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2018年11月7日水曜日

10月に読んだ本

10月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:919
ナイス数:35

きのう何食べた?(14) (モーニング KC)きのう何食べた?(14) (モーニング KC)感想
途中3巻ほど抜けてしまったのですが、違和感なく1話完結でも読めるところは秀逸。とりあえず、明日は久しぶりで角煮にしようと思って、今晩のうちにバラ肉下ゆでしました。(笑)←影響されやすいので。
読了日:10月29日 著者:よしなが ふみ

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 (幻冬舎文庫)貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 (幻冬舎文庫)感想
Kindle版。先だって読んだお父さんのことを書いたエッセイやラジオの人生相談の切れ味の良さで、ジェーン・スーさんは最近とても気になる人物です。女子目線ではあるけど、ちょっと立ち位置がずれている。めんどくさいこともあえて丁寧に考えてみる…でも難しい言い方をする分けじゃない…は好ましい。ただ10年くらい若い方なのと、東京生まれ東京育ちの方のなので、いろいろと感性的な齟齬はありました。てなわけで、とりあえず娘にお薦めしておいたがどうだろう。
読了日:10月22日 著者:ジェーン・スー

この芸人に会いたい: 観て、撮って、書いた。旬の芸人・落語家たちこの芸人に会いたい: 観て、撮って、書いた。旬の芸人・落語家たち感想
これも本屋で手にしてつい買ってしまった1冊。「スペシャリスト」に恩田えりさん、太田そのさん、稲葉千秋さんの三人のお囃子さんが載っていたから。これは買わずにおけないでしょ。それにしても写真の力はすごいなぁ…といっちゃいけないね…ファインダーを覗く蓮二さんの目が深いってことなんだもん。写真集かと思ったら、それぞれにエッセイがついていた。これも愛情があっていい。寄席のすみずみまで空気を感じさせる。落語さんはもとより、ダメジャン小出さんとか、ぺぺ桜井さんとか、ロケット団とか…いいですよ。保存版ですよ。
読了日:10月21日 著者:橘 蓮二

神田松之丞 講談入門神田松之丞 講談入門感想
ネットではピンとこなかったけど本屋で見たら思わずレジに並んでました。レイアウトが見やすい。確かに松之丞さんのいうとおり講談初心者の「この話なんての?」に答えてくれる引ける本ってみたこと無かった。歌舞伎や落語はあるのにネ。そういう意味で扉を開けてもらった感じ。そしてその扉の向こうには随分深く面白い世界が広がっている気配。講談ってなんでこんなに長いの?1寄席では1話ずつだけど連続読みで聞きたくなってしまうよ。独演会行きたくなるわけが分かった。「畔倉重四郎」はぜひ機会を捕まえたいな。故陽司先生の名前も(;ω;)
読了日:10月12日 著者:神田松之丞

読書メーター

2018年9月5日水曜日

このところ読んでいた本

歌謡曲から「昭和」を読む (NHK出版新書)感想
歌謡曲を通してみる文化論。「昭和」の時代に最前線でヒット曲を飛ばしてきたなかにし礼さん。その見識の深さは、自らが闘って来た相手を分析する目なのかもしれない。軍歌と流行歌のことを説得力をもって語れる数少ない書き手だと思う。今のヒット曲の作家達が時流にながされてマインドコントロールの先鋒を担ぐことがありませんように。
読了日:08月30日 著者:なかにし 礼



愛されすぎたぬいぐるみたち感想
愛されすぎて「ライナスの毛布」みたいにボロっちくなっても、まだ大切にされているぬいぐるみの写真集。それぞれのエピソードもいろいろ。持ち主が変わったりして100歳を越えるぬいぐるみもある。「キリンのゲリー」君にいたっては、どこかのお堂の秘仏みたいだった。愛くるしさやふわふわを通りこして、ぬいぐるみの中に魂を育てていくんでしょうね。
読了日:08月25日 著者:マーク・ニクソン



人形有情―吉田玉男文楽芸談聞き書き感想
何かの事情でガチの取材が出来なかったのかもしれないけれど、玉男さんの言葉を拾い集めてでも残したいという宮辻さんの執念が伝わってくる。そして、玉男さんの芸を映像でしか拝見できない後発のファンとしては有り難い。「ぼくは半兵衛(人形の役)の気持ちにはなってませんなあ。半兵衛の気持ちを表そうとしていますけど。」という珠玉の言葉を引きだした時「えー、ふふふ(と恥ずかしそうに笑い)」と入るのは、お二人の距離感が感じられてなんだかいい。イケイケの取材でもなく、俺の話を聞けでも無く、逆に玉男さんの人となりが伝わって来る。
読了日:08月30日 著者:吉田 玉男,宮辻 政夫


頭巾かぶって五十年―文楽に生きて感想
蓑助さんの27年前の芸談。桐竹紋十郎の芸談(安鶴さん著)の続きの勢いで読了。昭和8年人形遣いの家に生まれ、物心つく頃から楽屋に出入りして足遣いに。昭和文楽界の様相や人情が伝わってきて舞台からは見えない部分の描写に引き込まれた。文楽が2つに分断されたのは労働運動だったというのも改めて認識。その時代に組合側だった三和会が上演場所を求め、地方の学校などを会場に旅興行を続けたのが昭和38年まで15年にも及んだそうだが、今の地方公演や学校公演の基盤になったのかな。息子を残して父が組合を抜けるくだりはやるせなかった。
読了日:06月09日 著者:吉田 蓑助


