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2020年7月19日日曜日

壱太郎さんのART歌舞伎は、水平線の向こうを見せてくれたのかも。

中村壱太郎さんが総合演出をした、ART歌舞伎を繰り返しみて、久しぶりでブログ書きます。(汗)


ART歌舞伎は、コロナ禍中での日本のエンタメ系配信では群を抜いたクオリティの高さだと思いました。
(コロナ禍での配信でもう1つ素晴らしいと思ったのは、向井山朋子さんの「A Live」のシリーズですが、これは別の機会に)
で、
壱太郎さん(以下、壱さん)、ご自身のYouTobeチャンネルも始めたし、幸四郎さんの図夢歌舞伎にも付き合っていたし、じっとしていられなかったのでしょうね。
ライブ配信のアフタートークでプロデュサーの新羅慎二さんのコメントを受けて、壱さんが「何かやりたいとは思っていても、松竹さんから3密の関係で衣装やかつらなんかを借りるコトができなくて、新羅さんのお友だちのクリエーターに繋がっていった」というようなことをおしゃっていました。

そうなんだ、松竹が動かなかった(動けなかった)ことが、壱さんを歌舞伎の外側に放り出し、演出家としての才能を開花させることになったのか、そう思うと、コロナがくれた恩恵なのかもしれないです。新しいものが生み出される時というのは、そういう障害を乗り越えた先だったりするんだね。いえ、コロナはちっとも有り難くはないですが…

演奏家には、壱さんが選んで声をかけたそう。いつもの歌舞伎の舞台に立たないけど、伝統芸能に軸足を置きながら他ジャンルの音楽とも共演する機会の多い演奏家のみなさん。この劇伴チームの選定だけで壱さんのセンスの良さがわかる。音楽だけで公演をして欲しいくらいとても魅力的な演奏でした。推峰さん(お笛)は存じ上げていたけれど、山部泰嗣さん(太鼓)、中井智弥さんは初めて。すごいコラボでした。(中井さんのCDポチリました。)特に津軽三味線の浅野祥さんの抜擢は(仙台という贔屓目なしに)良かった。

踊り手と楽器を一対で構成した第一部「四神降臨」がカッコ良く終わって、場転、二部の「五穀豊穣」では三味線を脇に立てた浅野さんが舞台の中央で、民謡『豊年こいこい節』を独唱。ほわっと土の香りがしてくるようでした。滋味があり、こころに染みてくる歌声でした。お爺ちゃんが好きな歌だったのかな?
そして浅野さんと太鼓の山部泰嗣さんの「神狗」、伝統芸の超絶技巧を魅せていただきました。浅野さんの津軽三味線はキレの良さもあるけど繊細さが魅力なんですよね。

この演奏のあとで、第三部「祈望祭事」。
これが藁人間が三番叟を踊るという趣向。太鼓が「月」に見立てられておりました。
北国ではお馴染みの来訪神のイメージでしょうか、伴奏は津軽三味線だし。
でも、私が個人的に彷彿したのは、「荒神さん(こうずんさん)」。
いがらしみきお先生の強烈な作画が蘇ってしまった。…あのこうずんさんが、可愛く三番叟を踊っているってだけでストライク。

ちなみにいがらし先生の描かれた「こうずんさん」はこちらです。

Byせんだいメディアテーク「物語りのかたち」展より。

お芝居の「花のこゝろ」はもちろん良かった。凄いもの見た感。
右近さんは当世風の2枚目ですね。おばちゃんは、若い時はお姫様やっていたのにずいぶん芯が太くなったものだよねぇ…なんて思ってしまいましたが。
友吉鶴心さんの琵琶語りが、すんなり分かりやすく物語を伝えてくれました。
コロシ役のお二人、花柳源九郎さん、藤間涼太朗さんの存在感も大きい。舞踊家は自在なんだね。式神みたいでした。早乙女の七夕の吹き流しみたいな衣装も舞台に映えていました。

ART歌舞伎は、歌舞伎の寸法や枠組みからはみ出した、歌舞伎のエレメントが変異してスパークした作品という印象。
もちろん、衣装や化粧が全然違ってもいたし、映像(カメラ7台、リハなしの一発撮りらしいです。天才か!)や照明の効果も絶大だった。

若いチームだからこその、異種混交の型破り感と、それを成し遂げて新しい地平を見た青年達の高揚感が伝わって来て、見ているこちらまで幸せな気持ちになりました。とにかく楽しそうだった。あれは関わった人全員の肥やしになった作品だったのだろうと思います。

たくさんの人に見て欲しいです。配信は明日(19日)までなんですけど。(;´▽`A`` 

2019年1月13日日曜日

2017年の観劇ベストテン(覚書)←いまごろ

寒中お見舞い申し上げます。
今年は、喪中につき年賀のご挨拶を欠礼させていただきました。

そして、年末に大掃除の傍ら整理しようとおもっていた去年の観劇関係の資料、手付かずで年を越してしまいました。あー、こーしてみると、本当にいかにブログをサボっていたかが知れちゃうなーと思いながら、本棚に仕舞い切れない筋書きの山をみる。正月から反省反省。(生写真の整理は未着手のまま)



そんなわけで、松も開けてしまったというのに
いまごろ(?!)な、2018年ベストテンなど…(以下観劇順)

『仮名手本忠臣蔵 七段目』(白鷗、仁左衛門、玉三郎)2月歌舞伎座
『神田祭』(仁左・玉)3月歌舞伎座
『絵本合法衢』(仁左衛門)4月歌舞伎座
『切られの与三』(七之助、梅枝)5月 コクーン歌舞伎
『盟三五大切』(幸四郎・七之助・獅堂)8月歌舞伎座
『助六』(仁左衛門・七之助)10月歌舞伎座
『実盛物語』(勘九郎)11月平成中村座
『隅田川続俤』法界坊(猿之助・右近)11月歌舞伎座
『壇ノ浦兜軍記(阿古屋)』(玉三郎)12月歌舞伎座
『二人藤娘』(梅枝・児太郎)12月歌舞伎座


<歌舞伎外>
「すしやの段」(駒之助)2月KAAT
まっちゃん祭り(神田松之丞ほか)11月読売ホール
文楽『勘助住家の段』ほか 5月国立小劇場

…ということにしておこう。

昨年は、ほとんど東京通いで遠征はなかったけれど、仁左衛門と玉三郎が顔を揃える舞台が色々堪能できて眼福でした。いつまでも元気で素晴らしい舞台をみせてください。
高麗屋の襲名は2月だけでしたが、歌舞伎座で拝見。幸四郎には色々窮屈でなくやって欲しいです。
また、七之助の躍進が本当に際立って今年はさらに大きくなるんだろうなぁという感じ。さらに、梅枝、児太郎の成長も楽しみ。特に児太郎は大注目ですね。っていうかずっと高感度が右肩上がりです。ベストテンには入いり切れませんでしたが、壱太郎も注目してます。
…今年は、三谷幸喜さんも新作歌舞伎(6月)にやるというし、ナウシカ歌舞伎(12月)もあるし、こんぴら歌舞伎(4月)は中村屋ですし…うぅ、破産するぅ。

話芸ものでは、柳家喬太郎(落語)や神田松之丞(講談)の高座を聞く機会が持てて嬉しかった。なかなか予定を合わせられませんが、寄席芸も聞く機会を増やしていけるといいなー。
…とはいえ、田舎住まいはやっぱり機会が少ないので、上京のチャンスをつかまなければならないのはハンディが大きいとますます実感するのでありました。
歌舞伎はまだ1ト月やってくださいますが、松之丞の連続読みなど、なかなかというか、定年退職でもしなければ長期滞在して聞くチャンスないんでないのかな…。
そういう意味では、ラジオでいいから連続読みやって欲しいです。

仙台でみた舞台では、文楽地方公演(『義経千本桜』「椎の木の段」「すしやの段」、『義経千本桜』(道行初音旅)、『新版歌祭文』)の若手の義太夫さんたちのがんばりが好感持てました。

そんなこんなで、歌舞伎の神様、今年もどうかよろしくお願いします。


【おまけ】←というか懺悔
*去年タイトルだけ付けて書かなかった日記

1)歌舞伎座11月公演_猿之助の「法界坊」
2)神田松之丞「まっちゃん祭り」
3)平成中村座11月_あるいは「長三郎劇場」を桜席で


2018年11月3日土曜日

一世一代?仁左衛門の『助六』_歌舞伎座十月大歌舞伎・夜の部

歌舞伎座百三十年「芸術祭十月大歌舞伎」は、十八世中村勘三郎七回忌追善でした。
夜の部に仁左衛門さんが『助六』を掛けるというので、虫六も黒い羽に磨きをかけて、花道脇の良席をゲット!久しぶりの贅沢芝居見物となりました。
(すみません、ブログをサボっているだけで、そこそこの席で春場も夏場も芝居は見てました…と白状だけしておきます。)

