○歌舞伎座「十二月大歌舞伎」夜の部
『妹背山婦女庭訓』四段目
「杉酒屋」
杉酒屋娘お三輪 七之助
烏帽子折求女 松也
入鹿妹橘姫 児太郎
丁稚子太郎 團子
「道行恋苧環」
杉酒屋娘お三輪 七之助
入鹿妹橘姫 児太郎
烏帽子折求女(実は藤原淡海) 松也
「三笠山御殿」
杉酒屋娘お三輪 玉三郎
漁師鱶七 松禄
烏帽子折求女 松也
入鹿妹橘姫 児太郎
豆腐買おむら 中車
蘇我入鹿 家六
久しぶりに一等席です。なんと花道のすぐ脇、七三が良い感じで拝めるお席です。
それにしても、歌舞伎座のチケットは値上がりしましたね。さよなら公演の前はもっと安かった(それでも十分に高かったが…)のに、今月などは幹部クラスの役者は玉三郎丈と家六丈くらいで、あとは息子世代の若い役者ばかり。正直、お高い感ありますね。…このプレッシャーを玉様おひとりにかけるのはひどいんじゃないかぁ。
実際に今月の公演の感想は「玉様学校」の発表会かな?…っていうくらい、役者の技量の差をはっきり見せつけられた感じでした。
前半の2場。「杉酒屋」から上演するというのは、話の筋がいろいろ分かってとても良かったのですが、松也丈の求女(実は淡海)が、ただの女たらしの色男にしか見えなくて、実は、暴政をふるう蘇我入鹿を亡き者にしようというミッションをもっていながら身分を隠している正義の味方という肚の部分が感じられないのでした。人気者だし、最近は若い一座で大きな役を付けてもらう機会も増えているけれど、たまに巧い役者さんの脇についてちゃんと勉強した方がいいのでは?と老婆心ながら感想。考えてみれば求女って複雑で大事な役どころ、松也さんには大変失礼かも知れませんが、ここに(仁左様!なんて贅沢はいいませんが)染五郎や勘九郎だったらどうだったかなと妄想してしまいました。頑張れ松也!
児太郎丈ももう少しというところ、セレブなお姫様なのでもっと華と神秘性があってもいいと思いました。
七之助丈が出てきて、やっと舞台は引き締まりましたが…。
それから、團子君の役者ぶりは他の役者を食ってましたな。うまいわー、あの子。
で、『三笠山御殿』で玉三郎丈のお三輪。やっぱりぜんっぜん違う、格上の演技。
一途な恋に動かされて場違いな場所に入り込んで戸惑う若い娘感や、でも実はけっこう蓮っ葉な性格づけも上手い。女のかわいさがたまらん。また、求女と橘姫が婚礼をあげると聞いて嫉妬に狂い、形相を一変させて(疑着の相)花道から髪振り乱し踵を返して奥へ駆け入ろうとする場面の迫力は、凄かった。遠路見に来た甲斐がありました。
そして、命がこと切れるって言うのに、求女の大義を聞いてうれしがる乙女心(←この話のこの展開は、毎度のことながら個人的には理解できませんが)も、憐れでした。
それだけに、若い役者の力不足が痛いです。松禄丈、中車丈、それぞれ頑張っているのだろうけれど、やっぱり間にいるべき役者の不在感が埋められないのですね。
(もちろん、舞台袖では七之助丈がじっくり見て勉強していることでしょう…(妄想)…このあとの芝居の成長に期待ですよぅ!)
なには、ともあれ、今年も1年楽しい思いをありがとう!と、芝居の神様に感謝、読者の皆様に感謝で年越しを迎えたいと思います。
翌日は、午前中に虫六子と浅草詣りをして帰省して来たのでした。今度は青春18切符2人遣いで。腰にきたー(;;;´Д`)
あ、ちなみにこの写真は、浅草寺さんの仲見世通りにかかった絵看板。来年の干支にちなんで『靭猿』!宙にういている独楽も飾り物、ヘタなコラージュ(クソコラ)ではありません。
念のため。