生きるとか死ぬとか父親とかの感想
 ホントは読み途中の本があったのだけど、新刊が届いたので週末の上京の道連れに。往復の新幹線で読んじゃった。魅力的なお父さんと読めるのはスーさんの大人度がなせる技もありなんでしょうね。親の老い、生と死…避けがたく、互いに剥き出しになる現実。他人事じゃないのよ。…それと、スーさんの活躍(稼ぐという意味で)の原動力がお父さんというところは、なかにし礼さんを思い出した、なぜか。
読了日:05月22日 著者:ジェーン・スー



フクシマ・抵抗者たちの近現代史: 平田良衛・岩本忠夫・半谷清寿・鈴木安蔵の感想
 ある日、南相馬市に住む高校時代の恩師(84才)から突然手紙が届いた。偶然図書館でこの本を読んだと、心に思うことが吐露されていた。貧しい土地の歴史、貧しい社会を変えるために人生をかけた先達のこと、そして原発のゆくえについて。すぐに買って読んでみた。自分の故郷にこんな偉人たちがいたなんて知らないことばかりだった。何を教育されてきたのだろう。日本国憲法の実質的な起草者として知られる鈴木安藏の生家は南相馬市小高区で、いまは居住制限の区域内にある。基本的人権が、戦争放棄が、蹂躙されている現状を象徴する出来事だ。
読了日:05月7日 著者:柴田 哲雄


文楽 芸と人の感想
批評というより文楽への愛情がほとばしる著書。古靭太夫(山城少掾)の芸談も、二世桐竹紋十郎の芸談も、間の良い魅力的な文体で快読させていただいた。悔しいのは、名人たちの生の舞台がみられなかったこと。人気絶頂の紋十郎の華やかな芸が、以前、安鶴さんは鳥肌が立つほど嫌いで酷評を書きつづけていたそうだが、ある時から、一転して大好きになったという話が心に残った。文楽が二つに分断された時代の苦しさ、それを乗り越えて紋十郎が掴んだ芸の真髄、さらに苦楽を団結して成長したその弟子たちを見つめる批評家の眼が厳しく、また優しい。
読了日:04月22日 著者:安藤鶴夫

読書メーターより

2018年3月8日木曜日

2月に読んだ本

2月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1477
ナイス数:20

兄弟 (文春文庫)兄弟 (文春文庫)感想
「石狩挽歌」の歌の背景は凄まじい世界だった。まともに仕事をしたことはないのだけれど、うまくいかないと分かれば徹底的に負けないとおさまらず、億単位の借金を弟に肩代わりさせて、当たり前と悪びれもせず虚勢を張る、特攻の生き残りの兄。他人からみたら、こんな無茶苦茶な怖い人世の中にいるの?!なんだけど。それを受け入れて借金を完済しつづけ(!)なお鎖を断てない、才能ある弟も凄い。なかにし礼の作詞家としての成功の裏に、こんなブラックホールみたいな兄の存在があり、それがある意味、創作のエネルギーだった、というのも。
読了日:02月24日 著者:なかにし 礼

羊の木(5) (イブニングKC)羊の木(5) (イブニングKC)感想
kindle版、最終巻。 教育長・白尾政光、大型ダンプカーで大暴れ。重機の凶暴さが犯罪を通り越していてアクションものの迫力。 善行が巡り巡って誰かを不幸にしてしまったり、生まれも育ちも関係なく、罪は性根に宿るものって訳じゃないと。不幸にも歯車が狂い罪を犯した人が再び生きていくためには「居場所」が必要で、それを本人も社会も大切にできるかどうかなのだと、たぶん映画のテーマにも通底してたかも。 イジメられてた中学生が炎上するダンプが海に落ちるのをみて「生きていればこんなこともあるんだな」って表情が良かった。
読了日:02月12日 著者:いがらし みきお

羊の木(4) (イブニングKC)羊の木(4) (イブニングKC)感想
kindle版で一気読み、つづき。 罪を精算して人生をやり直すはずの町で、元犯罪者の皆さんとはカンケー無く、フツーの市民の中にも不倫やそれにまつわるもめ事はあり、社会的には立派そうな人たちの日常も狂っているよ。 そんな中、月末さんちの理奈ちゃんは爽快。健全だわー。 書き下ろし小説は「キヨミ」。スピンオフで、漫画にしてください、いがらし先生!
読了日:02月12日 著者:いがらし みきお

羊の木(3) (イブニングKC)羊の木(3) (イブニングKC)感想
kindle版で一気読み、つづき。 馬に蹴られるチキン対決は何をしたかったのか分からないけど、こういうナンセンスなエピソードを挿入してくるところは好きです。三田村、怪しい…?国家プロジェクトから離脱して魚深市の状況がツイン・ピークス化してきた? 山上先生の書き下ろし小説は「模型」。
読了日:02月12日 著者:いがらし みきお

羊の木(2) (イブニングKC)羊の木(2) (イブニングKC)感想
kindle版で一気読み、つづき。 奇祭「のろろ祭り」が、祭りを通りこして猟奇。いがらし先生の庚申様思い出しました。宮越は気持ち悪いやつだなー。それから大野さんのニワトリ…。じわじわ来てます。 巻末の山上先生の書き下ろし短編小説「浜辺」も読み応えありです。
読了日:02月12日 著者:いがらし みきお

羊の木(1) (イブニングKC)羊の木(1) (イブニングKC)感想
kindle版で一気読み。 先に映画を観てしまったので、こんなに設定が違っていたのかとちょっと驚き。国家プロジェクトといいつつ、おっさん三人組がお世話役…?公務員の錦戸君らしき爽やか青年は出て来ませんですが、月末一さんは仏壇やの親父さんです(笑)。元受刑者もいろいろあってもっと複雑。こんな話だったのかー?! びびり気性の月末さんが頼まれるまま移住者を迎えにいって初対面で接する時の、妄想する恐怖心が地震のように微動から大きな揺れに変わっていく脇汗な感じが、映画には無かった。達観した大塚さんと対照的。
読了日:02月12日 著者:いがらし みきお