本当は、昼の部も幕見で観ようかと目論んではいたのですが、今月は幕見もヒートアップしているご様子で、さらに日曜日だったので一番列車(もちろん新幹線です)に乗る体力はないなーという自覚があったのと、そこで無理をして夜の部に居眠りしてはいかん!とさまざま考えて、昼過ぎに木挽町に到着。古本屋さんで油を売って、N姐さんと待ち合わせ時間に合流。

勘三郎さんが亡くなって丸6年…もう7回忌なんだって。なんだか信じられないなぁ。
遺影の前に人だかりがあり、正面から上手く撮れませなんだが、…合掌。

 で、どおして中村屋の追善に『助六』なのか?なんですが、これは仁左衛門さんが重ねてインタビューに答えていらっしゃいますが、十五代目仁左衛門の襲名披露狂言として『助六曲輪初花桜』をお掛けになったときに、その役を教えてくれたのが十七世の勘三郎さんで、それをいずれ十八代目に教える約束をしていたけど、それを果たす前に十八代目が亡くなってしまったのですね。その果たせなかった思いをつないでいくため、今回の追善で勘九郎さん、七之助さんと同じ舞台に立って助六を演じることにしたそうです。
白酒売りで勘九郎さんはこの舞台を身体にいれて、いずれ助六を演じる日がくるのでしょうし、「七之助くんを揚巻役者にしなければならない」という仁左衛門さんの言葉にはしびれます。歌舞伎の将来を見通しての今回の舞台。仁左衛門さん、やる前から「一世一代の助六」とささやかれていました。そして、当代随一の揚巻役者である玉三郎さんが、曽我十郎(白酒売新兵衛)・五郎(花川戸助六)兄弟の母・満江の役でご出演…という。

勘三郎さん、貴方のお子様たちはこれほどに支えられておりますよ…。

そして、福山かつぎには仁左衛門さんの孫の千之助くん!!歌舞伎ファンとしてはその先の舞台にまで夢を馳せるよねー。

ちょっと話題はそれますが、
通称『助六』は、成田屋さんの専売特許みたいな演目ですが、成田屋さんがやるときは花道から登場する時の「出端の唄」を河東節が演奏し、この曲名が「所縁江戸櫻」というので、外題を『助六所縁江戸櫻』というらしいです。しかし、成田屋さん以外でも『助六』は演じられており、高麗屋なら『助六曲輪江戸櫻』、音羽屋なら『助六曲輪菊』、松嶋屋なら『助六曲輪初花櫻』などと外題を変えて、成田屋が河東節を用いる「出端の唄」を長唄や清元、常磐津などに書き替えて上演しているそうです。(Wikipedia『助六』より)

つまり外題は、「出端の唄」の曲名から来ているのですね。
ちなみに、松島屋さんは長唄なんですが、長唄の『助六』ってカッコいいんですよね、曲だけ聞いても。虫六は大好きな曲です。

今回、虫六は 、出端の助六さんが傘を閉じてしゃっと水を切った雨の雫が飛んでくる至近距離にて観劇させていただきました。(今年の運はここに使い切ったかなー)
『助六』にご出演の役者さん達は基本的にみんな花道から登場するので、この席は満足度高いですよね。ふふふ。

七之助の揚巻は華があっていいですね。口跡が良いのでセリフも聞きやすい、ときどき張りすぎて地声になって夜長姫を思い出しちゃったけど、舞台オーラは若手の女形では群を抜いていると感じました。まだ初演なので、これからもっと艶を磨いていって欲しいです。
意休さんに悪態をつく伝法(?)なところもはまっていましたが、母・満江と奥から出てくる様子は一変して恋人を思う乙女でしおらしい。…っていうか、玉様の存在感が半端ないんですよ。顔を隠していらっしゃるのに…。

歌舞伎座閉場の頃、跡継ぎがいない玉三郎さんが仕事量を減らしていることに鑑み、芝居好きの仲間と今後の真女形の後継者問題はどうなるの?真女形がいなくなったら、歌舞伎じゃなくなるんじゃないの?と心配していたけれども、いやはや七之助の成長は頼もしい。そして、それをもうそこまで追ってくる形で、児太郎さん(白玉をしてました)や梅枝さん、壱太郎さんが成長しているのも好ましいです。これも玉さまの教育のおかげなのかも知れないですが…。

成長と言えば、巳之助さんが大きく見えました。朝顔仙平も存在感ありましたけど、前演目の『吉野山』の早見藤太がご馳走感。第三の主人公でした。『NARUTO』も主演でがんばっていたけれど、もっと大きな役いただいてほしいです。

歌六さんの髭の意休はダンディで、仁左衛門助六にがっちり対峙していました。そして、基本的に、歌六さんのやる役は全部好きな事に気がつきました。
取り巻きの若い衆の浴衣が、松嶋屋の銀杏柄で可愛かったな。松嶋屋さんのグッズが少ないので、あの柄で手ぬぐいでも作って欲しいものです。

で、いよいよ助六さんの出ですが、花道間近で拝見していましたら、足の運びがとても慎重なので、高い下駄をはいているし、きめのポーズもいくつもあるしでこんな感じなのかな…とか、それよりも「美しすぎる74才」に驚愕しつつ、思っていたのですが、ふと目の端に下手の花道の付け根で後見の松之助さんがすんごく心配そうに緊張の面持ちで控えていらっしゃるのが目に入り…(えっ?旦那、もしかして調子がよろしくない???)と不安になりました。もう心がざわざわ。
…ところが!一旦、セリフが入ってきたら、もう仁左衛門さんの呼吸に飲まれてしまうのだね。陰影のある美男子が、生意気なモテ男になり、やんちゃな弟になり、母親に頭のあがらないガキになる…いやはやこの方いったいおいくつなんだ。
いつもそうなんですが、仁左衛門さんのお芝居は、息をすることを忘れてしまうのよね。

フォロワーさんが、「仁左衛門さんの意休も見てみたい」と鋭いことをおっしゃっていましたが、そうなんだ!と納得。お父様の十三代目は意休がはまり役だったのですね。ちょうど十三代目の写真集『風姿』を予習がてら見ていて、六代目歌右衛門の揚巻に意休役で出演されている写真を拝見していたのでピピンと来てしまいました。
勘九郎さんが助六で掛ける時には、ぜひ、意休役で付き合っていただきたいです。これは見応えある勝負になるよう。勘九郎さんも助六役が似合いそうですし。

ところで、今年の文化功労賞に仁左衛門さんが選出されました。ヽ(´▽`)/ おめでとうございます!

で、それを伝えるニュースを見て驚いたよ。「いつものように先輩や自分のビデオを見直している最中、十一世團十郎の助六を見ているところで今回の一報を受け」たって。
( ̄◆ ̄;)
えっ、研究していたの?もしかしてまだまだ「攻め」の姿勢じゃないですか?誰ですか「一世一代」なんてデマをとばしてんのは。私は、仁左衛門さんの意休も見たいけど、進化した助六も見てみたいよ。そして、文化勲章もらっちゃってください。

勘九郎さんも奮闘なさっていました。大河ドラマ出演のために身体を絞って小さくなっていましたが、相変わらずの切れの良い踊りは気持ちが良かった。『吉野山』は眼福でした。人でないものの妖気を纏った獣的な動き方が上手いですよね、勘九郎さんは。狐大好き。
こちらでは、玉様は可憐な静御前なのですよ。一部の中で、お姫様役から老け女形まで、この振り幅が凄い。そして、それを楽しんでいるという感じ。なんだかんだで一番余裕があったのは玉三郎さんでした。

もう遺児というのも憚られるほど立派になった中村屋の兄弟。新作に挑戦していくのも良いのですが、今月の芝居のように、古典をしっかりやって引き出しを増やしていって欲しいです。古典の魅力をしっかり今の観客に伝えられるようになってこその、歌舞伎の将来でもあると思いました。

追記。「宮島のだんまり」は、役者をカタログのように見せるという趣向が、歌舞伎臭くてとても面白いと思いました。花魁の六方って初めてみた!


2018年10月17日水曜日

2度目の「梅の栄」_第5回忠美恵会

13日は、我が松永忠美恵一門のお浚い会でした。

予告のとおり、会場は宮城県知事公館。明治時代の建物です。
もう、お座敷文化が壊滅している仙台あたりでは、長唄の演奏会などさせてくれる会場はなかなか無いのです。いつもお借りしている広瀬川沿いの市民センターはこの日、自前館のお祭りイベントで貸し出ししないと言われ、途方にくれた先生を尻目にこの会場を探しだしたのは、へへへ、虫六の手柄です(←つまり自分で自分を褒めている( ̄ー+ ̄))

お天気も良くて良かった。

ただ場所を貸していただくだけなので、会場作りも限られた時間内に自分たちでいたします。といっても、今年は忠美恵会の参加メンバーは3名。家の事情や健康問題などでお休み中の方々もいて寂しい限りです。そんなわけで若手(といっても50代)が中心になって家族・親族を動員してバタバタと。
「何人来るかなー、足りないんじゃないかな…」
「座布団、もっと前に出したら…」
「だめだめ! 」(←なるべく客席と距離をとりたい人の声)

本日の番組と曲解説。

東京から松の会の皆さまがご到着。貴賓室を控え室に使っていただきました。
「へー、知事さん使ってないの?」
「良い建物ですよね。庭もきれいねー」

貴賓室にセットアップされたお三味線。

そのころ、我が一門の控え室では…。
(いや、もう緊張するからこの部屋にいたくないのであった…)

本番前に、忠三郎先生に調弦していただいて準備完了!

