やってきてしまいましたよぅ、秋田県は小坂町。
康楽館へは平成18年の7月、18代目中村勘三郎襲名公演以来…。胸が高鳴ります。
しかも、今回ももろもろの条件から「いけないなぁ」とすっかり諦めていたのに、なんとガスパママさんの必殺チケットゲット_(*^ー゚)bグッジョブ!!_でご相伴することになりヽ(´▽`)/、とんだラッキー野郎の虫六です。むふふ。
しかも、ガスパ家の夏休みでもあるので愛犬ガスパール君も同行のため、ガスパパさんは観劇できず、その日の宿ロッジと康楽館の往復リムジン係…。おいたわしや…。すまんのう。
しかも、いつもならこれは虫六家も参加しての夏休みメニューなのですが、「康楽館」の上演日と虫六の休みを優先させてしまったので、家族はお留守番…。ぎょへぇ〜。良心ズキズキ。すまんのう。
高速道路のインターから小坂入り、康楽館の近くにいくと、幟がずら〜〜〜っと立っていて、嫌がおうにもテンションが上がってきます。きたきた〜。
開演まで少し時間があったので、お隣の「小坂鉱山事務所」に入ってみました。
明治38年に建てられた洋風建築で国の重要文化財指定です。前回来た時には時間がなくてこちらは素通りでしたが、なんの、ちゃんと観光資源化されていて、建物はそのままに、中はミュージアムand観光センターandレストランandお土産ショップとなっていて、それぞれけっこう充実して、「小坂ってなにも無いと思っていたのに、立派な観光地だね」と、認識を新たにしたのでした。小坂がかつて銀山の町としてどんなに繁栄していたかをよく知ることができました。小坂鉄道のことももっと知りたかったけど、何しろ開演まで時間もないのでそこそこに退散しました。
そういえば、「モダン衣装館」という洋館でドレスを着て記念撮影というコスプレ趣味のレンタル写真館も繁盛していたようでした。
残念なのは、昔のままの鉱山事務所の再現部屋というのがほとんど無く(所長の部屋くらい?)、調度などもちっとレトロな高級感が欲しいところでしたが、残っていないんでしょうね…。
今回は、郷土資料館には立ち寄れませんでしたが、前回に入ったときは総合博物館という感じで、小坂の町の歴史を紹介しつつ、小坂鉄道の車両の静態保存などもありました。
これが康楽館です!
明治43年建造の日本最古の芝居小屋で、国重要文化財指定。外観は洋風で、中身は伝統的な歌舞伎小屋の造りになっている和洋折衷造りが特徴だそうです。
康楽館の前のガスパール。暑いよね〜。
菊五郎の幟がはためいています。
きたきた!お席は1階の比較的後ろの方ですが、全体に小屋が小さくて舞台がすぐそこなので、後ろという気はしません。
前回は2階席でしたが、その時もすごく舞台が間近な感じでした。きっとどこで見ても舞台との距離(ひいてはお芝居との距離)が近い小屋なんでしょうね。
お席は座布団一枚分で、靴や荷物などもあるとまことに狭くはありますが、舞台は近いし、お隣や前後との距離感もワクワクしてすごく良い感じです。
演目は、
一、廓三番叟(くるわさんばそう)
傾城千歳太夫 中村 時 蔵
新造梅里 中村 梅 枝
太鼓持藤中 中村 萬太郎
二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣
奥殿
一條大蔵長成 尾上 菊五郎
吉岡鬼次郎 尾上 松 緑
お京 尾上 菊之助
鳴瀬 坂東 秀 調
八剣勘解由 市川 團 蔵
常盤御前 中村 時 蔵
三、棒しばり(ぼうしばり)
次郎冠者 尾上 松 緑
太郎冠者 尾上 菊之助
※太郎冠者、次郎冠者は交互出演
曽根松兵衛 市川 團 蔵
音羽屋一座の得意演目で、公文協3コースの中では虫六的にいちばんそそられた内容でした。
「一條大蔵譚」は、平家全盛の時代に、源氏の3兄弟の母親・常盤御前が平清盛からアホで知られた一條大蔵卿に下されて、源氏の家来の吉岡鬼次郎とその妻・お京が常盤の本心を探るために屋敷へ入り込む話。大蔵卿は屋敷内にいるスパイ・家老八剣勘解由を欺くためにアホの振りをしていたり、常盤が揚弓遊びに興じているとみせて平家調伏にこころを砕いていたことが明らかになるという、「実は!」が連発の狂言です。
菊五郎丈の大蔵卿は、アホ加減がなんともチャーミングで、花柄の衣装が似合っていました。最後に八剣勘解由を槍でやっつけて本性を見せますが、ここでいかに決まるかは、前段のアホさをどう演じるかに寄ってくるんだろうなと思いました。そういう意味で、絶妙な変身だなとと思いました。
若夫婦の松禄丈と菊之助丈も、爽やかで好感度がありました。お京は地味な女形という感じでしたが、こういう役をしながら、次の大蔵卿の役を吸収しているんだろうなぁ、菊之助丈は…。
というのは、次の「棒しばり」。これは太郎冠者と次郎冠者が日替交代なのだそうですが、踊り上手なふたりのコンビで息もピッタリ、愉快・通快!だったのですが。この日は菊之助が棒に縛られない方の太郎冠者で、松禄丈の次郎冠者が棒にくくりつけられた体勢で巧みに踊ってみせる間に、どんどん酔いが回っていく様子がお腹が捩れるほど可笑しいのです。後ろのおばちゃんが受けまくって大笑いしていました。この天然らしきコミックのセンスが、音羽屋のDNAなのかぁ?と、将来の大蔵卿を想像させるにあまりありました。
松禄丈の太郎冠者、菊之助丈の次郎冠者というキャスティングも全く違う舞台になったのでしょうね。見てみたいものだと思いました。
ちなみに、ガスパママさんは、悪役の八剣勘解由と「棒しばり」の主人・松兵衛役の市川團蔵丈が気に入った!とポイントを加えていました。
それにしても舞台と劇場の一体感はドーパミンが出ます。舞台上の役者さんも面白いんだろうな…、康楽館のお客さんはのせ方がとても上手だとおもいました。
幕間になると、どこからとも無く黒い衣装の売り子さんが出てきて、上手な口上でのせながらお土産物をいろいろと売りに来ます。そのやりとりもアットホームで、面白い。イケメンのお兄ちゃんなどもおりました。ついつい、お財布の紐が緩みます。
大満足で小屋を出て、ガスパパさんに迎えにきてもらい、今夜の宿に向かいました。
小屋の向こうに小坂鉄道の廃線跡。まだ、線路が残っています。小坂町で公園計画とかいう新聞記事を見た気がしましたが、こういう廃線跡などは使わないのかな?
さぁ、このあと、宿のロッジまで2時間近くのドライブでした。森吉山の中腹(?)まで、雨のそぼ降る暗い山道を、野ウサギやフクロウの影に驚きながら進んだのでした。その運転はお芝居を観ていないガスパパさんが一人で担当。それを脇目に、お芝居をみたふたりは幸せで胸一杯・お腹一杯なのでした。黒すぎますか…二人とも。(爆!!)