読書メーター

2018年2月11日日曜日

1月に読んだ本

1月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:823
ナイス数:26

長崎ぶらぶら節 (新潮文庫)長崎ぶらぶら節 (新潮文庫)感想
丸山芸者・愛八の心意気が清々しい。叶う恋でもないのに古賀のために旦那と縁を切り、三味線持って歌探し調査の相方を務める。藝能研究は知識や審美眼だけじゃだめで耳と技がないと出来ない。愛八が古賀になぜ自分を選んだのか尋ねると、「人間の声は化粧もできんし、衣装も着せられん。しかし歌うときとか芝居をする時、または嘘をつく時、人の声は化粧もすれば変装もする。その時に品性が出るもんたい。…(略)…おうちの歌は位が高かった。欲も得もすぱっと捨て去ったような潔さがあった。…(略)…品とはそういうもんたい。」凄い殺し文句だ。
読了日:01月22日 著者:なかにし 礼

大奥 15 (ヤングアニマルコミックス)大奥 15 (ヤングアニマルコミックス)感想
家定、ほんのひとときでも幸せを実感できたのが過酷な人生の中のせめてもでした。胤篤は家定亡きあと家茂を支えつつ大奥の最後を精算することになるんだよね、で、和宮が…でどうやって二人三脚できるでしょうか。やっぱり男女逆転だといろいろややこしいけど、そこが面白い。最後まで容易に予測させていただけません。和宮が替え玉というと有吉佐和子の『和宮様御留』か?というところ参考文献には入っておらず、あえてここは独自解釈か?それにしても参考文献の量が論文レベル(?)で凄いです。脱帽。
読了日:01月01日 著者:よしながふみ

大奥 14 (ヤングアニマルコミックス)大奥 14 (ヤングアニマルコミックス)感想
新刊が出たので再読。
読了日:01月01日 著者:よしながふみ

読書メーター

2018年1月7日日曜日

12月に読んだ本

12月の読書メーター
読んだ本の数:2
読んだページ数:368
ナイス数:9

舞うひと 草刈民代×古典芸能のトップランナーたち舞うひと 草刈民代×古典芸能のトップランナーたち感想
雑誌「なごみ」で連載された対談が単行本に。各分量は少なめですが(実際はもっと合ったのかもと想像)どの対談も良くまとまっていて面白かった。バレリーナという立ち位置から日本の「舞う」伝統芸能に切り込む草刈民代と言う聞き手の感度や理解の深さが感じられた。日本文化が相対化されたこともあるけれど、小さい頃から成長過程を身体を作り技を磨くことに費やして来た経験を共有してこそのやり取りだった。萬斎との声をめぐる話、猿之助の「ワンピース」における洋舞への翻訳の話、麿赤兒とも!そして、写真がきれい…さすがは淡交社…。
読了日:12月29日 著者:草刈 民代

国立劇場・歌舞伎の型1 仮名手本忠臣蔵国立劇場・歌舞伎の型1 仮名手本忠臣蔵感想
国立劇場芸能調査室編で昭和47〜8年に発行された(13)仁左衛門芸談を底本に復刊された本。全てが理解できるわけではないけれど、役者がどのように型の継承を受け止めて、役に生かしているのかが分かり読み応えがありました。囃子方(11)田中傳右衛門の芸談も決まり事が分かって非常に興味深く下座のCDで確認しながら拝読。この頃、国立劇場は他にも(7)芝翫や(14)勘弥などの芸談も出版しているけど絶版状態。仁左衛門の本だけが復刊できたというのも事情ありかなと推察するんですが、他の芸談も続けて出して欲しいです。
読了日:12月24日 著者:

読書メーター

いろいろまとめる時間がとれず…。とりあえず2冊あげときます。(汗)

2017年11月14日火曜日

10月に読んだ本

10月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:624
ナイス数:5

浅草演芸ホールの看板猫ジロリの落語入門浅草演芸ホールの看板猫ジロリの落語入門感想
たしかこの猫の噂はね、去年の長唄の会のゲストでいらしてくださった柳家小菊師匠から聞いたんですよ。浅草演芸ホールが鼠対策に猫を飼った話。それでどんな猫なんだろうと気になっていたら、なんと写真集が出るほどの看板猫になっていたんですね。「ジロリ」って名前がついていたのかー。昔、実家でかっていた猫(名前は「ゴマ」)にも似ていて親近感。落語家さんは猫好きが多いのかな?っていうか、猫好きの人たちを寄席に誘い込もうっていう意図の入門書でした。でも「ジロリ」に会いに浅草演芸ホールに行ってみようかな?と言う気になりました。
読了日:10月31日 著者:

ちゃぶ台返しの歌舞伎入門 (新潮選書)ちゃぶ台返しの歌舞伎入門 (新潮選書)感想
著者の飄々とした文体とゴレンジャーにまで触手を伸ばすサービス精神に油断して読み進んでしまいますが、これ決して入門書ではナイと思います。400年という時間をかけて洗練もされ、またご時世や変化する大衆の感性に影響されつつ歪みながら、時々の俳優の身体を媒体として発展してきた歌舞伎。すこし興味をもって通い出すと、同じ芝居を別の俳優が演じる面白さ、世界や趣向などの奥深さを知り、決まり事なんかも気になってくる…そんな感じになった時、この本は立体定規を使うように解説くれて、痒いところを心地よく掻いてくれます。きっと。
読了日:10月30日 著者:矢内 賢二