あとはやるだけー。
虫六は番組最初の方で「梅の栄」を演奏しました。
実は、この曲は3年前の仙台でさせていただいた曲。覚えておられる方も少ないと思いますが、成長できているかどうかを、自分にも課せられておりました(;´▽`A``
でも、実家往復のため夏にお稽古できなかったので、自分の中にはやる前から敗北感があったのですが、なんとか挽回して仕上がったので、自分を追いつめるつもりでお友だちにお知らせしたら、たくさん聞きに来てくれて、嬉しいやら緊張するやら…。
足を運んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。

辞めるのは簡単だけど、細く長く続けていれば、苦しいときもこの楽器が心の支えになってくることもあるのかな。小さなお婆ちゃんになったときに、膝に三味線が乗っている人生はなかなか捨てたもんじゃないな、と思います。
いまが、いちばん細い時期なのかもしれないな…とも。

録音係を頼んだ家人Tに「ねー、私の写真撮っておいてくれました?」と尋ねたら、
「あー、忘れてました」と… ○|_| ̄ =3
(「ボーっと生きてんじゃねーよー」と5才児になりかけましたが、お休み返上で手伝いに来てくれたことを思い出し、ま、これも良しとするかと。)

松の会の皆さまの応援で、番組を立派にしていただき、姉弟子Nさんの「都風流」も良い出来で(舞台裏で聞きました)、殿をつとめた兄弟子Kさんの「二人椀久」(後見しながら聞きました)も見事に決まって、達成感のある会でした。
「二人椀久」…超難曲なんですけど、自分が弾くことあるんだろうか(遠い目)
忠三郎先生の『邦楽ばなし』やそのあとの『鏡獅子』の曲弾きもご馳走でした。

はあー、おわったー!
開放されて楽しげな表情の皆さまと、知事公館をあとにして、

卵酒が美味しい河原町の「築館や」さんで、るんるんのお食事会。

で、このあと、少人数で、断酒していた兄弟子Kさん行きつけのカラオケスナックにて、「昭和歌謡を後世に残す文化活動」に参加したんだけど、いやー、芸達者な方々の余興ほど面白いものはありませんですね。チャーミングすぎるこの人たち。
K江先生の『ひばりの佐渡情話』、…あまりにも絶品で耳福だった話は、もったいないので教えてあげない (/ー\*) 

2018年2月18日日曜日

玉・仁座のお軽・平右衛門に放心状態_二月歌舞伎座夜の部

「至芸」という言葉がありますね。七代目三津五郎の踊りであるとか、四代目竹本越路太夫の切り場語りであるとか、大成駒屋の女形であるとか、いまや言葉や映像や音源の記録でしか知ることができない名人たちの「至芸」というものに、とても憧れ、その時代に遅れたことをとても残念に思うことがあります。

今月の『仮名手本忠臣蔵』の七段目は、そんな風にのちの語り草になる名舞台だったと思うのです。自分の生きた時代で「至芸」を見ることができたと思えた、そんな玉三郎と仁左衛門のお軽・平右衛門でした。

今回の公演は、奇数日と偶数日とで配役が変わって、お軽=玉三郎(奇数)・菊之助(偶数)、平右衛門=仁左衛門(奇数)・海老蔵(偶数)となっていたせいで競争率が倍になり、また、出演者が多いため後援会が押さえてしまっていたのか、とにかくチケットが超がつく激戦でした。歌舞伎会の先行の売り出し日、一般会員に回って来る頃には、週末と千穐楽にはほとんど空きがなく、10時打ちしてやっと手に入れた席は、1等席ながら2階の東奥。ほとんどオペラグラスが手放せなかったね。

それでも、この舞台を生で観たことは、この先の自分の支えになるだろうと核を得たような気分です。


男女の関係の中でも、兄と妹がもつ独特の親密感というものがあります。艶々した嫌らしさや媚びがない、兄妹という関係の中だからこそ可愛さが引き立ってくる、そんな玉三郎のお軽に思わず惹きつけられました。
仁左衛門の平右衛門は、たぶん、小さい頃からやんちゃな兄で、けっこう不条理な乱暴なんかもかましていたに違いない。でも、妹は、そんな兄に対するあしらい方には慣れており、何よりお兄ちゃんのことは大好きで甘え方も知っている。また、兄も妹が可愛い…という、昨日今日できあがった関係じゃないという肚があり、お互いが転がし合うようなリラックスした演技に、ゆるゆると吸い込まれていくようでした。

「兄さん会いたかったー、会いたかったー」で、胸がキュンキュンしてしまいました。
お軽はお軽なりに、不安で寂しい日々を送っていたのだよねぇ。

でも、兄さんのことは大好きだけど、お軽の頭のなかは勘平さんでいっぱいなのでありますよ。ところがすでに実家では散々なことが起きていて、兄は、妹が気の毒でそれを口に出来ないでいるんだけど、ついにその死を告げてしまうと、これまでのリラックスした空気が一変して、お軽の息が止まる、長い長い間。この息に飲まれて、小屋全体がしーんと息を詰めました。全てが真っ白になったようだった。物音ひとつしなかった。

「間」というよりも、「呼吸」ですね。
会場全体が二人の役者の呼吸に支配されている感じでした。

そこからは、感情の大波小波が押し寄せてきて…急に血流が乱れましたね。なにしろ、思い出すのは11月の仁左衛門の勘平さんですよ。歌舞伎って面白いよねー。はぁはぁ。

幕が上がる頃には放心状態、これを絶品と言わずに、なんと表現したらいいのか。
気迫や迫力で魅せる舞台もありますが、この舞台は力みがない巧さが際立ちました。いつの間にか仮名手本の世界の扉が開いていたーという感じでした。

仁左衛門と玉三郎も、掛け合いを楽しんでやっているみたいでした。

白鸚の大きさのある懐深い由良之助も良かった。二人のことを思う滋味があり、大人を感じさせました。平右衛門、お軽それぞれの絡みの場面も良い感じでした。やっぱり全体に上出来の舞台でした。

当代染五郎君の力弥もとても似合っていました。
気品漂うルックス、所作の綺麗さは好ましいですし、この先、高麗屋の御曹司としてあんな役こんな役もやっていくんだろうと思うと楽しみなわけですが、早野勘平のリアル年齢32歳まであと20年と思うと、これについてはそれまで脳神経を健康に保てるのかと、自分のポテンシャルの方が不安ですよね。

新幸四郎の『熊谷陣屋』ももちろん良かった。
でも、1月の吉右衛門丈の富樫もそうだったらしいですが、今月の仁座・玉の舞台そのものが、幸四郎に対するまさにの餞(はなむけ)なんでしょうね。
先はもう少し長いかも知れないけれど、新幸四郎の円熟期まではたぶん観にいけるだろうと思うので、自分も観客としてもうちょっと成長していきたいものです。

高麗屋には、面白い芝居をたくさん作って欲しいし、また「至芸」と呼ばれる技に到達するまでがんばって欲しい。期待しています。

観劇日はちょうど節分で、『木挽町芝居前』の中で豆まきがありました。2階の隅にもまいてくださいまして、ゲットできました。縁起良し!今年も歌舞伎の神様、どうぞよろしくお願いします。


二月大歌舞伎 夜の部

一、一谷嫩軍記
熊谷陣屋(くまがいじんや)

熊谷次郎直実  染五郎改め幸四郎
熊谷妻相模  魁春
藤の方  雀右衛門
梶原平次景高  芝翫
亀井六郎  歌昇
片岡八郎  萬太郎
伊勢三郎  巳之助
駿河次郎  隼人
堤軍次  鴈治郎
白毫弥陀六  左團次
源義経  菊五郎

今井豊茂 作
二、壽三代歌舞伎賑ことほぐさんだいかぶきのにぎわい)
木挽町芝居前

木挽町座元 菊五郎
芝居茶屋亭主 仁左衛門
茶屋女房 玉三郎
男伊達 左團次 又五郎 鴈治郎 錦之助 松緑 海老蔵 彌十郎 芝翫 歌六
女伊達 魁春 時蔵 雀右衛門 孝太郎 梅枝 高麗蔵 友右衛門 東蔵 秀太郎
表方  廣太郎
役者  錦吾
高麗屋番頭  猿之助
町火消組頭  楽善
木挽町町年寄 我當
江戸奉行  梅玉
太夫元  吉右衛門
芸者  藤十郎

二代目松本白 鸚
十代目松本幸四郎 襲名披露口上
八代目市川染五郎

幸四郎改め白鸚
染五郎改め幸四郎
金太郎改め染五郎


三、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
祇園一力茶屋の場

大星由良之助  幸四郎改め白鸚
大星力弥  金太郎改め染五郎
赤垣源蔵  友右衛門
富森助右衛門  彌十郎
矢間重太郎  松江
斧九太夫  錦吾
〈奇数日〉 
遊女お軽   玉三郎
寺岡平右衛門 仁左衛門
  
〈偶数日〉 
遊女お軽   菊之助
寺岡平右衛門 海老蔵

2018年2月16日金曜日

高麗屋三代襲名は超豪華幕の内弁当のようだった_まずは二月歌舞伎座昼の部を幕見で

年明けの歌舞伎座は、高麗屋の三代襲名で話題持ちきりでした。テレビでも録画・再生が追いつかないほどに。しかし、うずうずする気持ちを1月はぐっと我慢した虫六…。

なぜって2月の夜の部に玉三郎・仁左衛門のお軽・平右衛門で『仮名手本忠臣蔵』の七段目がかかるという、聞き逃せない情報が入って来たからであります。
なんせね、交通費2万円かかりますから、演目は選ばねばならないのが地方在住者の現実であります。

で、「チケット取得ハードル高すぎ問題」とかいろいろありましたが、なんとか自力で確保して、3日(土)シャーロックママさんとご同伴でやってきました、今年はじめての歌舞伎座へ!

