すでにものすごい人が並んでいて、入場するにも長蛇の列でした。指定席なので慌てませんでしたが、いったい何人いるんだろう…と思ったら、公式発表3200人!すげ〜。
(ちなみに、クリネックススタジアムは約23500人、東京ドームは約55000人。…比較に意味なし)
勘三郎丈を偲んでこんなに沢山の人が有料のイベントに参加したというわけですね。本当にまだ亡くなったということがうまく飲み込めません。
始まるまえから少し肌寒い感じでしたが、中村屋の振る舞い酒があり、平成中村座の茶色の作務衣をきたお茶子さんが訪れたお客さんに配っていました。あー、平成中村座だ〜。うれしいなー。しかも、このお酒も華やかな風味で美味しかった!
メモリアルイベントは、平成中村座の『夏祭浪花鑑』にも出演した上田秀一郎の和太鼓ので開幕。フジテレビの女子アナの紹介で中村屋の兄弟が登場、昨日までの台風が心配だった(なにしろ野外イベントなので)けれど、今日の晴天が父らしい…と。そんな父の演出に答えて、湿っぽくならずに進めていきたいと、ご挨拶。
その後、トレーナーに黒ジャケットの笑福亭釣瓶が出て来て、トークショーの開始。ゲストは、大竹しのぶ、柄本明、伊藤英明、江川卓、青木功、永島敏行、渡辺えり、野田秀樹、笹野高史の各氏なんですけど、このバラバラなメンバーから、勘三郎とのエピソードを引き出してしまう、釣瓶の話術にひたすら感心しました。天才だね、釣瓶!
しかも、勘三郎の型破りな人格を表現してあまりある、ユーモアに満ちた話ばっかり。Tノ門病院の便器事件とか、エイプリールのいたずら電話事とか、誰だかのお祝いの会に釣瓶をコスプレで引き出すように仕組みながら自分は風邪で欠席した勘三郎の自宅にコスプレ軍団が襲撃して、勘三郎が2階の窓から家族みんなで「○チガイ帰れ!」と絶叫した話とか…。会場は爆笑の渦。
このイベント、12月の命日近くに放映されるらしいのですが、どこまで放送コードに引っかからずに残るのか、とても楽しみであります。
それにしても、ひとりひとりのエピソードもとぼけた話のつもりでも、醸し出されるのは、奇人変人な勘三郎の素顔(爆)。しかし、そんなエピソードの紹介のされ方にどんなに人を楽しませ、愛された人だったか、今さらながら思い知ったのでした。まぁ、ほとんどが酒とゴルフの話でしたけどね。天国の勘三郎も苦笑いでしょう。(いや、引き攣り笑いか…)
そのあと、クドカンや松尾スズキや小泉今日子らのビデオメッセージが流され、かつて『若きハイデルベルヒ』で競演した大竹しのぶと、36年前の勘三郎のデジタル処理した声とでデュエット…(このあたり、この演出はどおよ?でご意見別れる気がしますが)。
さらに、いま鋭意編集中(まだ出来てない)という、ドキュメンタリー『映画 中村勘三郎』のダイジェスト版が先行上映されました。映画はフジテレビが20年以上記録した映像1時間テープ7000本分を80分ほどに編集するのだそうで、11月の末に全国12カ所の芝居小屋で上映されたあとで、12月21日(木)~1月3日(金)に東劇で上映予定です。芝居小屋では入場料1000円。懐かしい、中村屋の表情や自分でも足を運んだ襲名興行や平成中村座のお芝居での映像が沢山出て来て、とても懐かしかったっす。
この日のイベント参加者への記念品として、この映画の短縮版DVDと手ぬぐいとホッカイロが配られました。
さいごに、勘九郎、七之助、七緒八による舞踊『偲草鶴競猿若舞(しのびぐさつるくらべさるわかまい)』。これって、平成中村座の襲名で勘九郎が踊ったやつですね。舞台の真ん中には勘三郎のお骨(?小さい壺が入ったような袋)が置かれ、勘九郎、七之助の素踊りの連舞いから始まり、終盤には幼い七緒八君が登場して拍手喝采を浴びました。(可愛い…可愛すぎる!)彼の記憶の奥底に今日のこの情景がインプットされるのでしょうか。
夜になり、とても冷え込んで秋の到来も身に染みた一周忌イベントですが、沢山の人に愛された勘三郎らしい、追悼の会でした。
ところで、ひとつ気になったのは、歌舞伎界(特に平成中村座のメンバー)のみなさんは誰も姿をみせなかったこと。何か事情があったのかもしれませんが、本当の意味で一番身近にいた戦友ともいえる彼らにとっての勘三郎丈一周忌はどんな感じなのかなと、ちょっと胸がシクシクしたのでした。