新版・落語手帖新版・落語手帖感想
銀座シックスにある蔦屋書店の古典芸能コーナーで見つけて即買い。最近、カーステレオ代わりにiPhoneを繋いで落語を聞くことも多いので、こういう本を探していました。1988年に駸々堂から刊行されたものが、文庫化され、更に加筆・改訂されて新書版に。ロングセラー本ですね。1噺を1ページで、「梗概」「成立」「鑑賞」「芸談」「能書」でまとめられています。何かに似てるな…と思ったら、渡辺保先生の「新版・歌舞伎手帖」だ、同じ講談社だ、と気づいてしまった。構成そっくり。でも、どちらも便利です。
読了日:10月29日 著者:矢野 誠一

読書メーター

2017年10月17日火曜日

9月に読んだ本

9月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:698
ナイス数:19

イケズの構造 (新潮文庫)イケズの構造 (新潮文庫)感想
面白いなぁ、京都人の言語感覚。京言葉の3段論法(?)注意→イケズ→いらんこと、の塩梅が分かるようになるとそうとう面白そうだと思うけど、所詮、我も「よそさん」なんで、京都に入ればただの生け贄か?でも、日常的に歯が浮く会話より、毒交じりの会話が出来る人の方が楽しいよね。京都の人に限らずですが。それはそれとし、ひさうちみちお先生がお元気そうで、嬉しい限り。
読了日:09月26日 著者:入江 敦彦

夜長姫と耳男夜長姫と耳男感想
野田版歌舞伎「桜の森の満開の下」の影響で、原作関連の読書をしていましたが、この作品を一等先に読むべきでした。先日、残夏の小学校の校庭に大きな蜘蛛の巣が張っていて、思わずプチプチと糸を切って慌てる蜘蛛の様子を観察してしまい(夜長姫みたいだな)と思いました。高楼の上から、人々が大量に苦しみ死んでいく様子を眺め「キリキリ舞いをしているわ」と輝きの表情を浮かべ喜ぶ姫の本性は…で、「桜の森_」の鬼女房と合体というのがお芝居の構成だったけれど、原作の夜長姫はずっと怖い。神(?)…ということは、耳男は神殺しなのか…?
読了日:09月15日 著者:坂口安吾

夜長姫と耳男 (ビッグコミックススペシャル)夜長姫と耳男 (ビッグコミックススペシャル)感想
坂口安吾シリーズの第一作目。恐ろしきは姫の笑顔…。
読了日:09月10日 著者:近藤 ようこ


桜の森の満開の下 (ビッグコミックススペシャル)桜の森の満開の下 (ビッグコミックススペシャル)感想
けっこう原作のままでした。原作の深い闇に足を取られるような、何とも言えない恐ろしさ、怖いと分かっているのに操られていく自身の虚無感とか、説明しがたいもろもろがやや平板になってしまったようで残念。
読了日:09月03日 著者:近藤 ようこ

読書メーター

2017年9月12日火曜日

8月に読んだ本

8月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:762
ナイス数:23

新装版 手鎖心中 (文春文庫)新装版 手鎖心中 (文春文庫)感想
「バカだねー」と面白がって読み進めると、やがて哀れを通り過ごして怖くなる。『手鎖心中』は勘三郎さんが歌舞伎『浮かれ心中』に仕立てた作品で、…見ているはずなのにあまり覚えてませんでした。そんな分けではじめて読むような印象。『江戸の夕立ち』は江戸版ひょこりひょうたん島じゃないけど、どこまで行くんだよ〜おいおい的な面白さがあり。若旦那清之助の性、太鼓持ちの桃八の性、もうどっちもどっちで徹底的にしょうがない人たちだね、もう好きにおやり!って感じっなんだけど、でも憎めない愛嬌が作品の魅力でしょうか。
読了日:08月31日 著者:井上 ひさし

贋作・桜の森の満開の下贋作・桜の森の満開の下感想
野田歌舞伎「桜の森の満開の下」を拝見して、小劇場版「贋作・_」とどんな風に変えていたんだろうと興味を持って, Kindle版で読みました。Kindle版便利だなー。言葉遊びの充満した野田芝居、一回見たくらいでは煙に巻かれたみたいになってしまいます。しかも、歌舞伎演出のためにだいぶ改訂した…と伺っていたけれど、セリフにとても既視感があり、ほとんど変えていないんじゃないかと思うほどでした。いろいろお芝居の記憶が蘇ってきました。
読了日:08月20日 著者:野田 秀樹

桜の森の満開の下桜の森の満開の下感想
野田歌舞伎『桜の森の満開の下』をみて、まずは原作読んでみたいなと思い、青空文庫の内蔵版で読了。中世時代のあやかしが棲むような神秘性に加え、女の本性は鬼か…と底知れぬ怖さがありましたが、幼女の残忍性という面では他の作品にモデルがあったのかも。というわけで『夜長姫と耳男』も読まねば…と青空文庫の坂口安吾の書棚を検索したら、すごくぎっしり入っていて、読みたい作品いっぱいだ。
読了日:08月15日 著者:坂口安吾

おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Areおばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are感想
タイトルはM.センダックの「かいじゅうたちのいるところ」をひねったものみたい。どこか覚めていて、したたか(というか太々しくもある)女性たちの日常に、怪獣ならぬ物の怪や幽霊たちが明るく当たり前みたいに入り込む、ちょっと奇妙な短編集。幽霊が元気なおばちゃんだったり。それぞれのお話のモチーフが古典落語や歌舞伎だったりするところも、なかなか楽しめました。
読了日:08月14日 著者:松田 青子

読書メーター

2017年8月11日金曜日

7月に読んだ本

7月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:869
ナイス数:3

役者七十年 (1976年)役者七十年 (1976年)感想
昭和50年に朝日新聞に連載された十三代目片岡仁左衛門の随筆集。東京と上方で活躍した十一代目を敬愛し、尊敬しながらしんなり成長していく御曹司の少年時代、「片岡俳優養成所」のこと、青年歌舞伎時代、関西歌舞伎不況時代の危機感から一家をあげて挑んだ「仁左衛門歌舞伎」と、ご本人の随想なのでいろいろ興味深く読めました。巻末の年表もうれしい。それにしても十三代目って嫌みのない良い人だなぁ。若い頃の美少年ぷりも麗しい。
読了日:07月28日 著者:片岡 仁左衛門