待たせたなー!木挽町。

今回ゲットしてあったチケットは夜の部のみ(松竹さん、襲名のたびに2000円ずつ値上げするのやめてくださーい!頼みますよぅ!)でも、せっかくなので昼の部は幕見でみようということになり、売り出し1時間前に並ぶ計画で、早朝の新幹線に乗り、東京に着いたのですが、すでに50人ほどの列ができていました。さすが三代襲名、混んでますね。でも、なんとか座れそうだよ。

ちょっと遠いけど、十分十分。
東っ方に席を陣取ったけれど、両花道でした。もうちょっと中央寄りにすべきだったかな?まぁ、いずれ七三までしか見えませんけども。
それにしても祝い幕が草間弥生って、高麗屋とどういう関係なのかな?
(…という疑問は、2月17日(土)のSWITCHインタビュー(NHK)を見れば分かるらしいよ。)

歌舞伎座百三十年
松本幸四郎改め 二代目 松本白 鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎 襲名披露
松本金太郎改め 八代目 市川染五郎
二月大歌舞伎

一、春駒祝高(はるこまいわいのこうらい)

工藤祐経  梅玉
曽我五郎  芝翫
大磯の虎  梅枝
喜瀬川亀鶴 梅丸
化粧坂少将 米吉
曽我十郎  錦之助
小林朝比奈 又五郎

二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣/奥殿


一條大蔵長成  染五郎改め幸四郎
常盤御前  時蔵
お京      孝太郎
吉岡鬼次郎   松緑
茶亭与市    橘三郎
女小姓     宗之助
八剣勘解由   歌六
鳴瀬      秀太郎

三、歌舞伎十八番の内 (しばらく)

鎌倉権五郎  海老蔵
鹿島入道震斎 鴈治郎
那須九郎妹照葉 孝太郎
成田五郎    右團次
小金丸行綱   彦三郎
加茂三郎    坂東亀蔵
桂の前     尾上右近
大江正広    廣松
埴生五郎    弘太郎
荏原八郎    九團次
足柄左衛門   男女蔵
東金太郎    市蔵
局常盤木    齊入
宝木蔵人    家橘
加茂次郎    友右衛門
清原武衡    左團次

北條秀司作・演出
四、井伊大老(いいたいろう)

井伊大老     吉右衛門
お静の方     雀右衛門
昌子の方     高麗蔵
宇津木六之丞   吉之丞
老女雲の井    歌女之丞
仙英禅師     歌六
長野主膳     梅玉


全体にお祝いに相応しい絵面も華やかな演目が揃いました。
っていうか、さすが襲名公演ともなると4演目!看板俳優が勢揃いで、“幕の内弁当”を通りこして“お節四段重”みたいです。

曽我ものの『春駒祝高麗』は、ご贔屓の米吉と梅丸が可愛かった。梅玉の工藤祐経は安定感ありますね。最近、梅玉さんの力まない演技が好みの虫六です。

つづいての『一條大蔵譚』は新幸四郎の出し物です。三代襲名だけど、昼の部は幸四郎一人だけの出演で奮闘です。時蔵、孝太郎、秀太郎という女形の重量感のなかで、幸四郎がちょっと小さくみえました。小顔のせい?このパターンだと個人的には仁左衛門を据えたいところですが…ね、(>ω<)ゞ。
一條大蔵長成の公家の気品を残しての前段の作り阿呆のくだり、そして、正体を見せてからの切れの良い動きの差が面白かったかな。でも、あえて言わせていただくと個人的にはこのお芝居そんなに面白いと思って見たことがなかったのでした。

新幸四郎は、どうしてこの演目を選んだのかな?などとちょっと考えてしまいました。

1月の『勧進帳』は高麗屋として外せないのはよく分かる(実際、すごい舞台だったらしい。見てないけど)。『菅原伝授手習鑑』も『熊谷陣屋』も良しとしよう。

でも2月の昼の部は、三代のうち幸四郎しか出演していないのだから、染五郎時代の総決算のような、彼が作り出した新作の演目を持って来ても良かったんじゃないかな??などと、妄想してしまいました。18代中村勘三郎が『野田版 研辰の打たれ』を襲名で掛けたみたいにね。

「新幸四郎、襲名で『阿弖流為』!」なーんて選択肢はなかったのかしらん。


でも、大幹部総出演の顔ぶれを拝見すると、昼の部通しで『阿弖流為』のセンはないかー?吉右衛門さんに藤原稀継、雀右衛門さんに御霊御前、どうすか?って、言えない…です、かね。大人は考えないね。(ごめんなさーい、放言でした。)そもそも、中村屋兄弟は2月は博多で公演でしたね。

夢かぁー。

シャーママさんご贔屓の海老蔵は『暫』で、寿ぎながら登場。眼福眼福。でも4階から見ていると、鎌倉権五郎より小金丸行綱の方が、声がよく通っていたよ。

最後の『井伊大老』は、途中ちょっぴり気が抜けました。このところ疲れが溜まっていたのよ。また、なんだかんだで幕見の4幕通しは疲れますね。
ぼやっとしていたら、吉右衛門の井伊直弼が、側室お静の雀右衛門を相手に「…鬼畜とののしられ、後の歴史に汚名を残すことになるのだ」とかなんとか、恨みがましい悔しさを口にしている場面で、へっと我に返り、なんか男の人が書いた脚本なんだな(それを言ったら全部ですけども)と、あぁこれ暗殺前夜の話だったのかと。
でも、ぼやっとする前の方でも側室が正室に悋気して、そんな気持ちをお坊さんに話したら「あなたは可愛い人だ」とか言われていて、…男女の関係の描き方も男目線だなぁと、いろいろ違和感でした。

やれやれ、舞台が遠いせいでか、いつもより集中力を欠いてしまいました。まだまだ修行が足りない虫六でした。

が!いよいよ、夜の部です。うふふ。


【おまけ】

ちなみに、こちらは本当の襲名記念幕の内弁当。2000円とお高めでしたが、3日はまだ生写真がなかったので、何か記念に…と包み紙ほしさに買っちゃいました。おかず一つ一つに仕事がしてあって、とっても美味しゅうございました!!

2018年1月21日日曜日

チンチリレンでお弾き初め

虫六、今年のお三味線初稽古は15日(月)でした。

じつは正月13日(日)に一門の新年会があり、その席で、兄弟子Kさんが今度挑戦する『二人椀久』がシネマ歌舞伎ではじまったと言う話になり、先生が「明日見に行こう」という流れから、虫六がチケットをネット予約することになり、姉弟子Nさんともども映画を観にいくことになり…(一門のツアコン係なんで)で、すっかりはまってしまったのが、玉三郎丈の『京鹿子娘道成寺』。

映画は、玉三郎丈が若手4人(勘九郎・七之助・梅枝・児太郎)をひっぱっての『京鹿子五人娘道成寺』なんですけども。舞台映像としても記録価値あるものですが、それぞれが踊るパートの合間にインタビューが挿入されて、とっても見応えのあるドキュメンタリー映画になっていました。正直、この演目が歌舞伎座でかかった時は「五人ってどおよ?」なんて不遜にも思って食指が働きませんでしたが、こんなに華やかで面白い舞台だったなら見に行けば良かったなーなんて今さら思ってしまった。

前週末にNHK「にっぽんの芸能」で玉三郎の女形を解説していくシリーズが始まり、タイアップしたように『京鹿子娘道成寺』を取り上げていたので、ちょっと予習していたこともあり、この曲がいかに奥深く面白い作品か、また難しさもわかり興味は満タン。その玉三郎の深い解釈のもとに、花子が一人にも五人にも見える演出ができたんだなと、映画の途中でなんども「うーん」って唸ってしまいましたよ。

また、玉三郎がご自身の芸を伝えていく最良の方法として「同じ舞台に立つこと」を選んだことの良い意味での合理性。どんなときでも頭が涼しい方だなと感じます。そして、それぞれの経験する質や掴み方は違うのかもしれないけれど、共演した若手全員が千秋楽が来るのを惜しんでいた濃密な時間が、フィルムに映し出されていました。



