イセコレクションは、卵で有名なイセ食品の会長兼社長の伊勢彦信氏が蒐集した美術コレクションで、虫六は2012年に金沢の石川県立博物館で「中国陶磁名品展」ではじめて出会い、その質の高さに酩酊、忘れられない記憶となっていました。
そのコレクションが再び東京で見られるというので、ちょっと遠いけど足を運びました。
五島美術館は、東京急行(東急)電鉄の創業者・五島慶太(ごとうけいた1882-1959)が戦前から戦後にかけて蒐集した日本と東洋の古美術品(明治期以前)をもとに構成され、創立された美術館。虫六は門外漢ですが、茶道をされている方々にはお馴染みかもしれません。
暑っつい日でしたが、閑静な住宅街(というよりお屋敷街)を歩いて美術館に到着。入り口の掲示板には、長唄の演奏会のポスターなども貼ってあり…、羨ましすぎる文化環境です。
○「特別展 瓷華明彩-イセコレクションの名陶-」
期間:2015年6月27日[土]―8月9日[日]
休館日:毎月曜日(7月20日は開館)、7月21日[火]
開館時間:午前10時―午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料:一般1200円/高・大学生900円/中学生以下無料
特別展の出品作品は、中国陶磁が70点、文房紙宝が22点、それから彦信氏は固辞なさったけれど美術館のたっての要望により展示されたという西洋絵画のコレクション3点という構成。金沢の展覧会ではたっぷり121点でしたので、今回は厳選資料ということのようです。たしかに忘れがたい前漢時代「加彩馬頭部」や唐時代の「三彩女子 」はなかったけど、見た記憶がない作品も少なからずありました。別な眼で選んできたという事なのかも知れないし、金沢とはまた違った作品1点1点の演示のしかたや気合いの入った詳細なキャプションに、この分野を専門とする美術館の学芸員達が、イセコレクションを迎えるにあたっての本気度や意気というものを感じて、こちらもテンションが上がりました。
明時代・清時代を中心とした中国陶磁。これも詳しくないのですけど、景徳鎮窯の均整の取れた形状、微細な文様や濁りのない色彩…。その作品の背景などは分からなくても、美しいものはやはり美しいです。
虫六が今回、目を瞠ったのは「黄釉」の作品群。黄色って皇帝しか使えない禁色なんですよね。それを澄んだ発色を表現するために、釉薬レベル焼成レベルでいろいろ工夫しているみたいなのですよ。見比べてみていたらとても面白かったです。ムラのない釉薬づかいに「暗花」という浅い線刻で文様を描いてうっすら見えるか見えないかわからないような微かな文様が浮き出る手法が凄かった。また、黄色地にコバルトで文様を描く手法の作品群も補色づかいが大胆でカッコ良かった。
そして、やはり「暗花」の技法がクールな茄皮紫釉の作品群。すごく落ち着いた深みのある茄子紺…この色は酸化マンガンを使った紫釉にコバルトを加えて深い青みを出しているそうです。
勉強になるなー。
(最近自宅に置き場所がないので)金沢では買わなかった図録でしたが、写真・解説とも充実…と図録を買って、K先生(金属材料学の権威です)に貸してあげたら、とても喜んでうちにも1冊買ってくれとオーダーが飛びました。そして、これに匹敵するコレクションだねと「バウアー・コレクション中国陶磁名品展」(出光美術館・1994年)の図録を貸してくださいました。うわー、同じ窯の作品か…と思えるものがありました。
それにしても、似たようなコレクションの図録を改めて見比べてみると、コレクターの好みというのが感じられて面白いものですね。奥深すぎ…中国陶磁。