茶色の朝茶色の朝感想
普通に友人との会話を楽しみ、朝のコーヒーを味わっているような日常に、じんわりと染みてくる「茶色」。深く考えずに目先の「安心」や「安全」のために「茶色化」を受け入れている内に、自由を奪われ取り返しの付かない事態に追い込まれていく。やんわりした寓話なのに底知れない怖さがありました。西ヨーロッパに極右運動が広がっていくのをみて、あるフランス人が「茶シャツのヨーロッパ」と名付けたそう。フランス人は敏感だな。いま、私たち日本の暮らしも茶色に染まりはじめていることを自覚しなければならないと、ぞっとしました。
読了日:07月20日 著者:フランク パヴロフ,ヴィンセント ギャロ,藤本 一勇,高橋 哲哉

日本会議の研究 (扶桑社新書)日本会議の研究 (扶桑社新書)感想
何やらいつの間にか右傾化していく日本。やばすぎる現政権のバックボーンを知っておかねば…の気持ちで読みました。
読了日:07月15日 著者:菅野 完

帰る場所 (ビームコミックス)帰る場所 (ビームコミックス)感想
まだ駆け出し時代の近藤先生の短編集。まだ中世説話の世界観ではありません。いまならもっと筆を省略しているなとか、初々しさを感じる部分もありますが、コントロール出来ない心の陰を描き出す鋭さや、得も言われぬ神秘性など、紛れもない近藤先生の作品だと思いました。
読了日:07月09日 著者:近藤 ようこ


読書メーター

2017年4月19日水曜日

3月に読んだ本

3月の読書メーター読んだ本の数:4読んだページ数:910ナイス数:34


パルプ (ちくま文庫)パルプ (ちくま文庫)感想
帯に惹かれてうっかり手にとっちまったばっかりに、ツキのねえくそったれ中年探偵のひでえ話につきあうことになっちまった。目も眩むぴちぴちドレスのイカしたご婦人の依頼人やら、人を遠隔操作する美人系宇宙人…スッチャカメッチャカな登場人物で調査は入り乱れて尻尾もケツも押さえられず失敗つづき。でも、めげない主人公のタフさがすげえ。(悪態言葉もいざ使ってみようと思うと難しいものですね…)読了日:03月17日 著者:チャールズ ブコウスキー

夢十夜夢十夜感想
岩波書店の漫画、ハードカバーです。作者はまず原作を読んでから漫画と比べて欲しいそうです。先に漫画読んでしまいましたが。なんとなーく漱石先生に似た登場人物が小説というより本当に作家の夢日記だったのかと思わせます。一つ一つはつながってもいないオムニバスで、1話の中にも脈絡があるような無いような…はまさに夢なのですが、近藤先生の手に掛かると、これが中世の説話のようにも感じられ(実際は明治)、また夢で闇に落とし込まれる時のような湿気や重みのリアルさがあり妙味を感じました。寝る前に読んでいたら変な夢をみました読了日:03月16日 著者:近藤ようこ

大奥 14 (ヤングアニマルコミックス)大奥 14 (ヤングアニマルコミックス)感想
篤姫(胤篤)の人徳が出会う全ての人を磁石のように惹きつける。人の上に立つ人って、つまりこういう人でないとうまくいかないんだな…と現代社会にも被ります。それにしても、阿部正弘の無念が悔しいなぁ。正史に重ねて描いているところが、またニクいわけで。読了日:03月12日 著者:よしながふみ

戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ (ele-king books)戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ (ele-king books)感想
歌姫復活。CD「わたしが鳴こうホトトギス」のカッコ良さに衝撃を受けて、思わず昔の音源を引っ張り出したら、LPで、戸川純が自分のアイドルだった青春時代が超高速で蘇ってきた。そしてこの全歌詞解説集。ミュージシャンとしてのテクニックや表現の深さは当時も感じていたけれど、詩作の後日談はひりひりしたその人生譚が重なる。詩は心を裸にするもの、しかし歌詞は曲との関係で完成するものだという。ソロアルバムやヤプーズ時代の作品だけど古めいていない。諦念ではなく「オープン・ダ・ドー」へ。長生きしてずっと歌っていてほしい。読了日:03月10日 著者:戸川純
読書メーター

2017年3月6日月曜日

2月に読み終わった本

2017年2月の読書メーター
読んだ本の数:1冊
読んだページ数:224ページ
ナイス数:12ナイス

ヌメロ・ゼロヌメロ・ゼロ感想
イタリアやヨーロッパの歴史がよく分かっていないので、ブラッガドーチョが追いかけていた陰謀論が果たして歴史にどのくらい重なるものなのかは分からなかったのですが(とほほ)、メディアの詐術や新聞が見出しの隙間に大事な真実を隠して人の関心をいかに反らしていくのかという手法などを、感心しつつ(よその国の大統領選挙や暗殺事件なんかの大見出しの影に自国首相にまつわるニュースは埋もれさせているのも同じだな…)なんて読んでいたら、最後の最後に、あー、これ小説だった…と、エーコの仕掛けた罠にはまってた自分に気がつきました。
読了日:2月19日 著者:ウンベルト・エーコ

読書メーター


2017年2月12日日曜日

1月に読んだ本

2017年1月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1220ページ
ナイス数:15ナイス

ACCA13区監察課(6)(完) (ビッグガンガンコミックススーパー)ACCA13区監察課(6)(完) (ビッグガンガンコミックススーパー)感想
解けた解けた。クーデターも解けてみればずいぶん大げさな寸劇でしたが …。で、課長?!とりあえず、「P.S.」編がありそうなので、楽しみ。
読了日:1月31日 著者:オノ・ナツメ