映画では、役者がいったん引っ込んで、舞台裏で汗を拭いてもらったりして拵えを変えている珍しい様子が収められていましたが、このとき表舞台では、地方の皆さんが「娘道成寺の合方」(チンチリレンと呼ばれます)という早弾きの演奏で間を持たせます。お三味線好きとしては、ここが聞き逃せないところなのです。特に玉三郎丈の踊りには杵屋勝国師匠が立て三味線の楽団がほぼ必ず付きますので、楽しみ2倍ですね。

…で、みんなで「はぁあ」と満足してこの日は帰ったわけなんですが、これは翌日の初稽古はチンチリレンがくるな…と予測できたので、ちょっと復習して備えましたら、案の定でしたね。

ン年前にお稽古つけていただいたのでしたが、なにしろ久々だったので、いろいろ手が動かず…日頃の練習不足は実感しつつ、それでも昨日練習しておいて良かった。(汗)
お稽古初日から、「チンチリレン」の鬼稽古でしたー(@Д@;

今年もがんばるぞー。


ちなみに…
同時上映『二人椀久』は解説なしの舞台映像。
三味線だけでも演奏される名曲ですが、玉三郎丈の踊りになると「お茶の口切り」からのところ別の世界の扉を開けてもらうようでゾクゾクしました。そしてこちらの演奏ももちろん杵勝楽団です!

2017年12月31日日曜日

仁左衛門の早野勘平で2017年の歌舞伎見納め_歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』

11月の「ワンピース」昼公演終了後、ソッコーで向かった先、それは木挽町の歌舞伎座です。


吉例顔見世大歌舞伎
  平成29年11月1日(水)~25日(土)

【夜の部】
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
  五段目  山崎街道鉄砲渡しの場
       同   二つ玉の場
  六段目  与市兵衛内勘平腹切の場

早野勘平  仁左衛門
女房おかる 孝太郎
斧定九郎  染五郎
千崎弥五郎 彦三郎
判人源六  松之助
母おかや  吉弥
不破数右衛門 彌十郎
一文字屋お才 秀太郎

恋飛脚大和往来
二、新口村(にのくちむら)

亀屋忠兵衛 藤十郎
傾城梅川  扇雀
孫右衛門  歌六

真山青果 作 真山美保 演出
元禄忠臣蔵
三、大石最後の一日(おおいしさいごのいちにち)

大石内蔵助   幸四郎
磯貝十郎左衛門 染五郎
おみの     児太郎
細川内記    金太郎
吉田忠左衛門  錦吾
赤埴源蔵    桂三
片岡源五右衛門 由次郎
久永内記    友右衛門
堀内伝右衛門  彌十郎
荒木十左衛門  仁左衛門

仁左衛門が勘平をする…となれば、見逃したくはないですよね。というわけで、幕見では満足できず花道脇をゲットしておりました。へへへ。

10月に国立劇場の売店で、十三世仁左衛門の芸談集『国立劇場・歌舞伎の型1 仮名手本忠臣蔵』を買ったので、五段目・六段目のところを予習していきました。

例えば、五段目は、「二つ玉」というのは二つ分の弾薬を詰めた強薬という意味で、花道に出て来たからもう一発撃つのとは違うとか、勘平が定九郎から財布を取る段取りの違いとか、仲蔵型定九郎(この度は染五郎が好演!)の衣装が黒羽二重の場合と黒縮緬の場合があるとか、いろいろあるらしいのです。囃子方にも、上方と東京では使い方が違うところがいろいろあって、興味深い対談でした。
片岡家は、東京と大阪と両方で活躍したお家なので、十三世は両方の良いところをミックスして独自の型を作ったみたいです。五段目の型は五代目の菊五郎さんが作ったものらしいのですが、「大阪型ではこうだけど、どっちがいい悪いというより、論の余地なく東京の型がいい」とかいう話を読むと、必ずしも上方の型の伝承だけにこだわっている分けでなく、演技本位で良い表現を求めているんだということが感じられました。

当代仁左衛門さんの型は、浅黄の紋付きを着たりするので音羽屋さんの型と思われがちとのことですが、実はだいぶ違っていて、基本は父・十三世仁左衛門の型に自分で解釈を加え、さらに音羽屋さん、十五代目(市村羽左衛門←美貌で知られた二枚目役者)の上方の型も踏襲しているとのことでした。→「ようこそ歌舞伎へ 仮名手本忠臣蔵 5段目・6段目」
筋書きを読んだら、「自分の型は十五代目の型です」って書いてありましたが、掲載できる文字数の関係でか、文脈をだいぶ削られているんでしょうね。

とはいえ、予習した割には、虫六の節穴の目には、上方と東京の型の違いとか意識してみるまでには利きませんでした(爆)定九郎の着物の生地の違いさえ、目を皿にして、双眼鏡で覗いてみたけれど、…わかりませんでした。_ノフ○ 
やっぱりねぇ、もっと沢山いろいろな役者の演技を見る経験、お芝居以外の教養があれば、もっともっと深い理解ができるし、面白さも倍増する世界なんだと、またまた思い知らされもしましたが…。

だから、満足出来ないかというと、そんなことは全くないのが歌舞伎の面白いところです。

もうね、ただ仁左衛門勘平の美しさみずみずしさに参った上に、また、その堪える姿が痛々しくて、演技に飲み込まれて息するのも忘れてました。(*´Д`*) 

仁左衛門さんは肚で芝居を持って行く役者さんなので、(もしかして舅殿を殺してしまったのか…)からの息を詰めた演技が凄まじく、飲み込まれてしまいました。

六段目、吉弥さんの姑・おかやも良かったっていうとなんだけど、救えるところがなくて憐れでした。内側に向かっていく疑念と疑念、勘平・おかやの不条理と責めのループ。そして勘平が深くはまっていく情けなさと絶望。そして、切腹…。

それにしても、六段目って本当にブラッシュアップされたお芝居なんだなと、つくづく感嘆しました。「色に耽ったばっかりに…」で、腹を刺した自分の血糊がついた手で自嘲的にほっぺたを叩く(つまり、白塗りの顔に赤い血糊をつける)場面、いったいいつのどの役者が考えたのでしょう。天才です。
元の文楽人形では表現しえない演技と思うので、歌舞伎役者がつけたのだと想像するのですが、筋書きにも、ちょっと見た範囲の資料にもなくて、突き止めたい欲求に駆られました。(これは、来年の宿題になってしまったのですが、知っている方にお聞きしたいところです)

「大石最後の一日」も、幸四郎・内蔵助が金太郞・細川内記に「人はただ初一念を忘れるな」と話す場面が印象にのこりました。年があければ、高麗屋の襲名公演が始まります。幸四郎さんはこういう役はとても良いですね。最終の新幹線にぎりぎりだったので、最後の幕は扉近くに移動して後ろから仁左衛門さんの荒木十左衛門を拝見。慌ただしく劇場をさりました。

****

気がつけば、今年は仁左衛門さんの舞台を沢山観ることができて、眼福な1年でした。歌舞伎の神様に感謝。


【メモ】2017年の観劇ベスト10(◆は仁左衛門さん出演)

盟三五大切」◆(7月大阪松竹座)←ダントツ!
お祭り」◆「身替座禅」◆(4月金丸座)
桜の森の満開の下」(8月歌舞伎座)
仮名手本忠臣蔵 五段目・六段目」◆(11月歌舞伎座)
スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」(10月・11月新橋演舞場)
霊験亀山鉾 ー亀山の仇討ー」◆(10月国立劇場)
「黒塚」(2月新橋演舞場)
名君行状記」「義経千本桜 渡海屋・大物浦」◆(3月歌舞伎座)
伊勢音頭恋寝刃」(4月歌舞伎座)
マハーバーラタ戦記」(10月歌舞伎座)

(番外)
門出二人桃太郎」(2月歌舞伎座)
長編ドキュメンタリー映画「歌舞伎役者 片岡仁左衛門」◆(5月仙台・緑水庵)



2017年12月29日金曜日

スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』_波乱と感動の航海

いろいろ忙しくて、ゆっくりブログを書いている暇がない(ホントに無い!)日々ですが、今年のうちにこれだけは書き留めておきたいという思いで記す日記。その1。

というわけで、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』のことを書いておこうと思うのです。


平成27年の『ワンピース』初演は新橋演舞場で拝見して、これはもう衝撃で、その時も歌舞伎史の事件だと思っておりました。そのあと、シネマ歌舞伎にもなり、それを見た虫六子も夢中になり、「再演したら絶対見たい!」とせがまれて、「よし!なんとしてもチケットゲットしような!!」と2倍増しで気合いを入れて、今年の10月からの再演を待ちかねておりました。
そして万難排して10月の公演を2枚ゲットし、11月に仕事がありそうだったので休日くっつけて尾上右近さん主演によるマチネ「麦わらの挑戦」も見る気満々ですべての予定を整えておりました。

