴き応えのある作品で、私もいつかは挑戦したい1曲ですが、なるほど踊りにしようと思ったら、展開がめくるめくで難しいのかも知れません。しかし、素踊りの良いところを生かして、場面によって登場人物の役回りなども自在に変えて面白く構成してあり、さすがと思いました。さっきまで粋な町衆かと思わせていた勘九郎がくるっと背中を見せたら、色っぽい女性のものになっていて、ぞくっとしました。ほんと、踊り上手いんだな〜。もちろん七之助も負けていません、キリッとした色男
になっちゃいます。素踊り、面白い。
地方は、立唄が杵屋巳津也、立三味線が杵屋五吉郎でこの日は四枚四挺だったかな。お囃子は田中佐幸ほか。演奏だけだとけっこう気合いが入りますが、踊りの時はさらさら引いていて、こういう感触で弾くものなのね…と、新鮮な驚きが。
ひとつ残念だったのは、虫の合方のときに、効果音でリンリンならしたのが五月蠅かった。踊りも素踊りなんだから、演奏も三味線の音の面白さで聞かせていただいて良かったのに…と。
「月の巻」は中村屋ご一門の若手ががんばりました。いてうさんが亡き勘三郎丈そっくりで、弟子でもここまで似るのか????と驚きました。だって、姿形まで似ているんだもん。
「紀州道成寺」もよく長唄では掛かりますが、やはり舞踊ではなかなか掛からないらしい。道成寺もののバリエーションで、住僧の勘九郎の迫力と、白拍子・七之助の怪しい美しさ。(玉様を継いでください!)変化したあとの怖い顔はかわいくなってしまって、いまいち迫力に欠けましたが…(だって綺麗なんだもん)、このあたりは次の課題ってことで。
「芸談」では、親子二代で大ファンですっていう女の子と、16才の男の子!男子珍し!ってことでマイクが渡ったのですが、この子は日本舞踊をやっているそうで、「おかま」とかって同級生に揶揄されるそうな。その対処法を二人に聞いたのですが、七之助丈の回答がナイスでした。「いま、日本では特に中学や高校くらいだと歌舞伎や舞踊を見るって経験が圧倒的にないので、日本舞踊がどういうものか知るチャンスがないから、そういう偏見をもたれてしまうのも仕方がないけれど、いちど文化祭かなにかでいいからみんなの前で踊ってみるといいよ。演目を選ぶ必要はあるけれど、君が真剣に凄いのを踊ったらみんなビックリして、そんなことも言われなくなるんじゃないかな」
(いいぞ!高校生、「ウォーターボーイズ」の次は「日舞ボーイズ」だ!ほんと日本舞踊はそんじょそこらのスポーツ選手より身体能力を求められるぞよ。頑張れ。)
それにしても、この二人でしっかりファンを呼べますね。この調子で頑張ってください。そして、また来年も仙台にいらしてください。
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