ACCA13区監察課(5) (ビッグガンガンコミックススーパー)ACCA13区監察課(5) (ビッグガンガンコミックススーパー)感想
6巻出たので復習。
読了日:1月29日 著者:オノ・ナツメ







部長、その恋愛はセクハラです! (集英社新書)部長、その恋愛はセクハラです! (集英社新書)感想
お薦めされて一読。セクハラでやっかいなのは勘違いと恋愛の曖昧さ。被害に遭いやすいのは協調性があり相手に情緒的配慮ができる女性らしい。職場の上司や交渉相手、大学の指導教官など、メリットのある相手(尊敬するならなおさら)気にいられようと丁寧な態度は自然にとってしまうもの。それを、肉食系中高年男性は「俺、モテてる?」とミスキャッチして性的なアプローチに及ぶことに 。女性の中に違和感が生まれても、断れば気まずい事態が予想され、いまさらノーと言えないままセクハラに。でも男女のことはどこまでもグレーゾーンなんだろな。表に出ない事例もごまんとあるだろうし。

読了日:1月25日 著者:牟田和恵
谷崎万華鏡 - 谷崎潤一郎マンガアンソロジー谷崎万華鏡 - 谷崎潤一郎マンガアンソロジー感想
中央公論社のHPで月1回更新のまんがアンソロジーとして連載されていて高野文子さんの回などたまにチェックしていましたが単行本になったのでさっそく購入。作品タイトルページのフラクタル柄が凄いわぁと思ったら、「万華鏡」だったとあとで気がつきました。原作は知ってるのも知らないのもあったけど、それぞれの解釈が多彩で妄想も炸裂で面白い競作でした。個人的には耽美系の作品よりも、高野さんや山口晃さんの日常に向かう感性を切り取ったものが好み。「台所太平記」の磊吉先生のうさぎの被り物がかわいい。そして初さん好き。
読了日:1月16日 著者:榎本俊二,今日マチ子,久世番子,近藤聡乃,しりあがり寿,高野文子,中村明日美子,西村ツチカ,古屋兎丸,山口晃,山田参助

日本の身体 (新潮文庫)日本の身体 (新潮文庫)感想
期待通りどのインタビューも目から鱗で刺激的でした。尺八は身体を1本の筒と化して深い呼吸で演奏している話(中村明一)。双葉山の土俵際で力を抜いて、個体が液体になる感じに身体を使う相撲の話(松田哲博)、熊狩りの時期は山にまだ雪が残る4月下旬から5月初頭の2週間の間のみ!というのが実に理にかなっている話(工藤光治)、ブルース・リーの筋肉は人に触わらないと鍛えられない付き方をしてるそうな…などなど聞いてみないと想像も出来ないことあるものです。いかに自分が身体を意識してないか、三味線も上手くならないわけですねー。
読了日:1月12日 著者:内田樹

読書メーター

2017年1月7日土曜日

12月に読んだ本

2016年12月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:317ページ
ナイス数:14ナイス

猿の眼: 僕ノ愛スル器タチ猿の眼: 僕ノ愛スル器タチ感想
骨董好きはドラマ「白州次郎」で青山二郎を演じたのがきっかけとは驚き。あの役ハマってましたので。とはいえ、身銭を切って審美眼を養う骨董の世界、易々と入り込めるものではありませんが、そのあたりのドキドキが猿之助といえどもあるんですね、笑。茶道誌に2年間連載されたというエッセイは、ちょうど亀治郎から猿之助に襲名する時期でもあり、興味深し。そして最近はやや熱も冷めて…と言ってしまうところが、また猿之助らしい。それにしても趣味の良い楽屋だなぁ、壁には千住博の「ウォーターフォール」のリトグラフ…こんな部屋に住みたいぁ
読了日:12月27日 著者:市川猿之助

まっぷたつの子爵 (1971年) (文学のおくりもの〈2〉)まっぷたつの子爵 (1971年) (文学のおくりもの〈2〉)感想
30年ぶり再読。トルコ軍とキリスト教徒の戦いで砲弾をあび、真っ二つにされ(!)人格まで≪悪半≫と≪善半≫に別れてしまったメダルド。本来は一人の人格には善も悪もどちらともいえないものも分かちがたくあるものなれど、置かれた世界や社会によってそれが引き裂かれてしまう怖さ。戒律主義者となったユグノー教徒も、快楽に耽る癩患者も、人を殺す道具と知りながら精巧な絞首台造りに腕をふるってしまうピエトロキョード親方も。それにしても、頭の先から包丁で切ったみたいにメダルドを割って表現してしまったところがカルヴィーノ凄い。
読了日:12月7日 著者:イタロ・カルヴィーノ

読書メーター

2016年12月31日土曜日

『この世界の片隅に』 アニメに描かれなかった原作のエピソードについて

クラウドファンディングで資金を集めたアニメ映画『この世界の片隅に』がいよいよ完成して、11月12日に封切られました。


まんが原作の大ファンだった虫六も、アニメ化のデモ画をみて、これは原作に惚れ込んでいる絵だと直感してわずかばかり一口のりました。

以来、このプロジェクトは制作の過程を細かにレポートしてくださり、また、主人公すずさんから四季折々に葉書が届いたりして、本当に出来上がりが楽しみにしていましたが、虫六も初日の深夜上映に足を運びました。
震災以後、このようなクラウド・ファンディングも一般的になり、いくつかのプロジェクトに投資もしましたが、これほどやった甲斐があったと思うものはありません。