巳之助さんの魅力を見いだした初演、そのあと、猿之助はダブルキャストで巡業に付き合わせて、実力をつけたように、今度の公演では右近さんに大きなチャンスの機会を与えていました。それが「麦わらの挑戦」。

右近さんといえば、虫六の印象では、かの六代目菊五郎のDNAをいただきながら(*1)、音羽屋劇団の中ではまだ若いせいもあったけど、ちょい役の役回りで、お正月の劇場中継でも楽屋で他の御曹司にいじられていて、親が役者じゃないとなかなか大変なのかなぁ…などと思っていたら、そのうち「研の会」という自主公演などにも挑戦しはじめ、これは見どころあるなと思っておりました。研究熱心なのもブログなどに溢れていましたしね。

(*1)六代目にはお嬢さんがおふたりいて、長女の久枝さんは十七代目中村勘三郎の妻となり、十八代目中村勘三郎の母となり、次女・多喜子さんは六代目清元延壽太夫の妻となり、当代の清元延寿太夫を生みました。その次男は二代目尾上右近さんにあたるわけです。個人的には、延寿太夫さんと七之助さんって似てるから六代目のルックスなのかな?とか思ってましたが。

猿之助(ヨダイメ)はさすがに慧眼あるなぁと、その抜擢にも舌を巻いていたのですが…、それが開演まもなくとんでもない大事故がおきて、猿之助がまさかの休演となり、奇しくも猿之助が準備していたマチネ公演の体制で2ヶ月という展開になってしまいました。傷みや不安や忸怩たる思いの中で、代役での航海をさせることを即決し、船を降りた猿之助。本当にすごい。

そんなわけで、まずは虫六子と見に行った10月の公演。すでに25日になっていたので、やっと来れた!って感じでした。



幕開きのナレーションで、もう涙腺崩壊。役者がひとりも出てないのに、なんで泣きたくなってしまうんだ…と思ったけど、すみません、役者1人でてました。ナレーションは勘九郎さんでした。
でもこのナレーションがかかっている時に幕に投影された言葉が、猿之助のメッセージそのものに響いてくる。「悔いのないように生きる」。それは歌舞伎の未来に対して、考えられることを全部ぶつけてみるぞって言っているようで、その姿として「ワンピース」という作品があるって言われているようで、結果的に怪我のリスクがあったかもしれなかったけど後悔なんかないって言われているようで、胸の底まで届きました。どこかにあの全文のせてくれないかな。

それにしても、猿之助の不在を任された若手(右近、巳之助、隼人、新吾)の熱演は凄まじいものでした。立ちまわりや本水のシーン、初演の時を上回る気迫。
ナミちゃんとサンダー・ソニアの役は春猿さんがやって適役だったけど、新派に移られたので、あの役どうなるんだ?と思っていました。でも、新吾さんのナミもサンダー・ソニアもビューティフルで最高でした。

浅野和之さんの達者な演技も健在でやっぱり好きだわ〜と思ったし、初めて見る平岳大エースも格好良かったね。私は福士エース贔屓でしたが、平エースも、はいステキです。

もちろん若手だけじゃないよ、この船に乗っていた役者全員が凄いエネルギーを放出していたし、たぶん、表に見えていない裏方の皆さんも一丸になっていたと思うし、なにより、会場の雰囲気が違ってた。やっぱり凄い芝居に遭遇してしまったんだなと、身震いがする体験でした。

商売に乗せられている感が否めないけど、やっぱりノリを満喫しなくっちゃと、ファーファータイム用にタンバリンをひとり1個づつ購入。右近ルフィー宙乗りで、「TETOTE」がはじまり、来ましたー!で、2階席も総立ち縦ノリ。出演者のみなさんが2階・3階にも姿を見せてタンバリン交換してました。すでにリピーターの人たちがメッセージ付きで準備していたりして、上級者がいるものです。(総数10回くらい見にいった方もいるらしいよ。そこまで惹きつけるとはやっぱり凄い芝居だよね。)

最後は、teamワンピースが全員で奈落に下がるエンディング、なんだか、じんとしました。



新星や彗星やキラキラしてるお芝居が満天で、胸がいっぱいになったけど、やっぱり四代目は太陽なんだなと。これが来年でも再来年でも私は待ちますけど、猿之助が真ん中にいるこの芝居が絶対に観たいと、心が何度も立ち上がって、また胸がいっぱいになりました。

猿之助さん、元通りの身体になって舞台に帰ってこられること、心よりお祈り申し上げます。

平成29年10月6日(金)~11月25日(土)
尾田栄一郎 原作 横内謙介 脚本・演出
市川猿之助 演出 市川猿翁 スーパーバイザー
スーパー歌舞伎II(セカンド)ワンピース

ルフィ/ハンコック        尾上 右近 ※ 
白ひげ              市川 右團次
ゾロ/ボン・クレー/スクアード  坂東 巳之助
サンジ/イナズマ/マルコ     中村 隼人 ※
ナミ/サンダーソニア/サディちゃん  坂東 新悟 ※
アバロ・ピサロ          市川 寿猿
チョッパー            市川 右近 *
はっちゃん/戦桃丸        市川 弘太郎
ベラドンナ            坂東 竹三郎
ニョン婆             市川 笑三郎
ジンベエ/黒ひげ         市川 猿弥 
ニコ・ロビン/マリーゴールド   市川 笑也 
マゼラン             市川 男女蔵
つる               市川 門之助

エース/シャンクス        平 岳大 
ブルック/赤犬サカズキ      嘉島 典俊 
イワンコフ/センゴク       浅野 和之 

※市川猿之助休演につき、代役にて上演。


終演後、この日2回目観劇のあややちゃんと合流して銀座シックスの大食堂で、3人でいろいろ反芻しながらご飯を食べて帰りました。芝居があがったあとの食事はいつもさまようことが多いけど、遅い時間でもやっててここは便利だわ。



実は、新橋演舞場に行く前にも銀座シックスの蔦谷書店で時間を潰したのですが、この店舗はアートに特化した品揃えで、虫六的にストライクでした。伝統芸能系の書籍もたくさんありました。高額なのできっと図書館も入れてくれないであろう篠山紀信先生が7月に出された写真集『KABUKI by KISHIN』が何げにおいてあり、全ページ拝見。さすがに見応えありました。最後のページは18代勘三郎さんの写真で、写真家の思いが伝わってきてグッと息が詰りましたよ。これを見ただけで銀座にきた甲斐があったなーと、実はお芝居見る前に満腹になり、劇場へ足を運んだのでした。

そして、11月。
本来、「麦わらの挑戦」であった回で、出張帰りにスーツのまま足を運んだのですが。
右近さんをはじめ、全体にとても余裕があって安心してみることができ、成長しているんだなぁと思いました。抜かりなくカバンの奥にタンバリンを隠し持っていたので、段取りどおり二幕目で取り出してファーファー縦ノリしたら、なんだかとても発散しました。

ちなみにこの日のナレーションは七之助さんの声でした。(たぶん)

後半なので筋書きに写真入りましたか?って聞いたら、「結局、今回は写真は入れないことになったんです」とのこと。それで、前回まだなかった四代目のルフィとハンコックの写真を購入。実はこの日、このあと歌舞伎座で仁左衛門さんの勘平もみたのですが、両方で生写真を買ってしまったのでお小遣い使いきってしまいました。

2017年11月13日月曜日

国立劇場10月歌舞伎『通し狂言 霊験亀山鉾』

今年は仁左衛門丈の「悪の華」が乱れ咲きなのでございます。

夏の大阪松竹座に仁左衛門丈の『盟三五大切』を拝見しに参上したことは、以前に書きましたが、10月には国立劇場にてこれまた悪役が主人公の南北もので『通し狂言 霊験亀山鉾』が上演されました。(あう、1ト月もライムラグ…忝ない)

…というので、家元の会終了後、休日を虫六子のアパートにしつこく滞在して、初日の舞台をみて帰る作戦にでた虫六でございました。まあ、がんばった自分へのご褒美に、仁左衛門の極上注入ってことで…ちょっと過分なご褒美かも知れないけれども。


四世鶴屋南北=作 奈河彰輔=監修 国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 霊験亀山鉾れいげんかめやまほこ)― 亀山の仇討 ― 四幕九場

序  幕 第一場 甲州石和宿棒鼻の場
      第二場 同 石和河原仇討の場
      第三場 播州明石網町機屋の場
二幕目 第一場 駿州弥勒町丹波屋の場
      第二場 同 安倍川返り討の場
      第三場 同 中島村入口の場
      第四場 同    焼場の場
三幕目       播州明石機屋の場
大 詰        勢州亀山祭敵討の場



(出演)
藤田水右衛門  
古手屋八郎兵衛    片岡 仁左衛門
 実ハ隠亡の八郎兵衛
大岸頼母      中村 歌  六
石井兵介・下部袖助  中村 又 五 郎
石井源之丞     中村 錦 之 助
源之丞女房お松    片岡 孝 太 郎
若党轟金六     中村 歌  昇
大岸主税      中村 橋 之 助
石井家乳母おなみ   中村 梅  花
藤田卜庵・縮商人才兵衛  片岡 松 之 助
丹波屋おりき    上村 吉  弥
掛塚官兵衛・仏作介  坂東 彌 十 郎
芸者おつま     中村 雀右衛門
石井後室貞林尼   片岡 秀 太 郎
                    ほか