原作の『この世界の片隅に』という作品は、戦時下という狂気の時代を舞台にしていますが、イデオロギーでも、美談でもなく、その時代の広島に生まれて成長し、海軍工廠があった呉で慎ましく暮らしていく北條すずさんという一人の女性を描いた物語で、こうの文代さんの傑作まんがです。
虫六も支援者の一人としておすすめまくりの口コミ大作戦に協力しておりましたが、マスコミでも紹介されていたように、想像以上に話題となり、上映館もまだ増加中だということなので、製作者のみなさんの苦労も報われたと、良かった良かったと喜んでおります。

「すずさんが動いたー!」これがまずは素直な悦びです。

そして、アニメを初見した時から気になっていたことを、そろそろ時間の経過も満たされたかと思い、覚え書きしておこうと思います。


さて、ここからは少々【ネタバレ】になりますので、見てない人はご注意ください。(登場人物のさんづけも省略)


アニメ版『この世界の片隅に』は、原作を十二分に尊重し、その世界観を壊さないよう丁寧に丁寧に作られていたという感想は、原作を知っている人ならみんな持たれたと思います。

例えば、まんがでは基本的(*)にペンで描き分けられていた“すずが描く”鉛筆画や水彩画のなどは、アニメでは原作がそうだったと勘違いするほどにイメージにマッチしたもので、この作画力は凄いと思いました。
*とはいえ原作の方もとても実験的な表現を意欲的に取り入れているマンガで、サイレント映画のようにネームなしで描いたり、歌の歌詞と組み合わせて挿画風に描いたり、絵葉書風にだったり、ペン以外の鉛筆や毛筆や口紅(?)などで描いてみたりして決して平凡な作品ではありません。そういうところも、アニメでは上手に動画に仕立てていました。

聞けば実に精緻な考証に基づいて原作の裏を取りながら作成されたというアニメ版は、現実感を伴って立体的に立ちあがり、また、のんさん(元・能年玲奈)がすずの声を担当したことも話題になり、その声は想像以上に生き生きとしたものだったので、作品に生命が吹き込まれるってこういうことかと感服しました。

そこまで原作を尊重して、いえ、それ以上に作り込まれたアニメ版ですが、1つ描かれなかった、とても重要なエピソードがありました。


「りんどう柄のお茶碗」のエピソードです。


すずが闇市に砂糖(水甕に隠して溶かしてしまった)を買いにお使いにでて帰り道がわからなくなり、遊廓街に迷い込んで巡り会う白木リンという女性。
彼女は、幼い時に草津の祖母の家で西瓜の皮をしゃぶっていて「座敷わらし」といわれた、あの子供だったということがなんとなく知れますが、アニメ版ですと、リンについては深く描かれず境遇の違う女性同士の友情というかそんな印象になっています。でも、原作を読んでいる人は、この女性が周作の(すずと結婚する前の)ワケありの恋人だったということを知っています。
それをすずが悟ることになるエピソードが納屋の2階で「りんどうの柄の茶碗」を発見する場面で、アニメでは省略されていました。

すずというキャラクターは、緊張した時代の空気をほどいてくれるような間の抜けたおっとりした性格で、それでいて「絵が巧い」ということ(これは意図したと言うより作者の特性が反映して…とこうのさんが言っていました)があるわけですが、18やそこらで育った町を離れて嫁いできた若い女性です。
1人の人物の中には、子供っぽさが抜けない未熟さを残した部分(晴美の相手をしている時や憲兵に叱られたところもそうですね)、家族や共同体のなかで役割を果たし大人になろうとする部分、そして、周作とリンの間で女性として目覚めていく部分があり、その入り交じった感がちょっと色っぽく好ましい魅力と感じていました。
しかしアニメでは、そのうち一つがやや省略されて、むしろ「戦争」の日常という部分が強調されたように感じます。しかし、すずの魅力が減らなかったのは、のんの声の力が大きかったと思います。

「普通」とは言うけれど、すずの現実がどういう風に「普通」だったかはその時代を経験していない自分には正直わかりません。東北でも、学校を出てすぐ嫁いでいった女性もいれば、男子が少なくなっているから嫁ぎ先がないまま軍需工場で働いていた人たちや子どもがいる家庭に後家に入った人も少なからずいたと聞きます。また、戦前は家が貧しく学校にも行けずにリンのように遊郭などに売られてしまったり、小さいうちから子守奉公に出されたりする女性もいました。当時、学校を出て普通にお嫁に行けた女性は比較的恵まれた境遇だったのだと思います。リンやテルにも戦時の現実があったことを原作は同じまなざしで描いていると思います。

少し話がそれますが、私が高校の新聞部だったときに、戦時下の先輩たちがどう暮らしていたか興味を持って取材したことがありました。
高校を出てすぐ「顔も見たこともない親が決めた人」に嫁ぐのは当たり前で、話の中心は「ものがないので苦労した話」。ドングリを拾って粉を挽いて食べた…という話を昨日のことのように教えてくれました。
当時は「戦争に反対」とかそんなことを考えるようなことは全く無かったと聞いてちょっと拍子抜けしたというか、戦時下の実感というものはそういうものなのかなと、そんな違和感を持つのは自分が戦後教育で身につけた感性だったんだということを思ったりしたのを、この作品を読んだ時に思い出したものでした。

なので、あの話をしてくれたお婆ちゃんたちの青春時代に重ねて見てしまうのですが、こうのさんは、そんな時代にすずが女性として成長していく物語を、すず・周作・リン・水原の4人の関係の中にとても巧妙に組み立てていました。その意味で、これを省略しては物語のピースが嵌らないじゃないかな?というのが、私の初見の時のひとつ気になった感想でした。