「亀山の仇討」の世界に、通称「鰻谷」と呼ばれる「お妻八郎兵衛」の世界が綯い交ぜにになっている構造だそうで、この度、仁左衛門が演じるのは、敵役の藤田水右衛門と、その水右衛門に瓜二つの隠亡・八郎兵衛の二役。

ニヒルな黒光彩を放つ藤田水右衛門は、初っぱなから返討ちにつぐ返討ちで、それも徹底的にキッタナイ手を使って無残に殺ってしまう、文字通り冷酷非道な冷血漢。何かに水右衛門を色悪と紹介しているのを読んでから観にいったのでしたが、こりゃ実悪って役じゃないのぉ−、360度悪い奴だよ〜と思っていたら、あとで、長谷部浩さんが劇評で「仁左衛門が演じると実悪の水右衛門に色悪の魅力が加わる。」と書いているのを読んで、(その通り!)と膝を打ちました。なんだかんだで、一番麗しいのは役者としての仁左衛門なのですね、で納得。

「錦絵のような」と仁左衛門が会見で話してましたが、本水の殺しの場、だんまりの勢揃い、確かに絵面にこだわった上等美しい舞台でした。

見せ場を上げれば指が足りませんが、焼場の場、八郎兵衛の草井戸の中に仰向けバッタリからの、棺桶破りの早替わり。涼しいどころか冷たいオーラを纏っての水右衛門の登場の場面。役者の年齢のことなど言うは野暮でしょうけど、超人としか表現できない、仁左衛門の身体性。

隠亡(=おんぼう)とは死者の火葬や埋葬をした墓守のことで、江戸時代は賤民身分の扱いでした。そんなわけで、八郎兵衛は何か悪事をやらかしてそんな身分に身を落とした人物のようなのね。罪人の印の腕の彫り物隠していたしね。どちらかと言えば、八郎兵衛の方が「色悪」に当たる役どころでしょうか。ちょっと鬢に唾をつけて髪を整え、揚屋に上がる場面などは色っぽいのに、おつまに愛想尽かしを食らった後の「覚えていろよ」の声色はドスが効いてて震え上がりました。
演出では、この場面のすぐ後で、おつまが手紙をしたためるところの背景に流れる
 〽︎憂き事に、夜半も鳴くなる時鳥…
の独吟が全く綺麗な旋律でウットリでした。
今回の登場人物では、吉弥さんのおりきがとても良かった。

でも、全体には脇の役者さんにはまだかっちりセリフが入っていない方などもいて、ちょっと間が狂ってしまったり…。せっかくの仁左衛門の完璧な熱演に水を差されたところなどもあって、(おいおい)でしたが、初日ってこういうものなのかな?

東京住まいなら、何度か足を運んで舞台の変化を楽しんだりもできるのでしょうが、鄙の都の住民である虫六には出来ない技なんですが…、なぜかこのお芝居は2回みるチャンスがありました。チケット売り出しの日に参戦できない可能性があったので、この芝居だけはどうしても観たいと思っていたので、保険にイープラスの先行予約を押さえていたのです。そして、この日も休みをとれたので来ちゃいましたよ。


イープラス、いろいろ特典がありまして、お弁当やら(普段は借りない)イヤホンガイドやら。(筋書きは前回買ったやつです)サービスいいのね。
(でも、後ろの方に劇場側で発売した席とダブルブッキングがあったようで、仔細は分からないけどトラブルになってました。↓選りに選ってこんな日に劇場は焦ったでしょうね。)

というのは、なんとこの日は堀向こうにお住まいの両陛下がお出ましになる展覧芝居の日だったのでした。もちろん偶然です。

第二幕「焼き場の場」をご覧になり一旦ご退場されたので、(えー、これだけ観てお帰りに?それはないでしょー!)と思ったら、さすがにもう一度お出ましになり、大詰めまでご覧になりました。会場の皆さんの拍手に手を振って応えられて、なんだか一体感。

随行の方も相当たくさんいて、大詰めの最初に上手舞台側から報道の三脚やらカメラが何台か立ったけど、ものの1〜2分で消えました。きっと細かく決められているんだろうな。
それにしてもやんごとなきお立場とはいえご窮屈でしょうね。ご退位されたあかつきには、好きな芝居ならたっぷり通しでご覧いただけますように。

そのせいとは言いませんが、この日の役者さんたちは初日にくらべて緊張感がありました。仁左衛門さんは相変わらず完璧でしたが。

両陛下に、胎児殺しをみせる仁左衛門。
両陛下に、本水の中の立ちまわりをみせる仁左衛門。
両陛下に、殺した人の数を指折ってみせる仁左衛門。
両陛下に、井戸に逆さま落ちからの早替わりで棺桶破って登場をみせる仁左衛門。
…役者だからこその冥利ですよね。

そして、最後は幕があがったままの柝で、からっと一座膝を折っての「本日はこれぎりー」という締め方、大好きです。夢から覚めるようで。

終演後に会場を出たら、黒塗りが何台も待っていて、ものものしいことになってました。
が、お客さんも陛下の出待ちでなかなか帰ろうとしないのね。
このころ、舞台を終えた仁左衛門さんは化粧を落とさず陛下と歓談されていたらしいです。今月の通し狂言をやりきって、何日もおかず歌舞伎座で早野勘平をやるというお話をして仰天されたとか…。やっぱり超人ですかね。

2017年10月23日月曜日

10月歌舞伎座『極付印度伝マハーバーラタ戦記』

家元の会にN姐さんが聞きにきてくださり、歌舞伎座にかかる『極付印度伝マハーバーラタ戦記』のチケットがまだ3階席に空きがある…という話になり、虫六的には今月は悪の華(国立劇場『霊験亀山鉾』)と『ワンピース』があるので優先順位低めでしたが、3階なら見に行ってみようと盛り上がり、2日目の舞台を観にいきました。

3階A席のチケットは歌舞伎会のゴールド会員さまに先買いされるので、虫六が旅費を掛けても観たいと思うような演目はなかなかゲットできず、あまりこの席で観るチャンスはありません。また「旅費掛けるくらいなら花道脇で見たい」と思ってしまうのが人情でございましょ。
新歌舞伎座の3階席、けっこう見通しが良いです。1階の高い席で前の人の頭が邪魔になるところよりも、ストレスがないかも…。


新作歌舞伎『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』

序幕 神々の場所より 大詰 戦場まで

迦楼奈(かるな)/シヴァ神    菊之助 
汲手姫(くんてぃひめ)      時蔵 
帝釈天(たいしゃくてん)     鴈治郎 
鶴妖朶王女(づるようだおうじょ) 七之助 
百合守良王子(ゆりしゅらおうじ)/多聞天(たもんてん) 彦三郎 
風韋摩王子(びーまおうじ)    坂東亀蔵 
阿龍樹雷王子(あるじゅらおうじ)/梵天(ぼんてん)  松也 
汲手姫(くんてぃひめ)/森鬼飛(しきんび)      梅枝 
納倉王子(なくらおうじ)/我斗風鬼写(がとうきちゃ) 萬太郎 
沙羽出葉王子(さはでばおうじ)  種之助 
弗機美姫(どるはたびひめ)    児太郎 
森鬼獏(しきんば)       菊市郎 
拉南(らーな)         橘太郎 
道不奢早無王子(どうふしゃさなおうじ) 片岡亀蔵
修験者破流可判(はるかばん)  権十郎 
亜照楽多(あでぃらた)     秀調 
羅陀(らーだー)        萬次郎 
弗機王(どるはたおう)/行者   團蔵 
大黒天(だいこくてん)     楽善
太陽神(たいようしん)     左團次 
那羅延天(ならえんてん)/仙人久理修那(くりしゅな) 菊五郎 

パンフレット買いましたけど、役名が難しくて漢字もふりがなも頭に入りませんです。
(||li`ω゚∞)
…が、観たらとても完成度高いし、分かりやすいし、面白かった。なにしろ急に行ったものだから予備知識なかったので、いい意味で激しく予想を裏切られました。

世界三大叙事詩と言われる有名な複雑な世界をよくぞ!と分かりやすい脚本(脚本は青木豪、演出は宮城 聰)。歌舞伎ではお馴染みのお家騒動がベースで、古代神話の突飛な展開あり、妖怪変化、立ち回り、道行…あり、歌舞伎の寸法に収まってて嬉しくなりました。床には竹本の前にインド打楽器囃子。木琴の音が面白かったけど、これはインド楽器なのかな?シタールかと思って双眼鏡で覗いたら浄瑠璃の三味線方が演奏してて仰天しました!