原作のこうのさんが「公式アートブック」(宝島社 2016.9)のインタビュー(P.59)で、本作の連載が決まっていたので、その前に主要な登場人物の子供時代を単発で読み切りで描いたとおっしゃっていました。それは、人攫いの駕篭の中で周作と出会う話(「冬の記憶」月刊まんがタウン 2006年2月号)、お婆ちゃんのうちで西瓜の皮をしゃぶるりんに出会う話(「大潮の頃」漫画アクション 2006年8月15日号)、水原の代わりに白い波のうさぎの絵を描いた話(「波のうさぎ」漫画アクション 2007年1月9日号)の3話のことで、大筋を決めていたあとでこの物語を描いたと考えると、いろいろ想像が膨らんで面白いと思います。

本編の最初に描かれるのは、草津の祖母の家で海苔を取る作業を手伝っている最中に、江波の自宅から電話が入り、突如嫁入り話が持ち出されるエピソード。
「海苔の商いをしてた浦野すずという名の少女」という手がかりで嫁探しをして、浦野家はすでに海苔養殖を辞めていたので探すのが大変だったと親同士の会話があり、窓越しにその様子を眺め周作をみとめるものの会った記憶のないすずは「困ったねぇ、…いやなら断わりゃええ言われても、いやかどうかも分からん人じゃったねえ…」と山の中で独りごちます。

前段に人攫いのプロットがあれば、すずは周作の初恋の人だったのかと考えたくなるけれど、後にリンとの関係があったことを知ると、遊女との結婚を反対された周作が親・親戚を困らせるか結婚話をスムーズにさせないために、幼い時に会ったすずの記憶を持ち出したのかとも想像できるわけです。しかし、すずは探し出されてしまって、周作のもとに嫁に来てしまいました。

若い夫婦として互いの関係を深めていく日常に、そんなエピソードが挿入されると、周作の後ろめたさや、すずのわだかまりも加わり、なかなか陰影を深いものにします。

後段で、水原が入湯上陸ですずの元にやってきて、けっこう大胆に既に人妻であるはずのすずにべたついていることに、夫の周作がなんとなく遠慮がちに接し、あげくに「自分の女房を兵隊さんに捧げる」かのごとく納屋の2階に2人を追って母屋の鍵を閉める場面も、水原がいくら死と隣り合わせの兵隊さんだからといってギョッとする行為です。しかし、自分がそんな事情ですずを嫁にしてしまったことへの後ろめたさが心の裏側にあるのかと思うと、少し腑に落ちる部分もあります。周作は、水原をすずの「本当に好きだった人」と思い諮り、すずのことを不憫に思ったのだろうかと想像も膨らみます。
しかし、すずの心はとうに周作にあり、さらに嫁としての自負も芽生えていたので、むしろこういう行為で傷ついてしまったわけですが。

本編で、とても重要なセリフのいくつかは、周作とリンの関係があってこそ深みを増すものになります。

その一つは、すずが周作にノートを届けに行って映画に誘われ“しみじみニヤニヤした”エピソード。
2人で映画をあきらめて橋の上で周作が「すずさん、あんたを選んだんはわしにとって多分最良の現実じゃ」という場面。その前に、「過ぎたこと、選ばんかった道、みな覚めた夢と変わりやせんな」とつぶやくセリフ。(そして、このあとの展開で、周作とリンの関係が輪郭を顕すのですが…)
さらに、リンも、すずが周作の嫁であることに気がついたあとに、お花見にいった場所で偶然にすずと出会い、2人で桜の木に登り、亡くなったテルちゃんの口紅を形見に渡しながら「ねえすずさん、人が死んだら記憶も消えて無うなる。秘密は無かったことになる」という切ないセリフ。
また、晴美の手を引きながら利き腕ごと時限爆弾に吹き飛ばされてしまい、深い喪失感の中に自分の居場所を見いだせなくなったすずを導くことになる言葉は、リンの「だれでもこの世界でそうそう居場所は無うなりやせんよ」というセリフ。

アニメはリンの存在をはっきり描いていないので、こういう言葉は少し意味合いが変わってしまっています。

リンは登場人物のなかでは北條家の家族などに比べても重い存在としては登場しませんが、周作との関係を示す「名刺大に切り抜かれた周作のノート」は何気なくありましたし、空襲後にリンの消息を確かめるために朝日遊郭へ向かう場面にオーバーラップされた「口紅で描かれたリンのおいたち」もエンドロールのアニメにされて、原作を知っている人は分かるという作りにはなっていました。が、原作ファンとしてはもったいないと思ってしまいます。しかも、エンドロールの方は「クラウドファンディングに支援した人」の名前が流れるところで、私も初回は自分の名前を探すのに必死で見逃してしまい、これは、私も(ああ、ここに…)と2回目にみて確認しました。

そこには片淵監督のアニメ化にあたっての意図があったとは思うし、それが無くても多くの人が作品を絶賛するほどの完成度であったことは文句の言いようもありませんが、でも、原作を知らない人にはなかなかこの機微は伝わらないだろうなと思いました。やはり、原作は原作、アニメはアニメということなのでしょう。

まだまだ、原作を読めばさらに、アニメをみればさらに、気がつくことはあるのだと思うのですが、まずは自分が引っかかったところを覚え書きしました。
この日記を最後まで読んでくださった方がいたら感謝です。そして、ぜひ原作まんがを読んでいただけたら嬉しいです。

他人の見方を入れたくなかったので読むのを控えていましたが、同じ点を気にした方も少なからずいたんじゃないかと思います。
公式アートブックと映画パンフレットのこうのさんのインタビューを読んだきりで、数々の感想ブログや批評などを「積ん読」しておりましたが、そろそろ解禁してみようと思います。
手始めに「ユリイカ」の特集号でしょうかね…。年が明けても、『この世界の片隅で』マイブームはしばらく続きそうです。