後で知ったのですが、あのインド囃子はインドの楽器というよりも、アフリカや南米の楽器を使っていたそうです。(歌舞伎美人『マハーバーラタ戦記』特設ページ音楽はどうなる?)←こういうお話は筋書きに載っけて欲しいよね。

打楽器囃子の生演奏やシタール風三味線にも仰天したけど、浄瑠璃も面白いこと語ってました。当たり前だですが、長唄も黒御簾も新曲なんですよね。新作流行の昨今、地方さんや囃子方も相当がんばってる!踊りもインド舞踊チックな不思議な振付けが楽しい。丁寧に時間をかけて造りあげている印象で、好感をもちました。


冒頭に登場するインドの神様方の衣装がキンキラキンで少々鼻白みましたが、下界に場面が移ったら、皆さま着物姿(綯い交ぜ…笑)、額に赤ポチついてるのがインドの印。
神々が愉快がって演じている感じ、先だってのたぬき会の悪ふざけモードは、このノリだったのか?!となんだか納得しました。

さて、音羽屋・萬屋に交じって際立った存在感を示したのは七之助でした。
七之助の鶴妖朶(ツルヨウダ)は、気品と仇な迫力が矛盾なく混在していて、打ち掛けの中に着た黒無地がカッコイイことこの上なしです。立ち回りも上手いし、それでいて適役なのに感情移入したくなる可愛いさもある。
もう、このスケールの役をこなせる女形は七之助だけですね。8月の夜長姫で「七之助化けた!」と口走ってしまいましたが、やっぱり良くなってるね。

松也の阿龍樹雷(アルジュラ)王子も良かったです。伸び盛りの役者を観るのは爽快です。



2017年10月15日日曜日

松永忠五郎喜寿記念・松永忠三郎襲名記念演奏会_2017年9月30日

泣いても笑って本番はやってくるってことで、翌日(9月30日)はいよいよ松永忠五郎喜寿記念・松永忠三郎襲名記念演奏会でありました。

国立劇場小劇場での演奏会は、家元の古稀記念鉄九郎師匠師籍30周年記念、につづいて3回目となります。家元、直矢さん、誠におめでとうございます。

我一門『太鼓の曲』の出演時間は、早め5番目の11時40分。緊張している余裕すらありません。
いろいろご挨拶などして、楽屋入り。朝、着物を着付けるのに予定外に時間がかかってしまい、本当はホテルで昨日不安だったところをお浚いしていきたかったけど、それができなかったので、楽屋でちょっと確認と思っていたら、舞台近くの楽屋なのであんまり音を出しちゃいけないよと注意されて、調弦もままならないまま、あれよあれよという間に順番がやってきて、追い立てられるように回り舞台の裏面にスタンバイ。

三味線はどなたかがまとめて調弦して持って来てくださったのですが、ふとみると糸が棹からずれている… ( Д) ゚ ゚
後見さんに「あのう、これ押さえられないので駒をズラしていいですか?」と声を掛けると、
「え、ズラしたら音変わりますよ。」(←知っとるわ、だから聞いてるんですわ!)…と言いつつ、時間を気にしながら奥の方に三味線を持って行って直してくださいました。
(ひぃー、セーフ)
いろいろ心許なくなっていたら、先ほどの後見の方が、「大丈夫ですから、いつも通りに落ち着いて。ちゃんと出来ますから。」と声を掛けてくださり、少し緊張の波が引いてゆきました。
(ありがたや…というか、暗示にかかりやすいオレ…。)

しかし!
…お隣では、我が師匠が「あら、これ調子合ってないわねぇ…」とか言いつつ、びょんびょん鳴らしながら糸巻き回しそうになり、「(小声で)先生!変えたらだめです!先生が変えるとみんな変えなければならなくなります!表に響くので、音も出したらだめだそうです!」って、なんでオレが先生にストップ掛けてんの?こんなんで大丈夫なの???

と、ドタバタやっているうちに、舞台が回って本番。
いつものことながら“舞台に立つと三層倍増しの先生のオーラ”に炙られながら演奏開始。

弾き始めてみると、うーん何となくいつもと調子が違ってる…、とにかく先生の調子に合わせて弾いていこうと耳を澄ますと、んんっ?全体のテンポがなにやら不穏で違和感が…、でも舞台が広くて、どこで何が起きているのか分からない…、どうしたらいいの???(心臓はバクバク・バクバク)隣の先生に合わせてとにかく手を動かしていくうちに、太鼓のテレツクが入ったので、呼吸を整え落ち着きました。
そこから先はテンポも回復して、実は個人的には怪しいところはあったけれど、夢中で演奏。なんとか岸についたと思っていたら(!)なんと、最後の最後、ドッテン、ドッテン、ドテ、ドテ…の決まるところで先生の糸がバチンと切れた!(って、いうか演奏が終わって気がついたら切れた糸が目に入りました)。最後の最後で良かった〜、先生の独奏部じゃなくて良かった〜。
(最初の乱れの原因は、あとで分かりました。)

舞台ってドラマチックじゃ。

それにしても『太鼓の曲』は、虫六が入門したばっかりのころに、10年選手の姉弟子の皆さんがお稽古していた曲で、なんて難しいのを弾いているんだ!と仰天した曲でした。その曲を、入門10年の自分が国立の舞台で演奏させていただけるとは、続けてみるもんですね…。(遠い目)

早めの順番で、朝から国立までお運びくださった皆さまに感謝。遠くからきてくださったり、差し入れいただいたり、本当にありがとうございました。


いやはや、舞台には魔物が棲んでいるといいますが、こんな舞台裏の言い訳めいた話も素人だから勘弁していただき、吐露してしまいましたが、プロの舞台人はどんな状況でも表舞台に言い訳はなさらないわけで、本当に凄いと思います。
先日の4代目猿之助さんが新橋演舞場『ワンピース』のカーテンコールの際にすっぽんの機械に巻き込まれて大けがをなさった時も、観客の方々は気がつかないまま会場を出られたとか。ご本人ばかりでなく、舞台裏も共演のみなさんもパニック状態でないわけないのに、それを表にださない徹底ぶり、凄すぎです。

(それにしても猿之助さんの全癒を心より祈念します。焦らず、元通りの身体を取り戻してください。待てます、待ってます!)

さて、後半は、プレッシャーから解放されて松永会の皆さまの演奏を堪能。

大曲をお一人で掛ける方やけっこう若いのに上手な方とか、感心するやら、緊張感も伝わってくるやらで、いろいろ勉強になりました。そして、どんな状況でも、きちんとフォローして1曲の演奏としての完成度を支える、家元はもとより助演の黒紋付きの師匠方…プロい。
しかもね、夕べの下浚いは深夜に及んだとか…、体力も半端ないですよね。

人前で演奏することを目標に、お稽古は組み立てられるわけですが、この10年、お三味線を触るようになり、大小のお浚い会で演奏の経験もさせていただきました。そのような本番の経験が、個人的に自分にどんな成長をもたらしたのかなと考えて、思うことは、音楽的な感性が研ぎ澄まされたとか、技術的な上達というよりも、極度の緊張状態のなかで何かトラブル(自己要因も他要因も含めて)が起きたときに、失敗を即時に受け入れて、そこから演奏のなかで「立て直す」力ではないかとしみじみ思います。もちろん、その力量(精神力・技量)は日頃のお稽古で身についていくものでしかないわけですが。

厳しい修行の末に演奏家になりそれを生業にしている舞台人の皆さんとは、違うレベルで、日々別の仕事で飯を食い、そのなかで決して安くない経費を投じて立つ、素人三味線弾きの舞台というものがあったりします。自己満足といってしまえばそれまでですが、この日演奏くださった皆々さまのドキドキに共振しつつ、そんなことを思うのでした。そして、やっぱりもっと上手になりたいなと、改めて思いました。


さて、家元の会にはいつも「たぬき会」という歌舞伎俳優の皆さまによる演目がございます。家元から我々に対するご褒美と受け止めておりますが、これがとんだご馳走でありまして、今回は
 演目は『供奴』
 唄方:菊五郎、松禄、菊之助、團蔵、左団次
 三味線:仁左衛門、萬次郎、竹松、忠三郎(秀調さんの代演)、松太郎
 囃子:笛/福原徹、小鼓/亀蔵、彦三郎、楽善、大鼓/壱太郎、太鼓/権十郎

という面々が、お稽古中の歌舞伎座や国立大劇場から駆けつけてくださいました。家元の竹馬の友の左団次さんはのっけからいたずらモードだし、唄方・お囃子のみなさんのリラックスした様子と対照的に、まじめに演奏なさる仁左衛門さん率いる三味線チーム。(仁左衛門さんの真剣な表情に萌え(*゚ー゚*)てしまったご婦人数知れず…)明日・明後日から新作や通し狂言を抱えているという最中に、余技の舞台に立ってしまうポテンシャル。ただ感心するのみ。立て三味線の演奏をしっかり支えていたのは大鼓の壱太郎さんでした。

壱太郎さんは、名古屋での公演の間を縫って新幹線で往復しての韋駄天ご出演で、たぬき会の演奏とは別に、ご自身で『船弁慶』を1本掛けていらして、これまた仰天でございました。
…ほんと凄いんだよ、壱太郎さんは。玉三郎さんの『阿古屋』継げるとしたら、彼しか思い当たらんね。